2022年11月25日金曜日

しっかり納得! 読むことのミニ・レッスンでも扱いたい二つのポイント

 10月22日の投稿「『狩猟者』としての読者」では、三中信宏氏の『読書とは何か―知を捉える15の技術』(河出新書、2022)が紹介されていました。この投稿の中で、三中氏が「読書の技能訓練」として指摘している以下の二つのことは、しっかり納得しました。そして、読み手の人生?をより良いものにするためにも、「必須で押さえたい、不可欠なこと」だと思いました。

A. その同じ本を他の読者がどのように読んだのかを知ること(『読書とは何か』67ページ)

B.  同じ著者が書いた他の著書をひもとくこと(『読書とは何か』68ページ)

 (*この時の投稿では、上記2点は「読書行為を個人の枠内にとどめないという点で重要」であることも指摘されています。なお、上記の「A」「B」は、説明の便宜上、10月22日の投稿者によって付けられたものです。)

 今回はこの2点について、ここしばらく考えていたたことを投稿します。

 まずBの「同じ著者が書いた他の著書をひもとくこと」については、なんといっても、自分のお気に入り作家に出会える可能性を確保するという点からも、ミニ・レッスンの必須項目!と思いました。それは、ある作家の最初に読んだ1冊が、今ひとつ自分に合わない時に、「あ、この本は苦手だ」ではなくて、「この作家は苦手だ」と決めつけてしまうことが、私には少なからずあったからです。

 ですから、ミニ・レッスンで達成したいのは、「ある作家について、この作家が好きか嫌いか、読み続けるか続けないかを決めるためには、1冊で決めない、同じ作家の違うシリーズもしくは違うテーマの本をあと2冊読んでみる」みたいなアプローチを、常にできるようになることです。

 (→「1冊だけで、ある作家が好きか嫌いかを決めない」ことは、選書以外にも「ある一部で全体(あるいはある人)がわかったつもりになって判断しない」という姿勢につながるかもしれません。短絡的な私には、そういう姿勢が身につくと、読書以外にもプラスがあるように思います。)

 ミニ・レッスンでできそうなこととしては、教師の体験や子どもたちの知っている作家から、1冊で決められないと思った例を、時々、紹介するのも一つの方法かと思います。また、日々の読み聞かせで、ある本を読んだ後に、「この作家には『○○○』という、全く異なる雰囲気の作品があるよ、1冊で作家の好き嫌いを決めるのは難しいね」等を、さらっと、でも、頻繁に伝えていくのもいいかもしれません。

 子どもたちが読みそうな作家では、例えば、私の大好きな作家の一人、アヴィ(Avi)は、「え?同じ作家の作品?」と思うほど、幅の広い作品を書いています。

 アヴィの『星条旗よ永遠なれ』(ニューベリー賞銀賞受賞、唐沢則幸訳、くもん出版, 1996年)は、初めて読んだ時に、強い印象を受けました。対象年齢は小学校高学年か中学生以上ぐらいかと思います。この最初に出合った一冊のおかげで、一時期、アヴィの作家読みをしました。おそらく70冊以上の著作があり、ミステリー、ファンタジー、歴史もの、冒険もの、家族もの、学校生活、絵本、動物が主人公のものなど、テーマもジャンルもそこから受ける印象もあまりに異なるので、(全てを読んだわけではありませんが)その幅の広さにびっくりしました。そしてもちろん、その中には「私としてはイマイチ」というものもありました。

 邦訳されている作品は10冊程度かと思いますが、その中で、私がうまく入れなかったのは『クリスマスの天使』(金原瑞人訳、講談社、2002年)です。まず、「クリスマス」「天使」という題名から期待したイメージとは大きく異なりましたし、怖い感じが楽しめませんでした。もし、アヴィの最初に読んだのがこの本であれば、「いまいち好きではない作家」で終わってしまったかもしれません。

 (なお、今日の投稿の最後には、邦訳の出ているアヴィの本をいくつか紹介しますので、よろしければお読みください。)

 10月22日の投稿の中で、三中氏が「読書の技能訓練」として指摘している 1点目「A その同じ本を他の読者がどのように読んだのかを知ること(『読書とは何か』67ページ)」については、10月22日の投稿では「Aについて、三中さんは、いま自分が読んでいる本について書かれた他の本や文章のことを取り上げていますが、共通の本や文章を複数の読者が読んで語り合ったり、書き合ったりすることも含まれると思います」と書かれていました。

