2020年6月5日金曜日

Engaging Literate Minds =『本を創る子どもたち 〜 主体性、知性、社会性を引き出す言語教育』(暫定訳)


ピーター・ジョンストンの『言葉を選ぶ、授業が変わる!』と『オープニング・マインド』に続く第3弾『Engaging Literate Minds★』を翻訳すべく、その前段としてのブッククラブが終わりました。前の二つと並んで、これも教科書ベースの授業をしていてはできない実践です(その理由は、すべて三冊ともライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップの実践をベースにしているからです! 『イン・ザ・ミドル』の著者のナンシー・アトウェルさんが教師になって早い段階で切り換えられたように、日本の国語教育も早く切り替えないと、子どもたちの読み・書き嫌いをつくり出すだけでなく、読む力と書く力をつけないままで卒業させてしまう状態を、いつまでも続けることを意味します!)。
このあと下訳の作業に入っていきますが、あまりにもいい本なので、このブログの読者には、その一部(本当に、ごく一部!)を紹介したくなりました。

 本のタイトルも訳すのに苦しみますが、最後の第16章も「Apprenticing Humanityですから、かなり難しいです。 ブッククラブのパートナーのマーク・クリスチャンソンさんは、「作者の意図は『人間としてどう成長するべきか、生徒が見習うべき教育をしよう、教育者になろう』というものだと思います」と教えてくれました。
 あなたは、それが実現できていますか? いいモデルを示せていますか? 教科書をカバーすることや様々な学校事業をこなすことで忙しくしすぎて、ひょっとして、教育の中でもっともおろそかにしているのが、このモデルを示すことではないでしょうか?

 左の数字は原書のページ数、茶色の字は吉田のコメント、青字/斜体はマークさんのコメントです。
267 Children are different from one another...... The same is true of their teachers. でも、同じを前提に動いる学校。これをわきまえられれば、指導案アプローチは取れなくなる! http://projectbetterschool.blogspot.com/2020/04/blog-post_19.html  Mark: 全員違うのに、同じ事をやらせる、読ませる、書かせる、という事で生徒の興味がなくなる。
268 教員研修・研究も、教師は同じを前提に行われるので、機能しない。はるかに役立つ方法が求められている!! ← Mark: 私も自分に関係のない、興味のない強制的な研修を何度も経験していますが、どうしたら変わるのでしょうね。はやり上の人(教育委員会など)になる人が「良い研修」を経験しなくては。←吉田・情報の問題も大きいと思います。90年代に教育委員会に呼ばれて研修をしていた時、担当者に「研修に関する情報はどこから入手していますか?」と聞きまくりました。誰も答えられませんでした。要するに、いい研修に関する情報がゼロの中で、彼らは前例踏襲の研修事業をしていることが分かりました。それで書いたのが、『効果10倍の教える技術』と『「学び」で組織は成長する』だったわけです。しかし、新書で出してしまったので、教育関係者の多くには目に触れませんでした。教育者は、新書を含めて、ほとんど本を読まないのです! いま、ハック・シリーズの一冊として、「教員研修をハックする」を考えています。今度は、ターゲットを教師に明確に設定して。
269 What they would see is happy, engaged children in control of their learning lives Mark: さらっと書きますが、in control of their learning livesって、すごい発想ですよね。自分の生徒たちは自分たちの学びの制御権/主導権を握っている、と言える教室、もっともっと見たいです←吉田・学びというのは、その条件の時に一番よく起こるし、身につくのだと思います。しかし、日本の先生方は、「自分が一番よく教えていた時に、子どもたちはよく学べる」と錯覚を起こし続けていると思います。先に教えることがないと、学ぶことなどあり得ない、と。ある意味では、子どもたちを信頼しない、自分では何もできない存在として位置づけています。従って、自分ががんばらないと、ということになります。結果的に、それが学びの機会を奪っているわけですが。

