2010年5月21日金曜日

聞くことの大切さ 

 子どもたちは書くことをたくさんもっている作家たちと捉えるのか、それとも教師がテーマを提供しないと書けないと捉えるのかでは、教える際のアプローチが大きく異なることになります。
(同じことは、読む時や話す時にも言えます。子どもたちは自分で本を選べる/選ぶことを含めて読む教育と捉えるのか、それとも子どもたちには「良書」を選ぶ能力がないから大人が提供すると捉えのかや、話し合いは自分たちでできると捉えるのか、それとも教師が話し合いのテーマも、進め方にも介入しないとうまく進められないと捉えるのか、です。)
 ライティング・ワークショップ(WW)は、当然、前者の捉え方にのっとって行われています。なんといってもねらいが「自立した書き手」を育てることですから。★

 たくさん書くことをもっている作家さんたちに、どうやってそれらを書き出してもらったらいいのかを考えて出てきたのが、5つの要素の①時間の確保(1週間に3時間、毎日15分!)、②選択の提供、③反応/フィードバックの提供、④構造・枠組みの提供(1時間のサイクルと年間を通した作家のサイクル)、⑤コミュニティづくりだったわけです。 
●もし、これら以外に必要な要素を見つけた方は、ぜひ教えてください。

 しかしそうは言っても、なかなか書けない子は歴然としています。そういう子たちを含めて、「書くことをすでにたくさんもっている作家さんたち」と子どもたちを捉えるとどういうアプローチをとったらいいのでしょうか?
 カンファランスです。
 それは、カウンセリングでカウンセラーが聞き出すイメージに近いものかもしれません。
 答えは、すべて「患者」である作家さんたちがもっていますから、教師にできることは「聞き出す」ことだけです。教えることではありません。
 このアプローチだと、教師が話すのは全体の多くて2割ぐらいで、作家さんである子どもたちが話している割合が8割ぐらいになります。教師の役割は、子どもたちがすでにもっている書く題材について知っていることを引き出すことです。それも、作家である本人がピンと来る形で。ピンと来れないと、時間を費やしても無駄になってしまいます。その意味では聞き役の教師にとってピンと来ることは二の次で、あくまでも作家本人にピンと来ることが何よりも大切なわけです。そうでない限り、筆は進みませんから。

 WWの創設者のドナルド・グレイヴスは、「言葉の学習で最も大切なことは、聞くことである」と言い切っています。

 そのグレイヴスが提案してくれているカンファランスの中で「聞くこと」をブラッシアップする練習法を紹介します(Building a Literate Classroom, by Donald Graves、96ページ)。
・ 毎月1回やってみることを提案しています。
・ 5人分のカンファランスを録音して、教師と子どもの話している時間をだいたいでいいのですが計り、1対10ぐらいになるようにするのが、この練習のねらいです。
・ おそらく最初はそうはいかないでしょうから、2回目に試してみる方法として、以下のような提案もしてくれています。
   * 「調子はどう?」と尋ねたら、20秒待ちます。
     あるいは、「これからどんなことを書くの?」と尋ねてから、20秒待ちます。
   * その答えを聞いたあとは、子どもが教えてくれたことを、教師の言葉で言い直して、
     次のカンファランスに移動します。
   * 大切なことは、子どもが取り組んでいるテーマに関して子どもに教えてもらうことです。

 聞いているとアイディアを膨らませたり、付け足したり、直したりしたくなることもあると思いますが、この練習は「聞くこと」に焦点を当てていますので、それらは無視してください。ただ熱心に聞くだけでは物足りない(従って、子どもたちの学びにつながらない)と思うかもしれませんが、子どもたちはしっかり聞いてもらうという体験をほとんどもっていません。ですから、教師が熱心に聞くだけで(ということは、子どもたちに自分の知っていることを教えてもらうことで)、子どもたちは信じられないように成長していきます。

 だまされたと思って、1ヶ月に1回ずつやってみてください。
 テープを再生して、子どもにもっと話させるにはどうしたらいいか、自分が話さない方がよかったのはどこか、待ち時間は充分だったかなどをチェックしながら聞いてみてください。得るものがたくさんあるはずです。

 私たちは、教師が教えたり、話したりしないと、子どもたちは学べないと思い込んでいる部分があります。確かに、そういう面もあるわけですが...今回の練習をすることで、実は子どもたちにこそ教えてもらうことが、より効果的な教え方であることに気づけます。


★ 「期待は結果をもたらします。」要するに、高い期待をもてば/示せば、高い結果をもたらしてくれる、ということです。それは、子どもたち対象にはもちろん言えますが、自分が研修を受けるときなどにも言えてしまいます。このことを「ピグマリオン効果」と言います。

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