 共通のものについて、複数の読者が語ったり、書いたりするという点では、私は定期的に絵本やTEDトークなどを紹介して、「10段階での評価とその理由」という活動を行っていますが、それについての自分の見方が変わりました。

 これまでは10や9の高評価が多いと、単純に「これは評価が高いから、いいものが選択できた。来年も使えそう。いいものを選べてよかった」と喜んでいました。逆に高評価が少ないと「もっと上手に選ばなくては」とがっかりしていました。

 でも、今回、上記の(A)を読んでから、「評価が分かれる」ことの面白さや価値に目が向きました。低い評価であっても、その理由を読むと「よく考えて低い評価にしている」と思うこともあります。また、それぞれに評価の理由として取り上げている箇所も異なります。

→ 次年度に使うものの選択を考えるときも、評価の高いものだけを選ぶ必要がないと認識しつつあります。

→ 反応や評価が異なっていることを、教師だけが知って終了していたことはもったいないと思いました。反応が評価が異なることが当たり前であることがわかるような時間を、もっと日常的に取り入れたいとも思いました。

(おまけ)

★アヴィの邦訳が出ている作品についての短い紹介

・『星条旗よ永遠なれ』(ニューベリー賞銀賞受賞、唐沢則幸訳、くもん出版, 1996年)ドキュメンタリー・タッチです。こんなことは実際にはあり得ないかもしれませんが、ある行動から周りが動き始めると、歯車が狂っていく? そんなことは起こりうるだろうと思って読みました。

・ニューベリー賞を受賞した『クリスピン』(金原瑞人訳、求龍堂 2003年)。そして、これまたニューベリー賞銀賞受賞の『シャーロット・ドイルの告白』(茅野美ど里訳、偕成社、1999年)。どちらも、ストーリーがどんどん進むので、気がつくと読み終わっている感じです。どちらも、本から受ける印象は『星条旗よ永遠なれ』とは異なります。

・『ぼくがいちばんききたいことは』(青山南訳、ほるぷ出版、2019年)は短編集。訳者あとがきによると、原題は「息子たち、父親たち、祖父た血の話」だそうです。「すっきりハッピーエンド」を集めたものではなく、味わいは少しずつ異なりますが、だからこそ、いい短編集だと思います。

・『父さんの納屋』(谷口由美子訳、偕成社、1997年)これはアメリカ開拓時代が舞台。

・絵本もあります。『そんなこともあるかもね!』(福本友美子訳、フレーベル館, 2007年)は、クスッと笑えそうな短編を集めた絵本。

 (そのほか、『はじまりのはじまりのはじまりのおわり 小さいカタツムリともっと小さいアリの冒険』(松田青子訳、福音館書店、2012年)という絵本もあります。また、『ポピー ミミズクの森をぬけて』(金原瑞人訳、あかね書房、1998年)と『ポピーとライ 新たなる旅立ち』(金原瑞人訳、あかね書房、2000年)もあります。この3冊はかなり前に読んだので、詳しくは思い出せません(汗)。すみません。)

2022年11月19日土曜日

メッシュワーク(編細工)としての理解過程

  『理解するってどういうこと?』の167ページの表52には「表面の認識方法」(文字と音声、語彙、構文)と「深い認識方法」(意味づけ、関連づけ、優れた読み手・書き手になる)が掲げられています。いずれも「読み・書きを学ぶ際の主要な構成要素」です。エリンさんは「子どもたちがまだ文字と音声の領域を学んでいる場合であっても、少なくとも指導時間の半分は、深い認識方法の指導にあてるべき」で、その割合を「劇的に増やすべきなのです」と言っています(『理解するってどういうこと?』175ページ)。

 たとえば「語彙」に関しては次のように述べられています。

 「子どもたちに幅広い語彙を身につけさせる一番効果的な方法は、時間さえあれば、長期にわたって毎日、その子が既に持っている言葉よりも少しだけレベルの高い言葉を含んだ本を「ひたすら読ませる」ことです。また、教師や他の子どもたちとの、日常的な話し言葉のやりとりで、少しだけレベルの高い言葉に出会っていく機会を増やすことも、子どもにとってはきわめて大切です。/そして、各教科の学習で学ぶ言葉を重視することもかなり効果的です。その言葉にそなわったあらゆる意味の可能性を話し合うだけでなく、それと同じぐらいに、その言葉が意味していないことは何かを話し合うことも大切です。子どもたちがこれまでに持っていた記憶と感情を、新たに学習した言葉と結びつけることができるように、概念図などを使ってもいいでしょう。子どもたちが言葉をしっかりと使って、多様な意味を考えることに時間を費やし、読み聞かせや授業での話し言葉でのやりとりの最中に、おもしろくて多様な意味を持った言葉に耳を傾けてほしいと思います。/私たちの目標は、特別な目的や効果を期待して書き言葉や話し言葉が使われるいろいろな場面で、子どもおたちが幅広い多彩な言葉を使えるようにすることです。」(『理解するってどういうこと?』176177ページ)

