2013年11月29日金曜日

目的を持って読む

「どういう目的で読むのかによっても読み方は変わるし、読んでいるもののジャンルによっても、読み方は変わりますね」

 そんなことを授業で話し、「どんな読み方をしているのかを振り返ってみて、いくつか読み方のバリエーションの例を教えて」と言ったことがあります。

 「レシピを見るときに、近くのスーパーで簡単に入手できる食材でつくれるかどうか知りたいので、揃える食材のところだけをざっと見る」等々の回答を、こちらは期待するわけです。

 ところが、私の予想に反して、「最初から飛ばさずに読む」と答える人がいます。私は、「え?」と驚くのですが、その横のクラスメートが、「私も、飛ばすと気持ち悪いし、ちゃんと読みたいと思うから、前から順番に読む」と言葉を重ねます。

 実際のところは、無意識のうちにいろいろな読み方をしているとは思いますが、もしかすると、(特に授業で使うものは)、「飛ばさずに、最初からちゃんと読むのがいい読み方」という意識があるのかもしれません。

 ただ、こういう読み方をしているかぎり、「頭の中で全体をまとめつつ、全体を流れるテーマを考えつつ、大切な情報とそうでない情報を区別する」という、理解の助けになるような上手な読み方は、なかなかできないと思います。

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 こんな学習者を見ていて、クリス・トバニ氏という教育者が、いろいろな読み方をどうやって教えるかについて書いている本を思い出しました。★

 その本の中に「目的を設定して読む」ことの大切さを述べているページがあります。

 トバニ氏自身が大学のときに、テキストのほとんどに線を引いて、結局、どこが大事が分からないし、頭にも入らなかったという経験も書いています。

 そして「せめて、先生が 授業で話したところや、それに関連するところに印をつけるという目的を設定すれば、 先生が重要だと考えたところがわかって、テストにでたかも」とも振り返っています。

 つまり、読む前に、自分で目的を設定することで、重要な点とそうでない点を区別するという読み方 
がしやすくなるということでもあります。

 そんな話に続けて、「読む前に、自分で目的を設定する」ことを、具体的に教えるのに適した短い英文が、この本には載っています。

 そして、最初は「重要なところに印をつける」という指示のみで読む、次は具体的に、二つの異なる目的が設定されて、それぞれの目的に鑑みて重要なところに、それぞれに違う色で印をつけるという、練習が紹介されています。

 これを見ていると、目的を設定することで読み方が変わることも、目的に応じて、大切な情報を見つけることができるのも、よくわかります。

 「読む前に、自分で目的を設定する」というミニ・レッスンは大切だと思いましたし、そしてこのミニ・レッスンに適した本も、増やしていきたいと思っています。

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 ★ Cris Tovani著、I Read It, But I Don't Get It (Stenhouse, 2000年)とい 
う本の、24-26ページに上のようなことが詳しく述べられています。 

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