そこでは、メタ認知を、「自分が読んでいるテキストに関して、読み手として自分の中で行っている対話」と定義しており、間違いなく私がこれまで見た中で一番分かりやすいと同時に、『「読む力」はこうしてつける』の中で扱っている内容と親和性が高いです。
今回は、自分の中で対話ができる読み手・書き手(+考え手・学び手)を育てるための4つの追加の情報源を紹介します。
①
上記の記事の中でも紹介している『「考える力」はこうしてつける』(ジェニ・ウィルソン他著、新評論)は、まさに、振り返りとメタ認知能力をベースにつくられた本です。
上記の記事の中には、とても分かりやすい図(図1-2)をその本から転載しましたが、ここにもう一つ「振り返りとメタ認知能力との関係」を分かりやすく示してくれている表を掲載します(21ページの表1-2)。
これら2つの図と表をベースにしたたくさんの具体的な事例が、『「考える力」はこうしてつける』には紹介されていますので、ぜひご一読ください。ちなみに、原書のタイトルはThinking for Themselves(子どもたち自身に考えさせる)です。これほど、日本の授業でおろそかにされているものはないかもしれません!
なお、この本はリーディング・ワークショップ(読書家の時間)とライティング・ワークショップ(作家の時間)をほぼ毎日実践している教師の教室での実践がベースになっています。その時間割まで掲載されています(66~67ページ参照)!
②
『「読む力」はこうしてつける』の66~68ページで、責任の移行モデルについては紹介していますが、それだけでは実践できるようにはなりにくいので、このテーマだけで一冊にした本を翻訳出版することにしました。『「学びの責任」は誰にあるのか ~ 「責任の移行モデル」で授業が変わる』です。来月の今頃には出ているはずなので、ぜひチェックしてください。この中でも、メタ認知能力の重要性を強調しています(主には、第5章を参照)。
こちらでは、メタ認知を「学習者自身の学びのプロセス、自分が一番学びやすい条件、実際に学びが起こったということを意識的に認識すること」と定義づけて(これらも、とても重要!!)、それを責任の移行モデルの4段階で認識する機会を提供しようとしています。中でも、協働学習や個別学習の際に、次のような4つの質問を意識させることで、「メタ認知的なつぶやき」を育てることができる、としています。
1. 自分は何を達成したいのか?
2. 自分はどんな方法を使えばいいのか?
3. 自分は方法をうまく使いこなせているか?
4. ほかにやれることは何だろうか?
これらは、教師も、管理職も、教育行政に関わる人も発しないとまずいのですが・・・(子どもたちの周りの大人が実践していないと、子どもたちはやれるようになれませんから。)
③
「優れた読み手が使っている方法」の一つである質問する力に焦点を絞った『たった一つを変えるだけ ~ クラスも教師も自立する「質問づくり」』(ダン・ロススタイン&ルース・サンタナ著、新評論、2015年)も、メタ認知能力の重要性には言及しています。
この本では、「自分が学んでいることや考えているプロセスについて振り返って考える能力」とし、「すべての生徒にとってより良く学べるためには欠かせないものとして捉えられるようになっています」(36~37ページ)。そして、「できる生徒たちは読んでいる内容に対して自然に質問を投げかけたり、次に何が起こるかを予測したり、自分の理解や解釈を振り返ったりする」(37ページ)と指摘しています。まさに『「読む力」はこうしてつける』のパート2で紹介している内容そのものです。
そして、『たった一つを変えるだけ』では、発散思考と収束思考とメタ認知思考は、「今はもっていないかもしれませんが、生徒たちの誰もが身につけることのできるとても重要な思考力です。(この本で)極めて簡単の手順でこれら3つの思考力を身につけ、そして自分のものにする『質問づくり』の方法」(39ページ)が紹介されています。
ぜひ、これらの本も参考にしながら、振り返りとメタ認知をベースにした授業や学校生活を送ってください。必ず実践は向上します。逆に言えば、振り返りとメタ認知なしでは、なかなか向上が図れないことを意味します。(同じことの繰り返しでは、悲しいです! 子どもたちのためにも、何とか避けたいです。)