  こうした営みを通して、子どもたちは、優れた読書家がいつも使うような「理解のための七つの方法」(関連づける、質問する、イメージを描く、推測する、何が大切かを見極める、解釈する、修正しながら意味を捉える)を使うことができるようになるというのです。

 こうしたやり方がどうして大切なのでしょうか。

 社会人類学者のティム・インゴルドの書いた『生きていること-動く、知る、記述する-』(柴田崇ほか訳、左右社、2021年)には次のような言葉があります。

 「知識とは、世界と出会うより前に心のなかにコピーされているような出来合いのものではなく、ある環境の状況のなかに行為者―知覚者が没頭することで達成される関係の場において、永遠に「建設中」なのである。この観点では、知識は「複雑な構造」として伝達されるのではなく、絶え間なく現れる「複雑なプロセス」の産物である。」(『生きていること』376ページ)

 「ひたすら読む」なかで子どもが獲得する「語彙」や「理解するための方法」は、「出来合いのもの」としてよりも、「建設中」の「「複雑なプロセス」の産物」だということになります。このように考えると「ひたすら読む」(「ひたすら書く」場合も!)ことはテクストの内容を写し取る行為ではなく、それを読む自身をも巻き込む行為でもあります。インゴルドはさらに次のようにも言っています。

 「物語られた世界では、物は存在しているのではなく生起する。物が出会うところでは、それぞれの物語が絡まり合い、出来事が撚り合わされる。このように結びついたものが場所であり話題である。この結びつきのなかで知識が生成されるのである。誰かや何かについて知ることはその物語を知ることであり、知る者自身がその物語に参加できるようになることである。もちろん、人びとは他者との直接の出会いを通してだけでなく、他者が語る物語を聞くことによっても知識を増大させる。物語を語ることは、語りのなかで過去の出来事に関係することである。それは、まるで今ここで進行していることのように聞き手の鮮やかな現在において過去の出来事を生に持ち込むことなのである。」(『生きていること』379380ページ)

  「読むこと」は語り手と聞き手との協働の営みであり、それだからこそ、その協働の過程であたらしい知識が生み出されるというわけです。「ひたすら読む」こともまた読み手の「鮮やかな現在において過去の出来事を生に持ち込む」協働の営みであるわけです。

 ですから、インゴルドが「知識を運ぶのは輸送ではなくて散歩を通してである」(『生きていること』382ページ)と比喩を使って述べていることは、読み書きにおいても重要です。「輸送」は互いにつながれた点のネットワークをかたちづくるものですが、「散歩」をネットワーク化することは困難で、むしろそれは「メッシュワーク」なのです。

 「散歩する者の物語られた知識は、垂直方向にも水平方向にも統合されない。それは分類のように階層的ではないし、ネットワークのように「平ら」でも平面に位置してもいない。前章で論じたように、世界を点から点へと横切るようなものではなく、人びとが住む世界のなかでみずからの道を織り込むようにして、散歩する者の経路はメッシュワークを構成する。したがって、物語られた知識は、分類でもなければネットワーク化されているのでもない。それはメッシュワーク化されているのである。」(『生きていること』384ページ)

  「メッシュワーク」とは「編細工」であり、「編み合わされた線からなる場」です。「ネットワーク」に替えてインゴルドが用いる概念です。「ひたすら読む」ことによって読者が手にする知識は、インゴルドが言うように、ネットワーク化されたものというよりもメッシュワーク化されたものと言っていいのではないでしょうか。だとすれば、自分が関心を持って選択した本や文章を「ひたすら読む」ことの繰り返しのなかで、わたくしたちは自分自身を編み上げながら、意味をつくり出し、成長していくのです。エリンさんが「深い認識方法」の指導を劇的に増やすべきだという根拠もここにあります。

2022年11月11日金曜日

授業で居場所づくりをしないと、(リスト2にある)負の経験を助長しかねない

 居場所があることによって「リスト1」にある項目は高められ、その逆に、居場所が感じられない(自信をもって居場所があると思えない)と生徒たちは「リスト2」を経験してしまうからです(出典・『「居場所」のある学級・学校づくり』ローリー・バロン&パティ―・キニ―著、新評論の6ページと7ページ)。

             リスト1

          リスト2

 リスト1が得られ、リスト2を排除できるのであれば、居場所づくりに取り組まない手はありません(大きな問題は、「いつ」です)!