271 In our classrooms, children became more engaged in literacy following three par­ticular instructional moves:
1.    We invite children to become noticers and allow their noticings to permeate the curriculum, putting them in control of their learning.
2.    We invite children to make books and research their own interests and collaborate.
3.    We engage in conversations emphasizing multiple perspectives and inquiry/uncertainty.
None of these is difficult to do, but each requires giving more autonomy to the chil­dren.
これら3つをするだけで、学びの姿が根本的に変わる!  受け身から、主体に!         1.子どもに気づける人になってもらう。それによって、子どもたちは自分の学びをコントロールできるようになる。                                        2.子どもたちに自分の興味関心をベースにして調べ、そして協力し合って「本づくり」をしてもらう。 ~ マークさんの暫定的な本のタイトルにもあるように、この本の核に据えられているのが子どもたちの「本づくり」なのです!                                     3.子どもたちに、多様な視点と探究・不確実性を大切にした話し合いに参加してもらう。← Mark:このリスト、とても分かりやすく、魅力的です。  269ページや、268ページに書いたことと関連づけると、大きな最初の「ボタンの掛け違え」が起こっていると言えます。そこがズレているので、その後の努力がかなりの部分「無に帰してしまう」という結果に。しかし、自分の努力を無駄とは誰も思いたくありませんから、さらに一生懸命頑張ってしまうという悪循環が続いている、と私は実態を見てしまいます。せっかく、同じ努力をしているなら、最初のボタンのかけ直しさえできれば、みんながハッピーになれるのに、とも。そのためにも、魅力的なオルターナティブを知ってもらう必要があると思うわけです。知らなければ、考えようがありませんから。でも、誰も自分が悪循環の中でがんばっているとは気づきたくないので、ひたすら思考停止のままがんばり続けるしかない、というのが日本の教育システムのようです。
272 This is why we help children to build identities as agentic people whose actions and their consequences express sets of values. This connection between action, identity, and values builds chil­dren’s sense of responsibility, their logic for moral and civic engagement. 教科指導と、生涯にわたって使うスキルの獲得が、みごとなぐらいに切り離されているのが、日本の授業の気がします。 ← Mark:自分から考え、動き、他の生徒と助け合いながら創造する、という事を学校の目標や理念に掲げている日本の学校はよく見かけます。しかし、実態は先生の敷いたレールの上を強制的に進ませる、という事が主な教育活動という事も圧倒的に多い 本音と建前をみごとに分けるのが、日本的なやり方ですから!
275 they are developing identities—what sort of community am I a member of? 子どもたちはアイデンティティーを形成している。どんなコミュニティーのメンバーになりたいのか? この辺は、一橋大の学長をした中世ヨーロッパ史の研究者の阿部謹也さんが、晩年の10年間を日本の「世間」の解明に費やしたこととつながる気がします。学者の世間をもっとも痛烈に批判したのですが、日本社会は「世間」にしか目が向かないことを嘆き続けました。そして、その練習が学校の授業で日々行われているという構造です。 ←Mark: 本当につながっていると思います。日本はどういう社会になるのか、正に教室はそのmicrocosm, 小宇宙です。←吉田・社会という大宇宙は、なかなか変えられないし、学校という中宇宙を変えることも難しいです(理解のない校長や同僚がいては!)。しかし、小宇宙の教室の中なら自分の判断で変えられます。そのための、一つのきっかけに、この本がなればと思います!                          
in classrooms that allow time for inquiry and dialogue, uncertainty and ambiguity are exactly what children find engaging. ← Mark: 不安の排除を目指して凝り固まった、リスクや流動性のないカリキュラムを組むと、椅子に真っ直ぐ座って生徒が聞いてノートをとっているきっちりした教育の外見は維持できるが、中身は全く取り組みたいと思えるものではない。探究、対話、不確実性、曖昧さは、すべて生徒の成長に欠かせない。まったく、その通りです。これは、国語だけでなく、すべての教科でいえますね。
276 For us, teaching is apprenticing children into humanity. マークさんの訳: 教育とは何か? それは子どもたちが人間、そして社会がどうあるべきかを少しずつ知っていく見習い期間、だと私達は考えます。
★ このタイトルを、ブッククラブのパートナーのマークさんは、『本を創る子どもたち 〜 主体性、知性、社会性を引き出す言語教育』と暫定的に訳してくれました。本の内容をよく知っているからこそ訳せるタイトルです。 

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