『ブラッドベリ、自作を語る』の続きです。
●作家の役割=書く目的は?
ウェラー・ 作家としてご自分の役割をどうお考えですか? 娯楽を提供するのか、精神を啓発するのか、教訓をあたえるのか。
ブラッドベリ・ 全部だろうね。それから、人が前へ進むように手助けをする。どうにか読者の心をつかんだとして、その心に湧いたものが表面まで浮いてきて、その人が次の日もしっかり生きられて、前の日よりよくなる、というように手を貸すのが僕の仕事。このところ何年か、あれこれのストーリーを書きながら、ずっと生きてるかぎり人を幸せにしていたいという気持ちが強くなった。だからファンタジーはすばらしいんだ。現実ばかりじゃ気が滅入るだろ。ひどい気分で何もできなくなる。(288)
●下書き(初稿)から最終稿へ
ウェラー・ 書いたばかりの第一稿は、潜在意識がページに語りかけているようなものだ、ということを持論にしていらっしゃいますね。推敲の段階というのは、それを知覚化しているものだと思ってよいのでしょうか?
ブラッドベリ・ もちろん。それから見直してカットする。短篇は長すぎることが多い。『何かが道をやってくる』を書いたとき、あれは長篇だけれども、全部で15万語になっていた。見直していって、5万語はカットしたね。自分で自分の邪魔をしてはいけない。燃えやすいものは片づけておくんだ。ガラクタと言おうかな。ちゃんと片付けて、すっきりさせる。
初稿は、まずタイプで原稿を打つ。これは早い。がんがん打ちまくる。自分の足を引っ張らない。それから何日か後で、そっくり打ち直す。このときに潜在意識が新しい言葉をくれる。まだまだ何度か打ち直さないと仕上がらないが、ほとんど直さなくていいときもある。(290)
●筋書きを考えてから書くの?
ウェラー・ ストーリーは、まず全体を考えるというか、大体の筋書きを決めるのですか?
ブラッドベリ・ いやあ、全然。そんなことできない。あすという日や、来年や、十年後にどうなるか、そんな筋書きを決められないのと同じだ。初めから本の筋書きを決めたら、エネルギーもバイタリティーもなくなっちゃう。血が通わなくなるよ。来る日も来る日も、その本の世界を生きて、キャラクターたちを泳がせてやらないと。(293)
<ちょっと作家の話とはズレますが、大切なオマケです>
●長続きする結婚の秘訣は?
ウェラー・ 結婚が長続きする秘訣は何ですか? (ブラッドベリは奥さんのマギーさんと彼女が亡くなるまでの56年間いっしょだった。)
ブラッドベリ・ 結婚なんていうのは、ユーモアがなかったら成り立たないものだよ。愛とは、ちょっとしたことにでも、こりゃしまったと思う繰り返しで、そうと口に出すことじゃないか。よく失敗するよ。たとえば電球が切れたままだとか、買って帰るのを忘れたとか。それで「ごめん」なんて言うだろ。つまり、悪かったと認めること、何よりもユーモアのセンスがあること ~ 何があっても、どこか憎めないところがあるように ~ というのがよき結婚生活の秘密だね。(324)★
★ この結婚生活の秘訣は、他にもいろいろ応用できそうな気がします。長い教員生活を勤め上げる秘訣としても。
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