 それでは、「居場所があるという感覚」はどのようにすれば得られるのでしょうか?

 この本では、次の三通りの方法が紹介されています。

①真の意味での思いやり、信頼感、仲間であるという感覚を、すべての生徒がもてる安心できる環境――教師やクラスメイトが自分のことを気にかけてくれる、自分のことを尊重してくれる、誰かから卑下されたり、恥ずかしい思いをさせられたり、排除されることがない。

②明確に伝えられ、一貫した公正な行動や学業に対する期待――学びに自らかかわる力、自己管理能力、感情のコントロール、対処能力、自分に内在する力を見極める力をつける。学校生活をより充実したものにするための他者とかかわる力、学ぶための能力、目標を設定、管理、達成する力をつける。

③個人的に意味のある学習への取り組みと主体的・自立的な参加体験――生徒は、自分の学校の学びを計画、実行、評価することに参加する。生徒には選択肢が与えられ、自分の考え、意見、フィードバックを提供する機会が与えられる。また、他者と協力して課題に取り組み、成果物をつくりあげ、そのプロセスで判断を下し、問題を解決し、危機に対処することも学ぶ(前掲『「居場所」のある学級・学校づくり』の8~9ページ)。

 これら三つに関して、あなたはどのくらい実践できていますか?

 これまでの日本でイメージされている「学級経営(クラスづくり)」は①が中心で、②の意識はあっても、それに費やす時間があまりないので、なかなか実現できていないのが実態ではないでしょうか。そして、③にいたっては、ほとんど視野にすら入っていない!?★

 それは、「学級経営(クラスづくり)は授業以外でするもの」と捉えられていることが原因です。実際、学校の時間割のほとんどは授業であり、学級経営/クラスづくり用に振り分けられている時間はそう多くありません。

 しかし、現実はその授業で子どもたちに居場所感覚がもてるようにしないと、いくら学級経営/クラスづくりで努力しても、多くの子どもは「この教室に自分の居場所はある」と思えず、リスト2の問題を抱えてしまうのです。

 本書の第6~7章の、居場所がもてるようにするための具体的な授業の方法を参考にして実践してください★★。それは、多くの子どもの居場所感覚を育むとは言い難い一斉授業(http://projectbetterschool.blogspot.com/2022/10/blog-post_23.html)から、このブログや、姉妹ブログの「PLC便り(http://projectbetterschool.blogspot.com/)」で紹介している「生徒を惹きつける、生徒主体の授業」への転換を意味します。そうすれば、教室における居場所感覚は飛躍的に増すだけでなく、従来の「学級経営/クラスづくり」に費やしていた時間をさらに少なくすることができます。

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※ なお、送料を抑えるために割安宅配便を使っているため、到着に若干の遅れが出ることがありますので、予めご理解ください。また、本が届いたら、代金が記載してある郵便振替用紙で振り込んでください。

 

★ 本では、これら三つを、①については最初の3章で、②は第4~5章で、そして③は第6~7章で扱っています。

第1章 教師が信じ、準備をすれば居場所が育つ

  第2章 居場所は信頼関係で育まれる

  第3章 居場所は安心・安全な環境にある

  第4章 居場所感覚は一貫性があってこそ

  第5章 居場所感覚は、感情と社会性の能力(SEL)があってこそ

  第6章 生徒を惹きつける、生徒主体の授業が居場所の原動力

  第7章 生徒同士が協力することで育まれる居場所感覚

 

★★ この本で挙げられているのは、次のような具体的な授業の方法です。(そのほとんどは、「主体的・対話的で、深い学び」を実現する方法でもあります!)

      教師の説明・講義

      教師の実演

      話し合い

      二人組やグループでの活動

      生徒が探究する活動

      実験

      調査

      協同学習グループ

      学習センター★★★

      生徒同士の教えあい

      アクティブ・ラーニング(動きを伴う学習)

      発見を促す活動

      一人ひとりをいかす教え方

      ソクラテス・セミナーなどの創造的な活動

      高次の思考スキルを使った活動

      ティーム・ティーチング

      ブッククラブ

      教科横断の統合的な学習

      個別学習

      自主学習

      生徒が持っている電子機器(ノートパソコンなど)を使っての活動

      学習や行動の振り返り

 

★★★ 学習センターについての詳しい本が、来月に出ます! https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794812261

 

2022年11月4日金曜日

SELを扱う際に使える本

 いま、『学びはすべてSEL(仮題)』という本を翻訳中です。

 IQよりもEQが大切と言われたのは、すでに30年近く前です。しかし、日本は依然テストの点数がすべて。SELの本は、すでにhttps://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=selが出ていますが、あと半年以内に追加で3冊出る予定です。それほど大切です! 一人ひとりの生徒と世界の未来は、EQSELにかかっていますから。

 『学びはすべてSEL(仮題)』では、SELを以下の5本の柱で扱っています。

アイデンティティーとエイジェンシー(第2章) ― 強みの認識、自信、自己効力感、成長マインドセット、忍耐力とやり抜く力、レジリエンス。

感情調整(第3章 ― 感情の識別、自己の感情認識、衝動コントロール、満足の遅延、ストレス・マネジメント、コーピング。

認知調整(第4章)― メタ認知、注意、目標設定、問題の認識と解決、支援の要請、意思決定、時間の管理と計画。

社会的スキル(第5章)― 向社会的スキル、シェアリング、チームワーク、関係構築、コミュニケーション、共感、人間関係の修復。

公共心(第6章)― 他者尊重、勇気、倫理的責任、市民の責任、社会的な正義、サービス・ラーニング、リーダーシップ。

  どれも、欠かせないスキルだと思いませんか? そして、いまの日本の教育で、これらのスキルはどれほど磨かれているでしょうか?

 WWRWは、https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/writingworkshop/answers/mudai-12で紹介しているように、かなりの部分の練習が(意図することなく、自然に)できている優れた教え方・学び方ですが、上記のテーマを設定しても扱えることが『学びのすべてはSEL』では分かります。そして、巻末にはそれらを扱う本(絵本と児童文学)のリストが紹介されています。

以下に紹介するのは、このブログでも何度か書いてくれている島根県立大学の中井悠加さんが同僚たち(大学付属絵本図書館「おはなしレストランライブラリー」の尾崎智子さんと内田絢子さん)の協力を得て作成してくれた追加のリストです。

 

●アイデンティティーとエイジェンシーに使える本(絵本と児童文学)

『「いたいっ!」がうんだ大発明ばんそうこうたんじょうものがたり』                 バリー・ウィッテンシュタイン/文、光村教育図書 

100歳ランナーの物語:夢をあきらめなかったファウジャ』シムラン・ジート・シング文、バルジンダ・カウル絵、金哲彦監修、おおつかのりこ訳、西村書店

『111本の木』リナ・シン文/マリアンヌ・フェラー絵/こだまともこ訳、光村教育図書

『あたまにつまった石ころが』キャロル・オーティス・ハースト文/ジェイムズ・スティーブンソン絵/千葉茂樹訳、光村教育図書

『ありがとう、フォルカーせんせい』パトリシア・ポラッコ作・絵、香咲弥須子訳、岩崎書店

『サディがいるよ』サラ・オレアリー文/ジュリー・モースタッド絵/横山和江訳、福音館書店

『ジブリルのくるま』市川里美作、BL出版

『すうがくでせかいをみるの』ミゲル・タンコ作/福本友美子訳、ほるぷ出版

『数字はわたしのことば:ぜったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』シェリル・バード文、バーバラ・マクリントック絵、福本友美子訳、ほるぷ出版

『せかいはふしぎでできている』アンドレア・ベイティー作/デイヴィッド・ロバーツ絵/かとうりつこ訳、絵本塾出版

『その手に1本の苗木を : マータイさんのものがたり』クレア・A.ニヴォラ作、柳田邦男訳、評論社

『二平方メートルの世界で』前田海音文/はたこうしろう絵、小学館

『はつめいだいすき』ピップ・ジョーンズぶん、サラ・オギルヴィーえ、福本友美子訳、BL出版

『牧野富太郎ものがたり:草木とみた夢』谷本雄治文、大野八生絵、出版ワークス

『わたしのそばできいていて』リサ・パップ作/菊田まりこ訳、WAVE出版

『時計つくりのジョニー』エドワード・アーディゾーニ作/あべきみこ訳、こぐま社

『耳の聞こえないメジャーリーガー  ウィリアム・ホイ』ナンシー・チャーニン文/ジェズ・ツヤ絵、斉藤洋訳、光村教育図書

『虫ガール : ほんとうにあったおはなし』ソフィア・スペンサー, マーガレット・マクナマラ文/ケラスコエット絵/福本友美子訳、岩崎書店

 

●感情調整

『〈きもち〉はなにをしているの?』ティナ・オジェヴィッツ文/アレクサンドラ・ザヨンツ絵/森絵都訳、河出書房新社

『アルド・わたしだけのひみつのともだち』ジョン・バーニンガムさく/たにかわしゅんたろうやく、ほるぷ出版

『いっしょにおいでよ』ホリー・M・マギー文/パスカル・ルメートル絵/なかがわちひろ訳、廣済堂

『あかつき うそ』谷川俊太郎詩/中山信一絵 主婦の友社

『エイドリアンはぜったいウソをついている』マーシー・キャンベル文/コリーナ・ルーケン絵/服部雄一郎訳、岩波書店

『おこる』中川ひろたか作、長谷川義史絵、金の星社

『かいじゅうたちはこうやってピンチをのりきった : 不安・こわい気持ち』新井洋行著/森野百合子監修、パイインターナショナル

『かなしみがやってきたらきみは』エヴァ・イーランド作/いとうひろみ訳、ほるぷ出版

『きもち』谷川俊太郎ぶん、長新太え、福音館書店

『きもち』ジャナン・ケインさく/いしいむつみやく、少年写真新聞社

『こころのおと』ピーター・レイノルズぶん・え/なかがわちひろ訳、主婦の友社

『しあわせなときの地図』ズザンナ セレイ、ほるぷ出版

『ジャックのどきどきモンスター』サム・ズッパルディ作/福本友美子訳、光村教育図書 

『すてきってなんだろう』アントネッラ・カペッティぶん/メリッサ・カストリヨンえ/あべけんじろう, あべなお訳、きじとら出版

『でっかいでっかいモヤモヤ袋』ヴァージニア・アイアンサイドさく/フランク・ロジャースえ/左近リベカ訳、そうえん社

『どうしてなくの?』フラン・ピンタデーラ文/アナ・センデル絵/星野由美訳、偕成社

『トゲトゲくんは ね、』クォンジャギョンぶん/ハワンえ/いくたみほ訳、パイインターナショナル

『どんなきもち?』ミース・ファン・ハウトさく/ほんまちひろ訳、西村書店東京出版編集部

『まちがいなんてないよ』コリーナ・ルウケン絵と文/島津やよい訳、新評論

『わたしのいちばんあのこのいちばん』アリソン・ウォルチ作、パトリス・バートン絵、薫くみこ訳、ポプラ社

 

●認知調整

『アカシア書店営業中!』濱野京子作、森川泉絵、あかね書房

『エーミールと探偵たち』ケストナー作 ; 高橋健二訳、岩波書店

『おにいちゃんとぼく』ローレンス・シメル文/フアン・カミーロ・マヨルガ絵/宇野和美訳、光村教育図書 

『ケイン、きょうもよろしくね』ソンギヨク, ペクウンジュ文/シンドゥヒ絵/高橋昌子訳、新日本出版社

『コリンのお店びらき』ひこ・田中文/山西ゲンイチ絵、BL出版

『しーっ! : ひみつのさくせん』クリス・ホートン作/木坂涼訳、BL出版

『ちいさなしまのだいもんだい』スムリティ・プラサーダム・ホールズ文/ロバート・スターリング絵/なかがわちひろ訳、光村教育図書

『チョコレート戦争』大石真作/北田卓史絵、理論社

『どうぶつせんきょ』アンドレ・ホドリゲス, ラリッサ・ヒベイロ, パウラ・デスグアウド, ペドロ・マルクン作/木下眞穂訳、ほるぷ出版

『はちうえはぼくにまかせて』ジーン・ジオンさく/マーガレット・ブロイ・グレアムえ/もりひさし訳、ペンギン社

『ピトゥスの動物園』サバスティア・スリバス著/宇野和美訳/スギヤマカナヨ絵、あすなろ書房 

『ビワイチ!:自転車で琵琶湖一周』横山充男作、よこやまようへい絵、文研出版

『ブロード街の12日間』デボラ・ホプキンソン著/千葉茂樹訳、あすなろ書房 

『ほんとうのことをいってもいいの?』パトリシア・C.マキサック文/ジゼル・ポター絵 ;ふくもとゆきこ訳、BL出版

『メガネをかけたら』くすのきしげのり作/たるいしまこ絵、小学館

『ライオンのしごと』竹田津実作/あべ弘士絵、偕成社

『ライオンをかくすには』ヘレン・スティーヴンズ作/さくまゆみこ訳、ブロンズ新社

 

●社会的スキル

『あかいほっぺた』ヤン・デ・キンデル作/野坂悦子訳、光村教育図書

『あたし、うそついちゃった』ローラ・ランキンさく/せなあいこ訳、評論社

『貸出禁止の本をすくえ』アラン・グラッツ著/ないとうふみこ訳、ほるぷ出版

『きつねと私の12か月』リュック・ジャケ原作、フレデリック・マンソ絵、さくらゆき訳、そうえん社

『きみなんかだいきらいさ』ジャニス・メイ・ユードリーぶん、モーリス・センダックえ、こだまともこ訳、冨山房

『けんかのきもち』柴田愛子文、伊藤秀男絵、ポプラ社

『小学校がなくなる』麻生かづこ作/大庭賢哉絵、文研出版

『その魔球に、まだ名はない』エレン・クレイジス著/橋本恵訳、あすなろ書房

『チェクポ : おばあちゃんがくれたたいせつなつつみ』イ・チュニぶん/キム・ドンソンえ/おおたけきよみ訳、福音館書店

『なかなおり        ヘルヤ・リウッコ=スンドストロム文・陶板、稲垣美晴訳、猫の言葉社

『ぼくが見える?』パクジヒ作/おおたけきよみ訳、光村教育図書

『みんなから見えないブライアン』トルーディ・ラドウィッグ作/パトリス・バートン絵/さくまゆみこ訳、くもん出版

『くべえまってろよ』灰谷健次郎作/長新太絵、文研出版

 

●公共心

『「危険なジェーン」とよばれても』スザンヌ・スレード文、アリス・ラターリー絵、小林晶子訳、岩崎書店

『えんぴつとけしごむ』カレン・キルパトリック, ルイス・O・ラモス・ジュニア文/ヘルマン・ブランコ絵/高畑正幸訳、KADOKAWA 

『おんなじ、おんなじ! でも、ちょっとちがう!』ジェニー・スー・コステキ=ショー作/宮坂宏美訳、光村教育図書

『さっちゃんとなっちゃん』浜田桂子さく・え、教育画劇

『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』キース・ネグレー作/石井睦美訳、光村教育図書

『ひとりひとりのやさしさ』ジャクリーン・ウッドソン文/E.B.ルイス絵/さくまゆみこ訳、BL出版

『ふたりおなじ星のうえで』谷川俊太郎文/谷本美加写真/塚本やすし絵、東京書籍

『ブライディさんのシャベル』レスリー・コナー文/メアリー・アゼアリアン絵/千葉茂樹訳、BL出版

『ほらぴったり』ナオミ・ジョーンズぶん/ジェームズ・ジョーンズえ/ROY訳、ブロンズ新社

『マララとイクバル:パキスタンのゆうかんな子どもたち』ジャネット・ウィンターさく、道傳愛子やく、岩崎書店

『みんなとちがうきみだけど』ジャクリーン・ウッドソン作/ラファエル・ロペス絵/都甲幸治訳、汐文社

『ヤクーバとライオン勇気』ティエリー・デデュー作、柳田邦男訳                 講談社

『レッド : あかくてあおいクレヨンのはなし』マイケル・ホール作/上田勢子訳、子どもの未来社

『みんなにやさしく』パット・ズィトゥロウ・ミラーぶん/ジェン・ヒルえ/ドリアン助川やく、イマジネイション・プラス 

『やましたくんはしゃべらない』山下賢二作、中田いくみ絵、岩崎書店

 

    このリストは増やしていきたいので、いい本がありましたら、ぜひ pro.workshop@gmail.com 宛に教えてください。お願いします。

★ このリストは随時更新していきますので、最新のリストは

https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml をご覧ください。