2022年1月14日金曜日

生徒に気軽に「さあ、フィードバックをしあいましょう」とは言うけれど・・・・フィードバックの仕方も受け取り方もちゃんと教えていない?!

 フィードバックのスキルは教室の中ではもちろん、生きていく上でも、かなり重要です!

 訳者の一人の田中理紗さんが送ってくれた『ピア・フィードバック』(スター・サックシュタイン著、新評論、2021年)への三人の先生方の書評/紹介文と、podcast(音声ラジオ)のブッククラブを紹介します。


◆ドルトン東京学園 副校長 安居先生

「読んでいて、中学校の文化祭に向けてクラス演劇の台本づくりをしていた時のようすが浮かんできた。

仲良し数人で「あーだ、こーだ」と言いながら、セリフひとつに盛り上がったり、お互いの描写にケチをつけ合ったり、展開で揉めたり・・・。休み時間や放課後に教室で、休日に誰かの家で、雁首を付き合わせて原稿用紙に向き合っていた。
できたものをクラスで発表すると、一部の女子から大ブーイング。「この展開は勝手すぎる、(男子目線で)女子のキモチをわかっていない・・・」と。
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訳者の一人、田中理紗先生からいただいた一冊。

そういえば最近、教育書の類いを読んでいなかった(Facebookの投稿を見ると、確かに。たまには・・・)。そんなキモチを推し量るかのような魂の采配で手元に届き、昨夜から読み始めた。
理紗先生が「まえがき」で指摘しているように、私たち教師は、教室で生徒に向かって《気軽に》「フィードバックをしあいましょう」と声をかける。だが、そこに「どのような取り組みがあれば」、生徒同士のフィードバックがより有意義なものになるのかについては、殆ど意識していない。
本書はそこにフォーカスし、具体的な事例を交えながら、形式的で中途半端なフィードバックから、丁寧かつ意味のある「ピア・フィードバック」を実践するための具体的指針が示されている。
教室で、教師だけが一方的にフィードバックするのではなく、仲間(生徒)同士がフィードバックしあうと、「協力し合おう」という意識が生まれる。結果、以前に比べて試行錯誤や練習の機会が増えると同時に、お互いの遠慮や不安が減っていく。
生徒同士のチームワークやコミュニケーションスキルが高まる可能性が増え、互いの肯定感や自信を深めることにつながる。まさに、冒頭に書いた「クラス演劇に向けた台本づくり」が、そうだった。
ただ実際に、教師が教室でそれを《意図的に》行おうとすると、ふだんからそういったトレーニングを積んでいないこともあり、正直難しい。理紗先生が自ら実践した、「学んだことを生徒と共有し、生徒に対して正直に伝えながら、ピア・フィードバックの取り組みにていねいに向き合う」ことでしか体得できないのも事実だろう。
だからこそ、この本の存在意義がある。
生徒のパフォーマンスや学びの質を向上させ、教育効果を高めたいと願わない教師はいない。生徒が互いに学びあう教室を、どう作っていくか。
この本を通じてディスカッションし、自分の実践をクリティカルに振り返りながら、ピア・フィードバックしあうのもいいね。
書かれている内容は深い。だからこそ《気軽に》対話し、日常的に学びあおう。

読了後、そんな景色が見えた。」


◆聖ドミニコ学園 カリキュラムマネージャー 石川一郎先生


生徒たちがフィードバックが出来れば授業の歩留まりは確実によくなる
単に感想とか共感の世界を超えて、フィードバックの軸を定めて振り返り、内容を高めていく、その手法がふんだんに紹介されています
アメリカの文化性を楽しみながら受容し、日本のこれまでの教育をカッコにいれる

読むにあたり、お作法が必要ですね

 

◆東京学芸大学教職大学院 渡邉先生


一言で言えば、改善のための対話の仕方を生徒に教えることを通して学びの主体を生徒に取り戻すことを訴える本。
「訳者まえがき」の次の率直な言葉には、共鳴する先生も多いだろう。
「振り返ってみると、どのような取り組みがあれば、生徒同士のフィードバックがより有意義なものになるのか、本書に出合うまで私自身がずっと分からないまま、生徒にただ「フィードバックをしあいましょう」と声をかけていたように思います。」
本書は、そこから一歩先に進むための具体的指針を与えてくれる。
本書がもつ、目標とその達成基準を共有したうえで改善に向けてフィードバックを行い合うという志向性は、私が大事にしてきた、評価や助言よりも先に読み手や聞き手としてのリアルな反応を、という発想と少しずれる部分はある。が、私も、こうした、自分たちの活動の質を高めていくためにどのような対話をしていけばよいか(そしてそのために教師がどのようにモデルを示したり指導を行ったりすればよいか)がないがしろにされてきたという点への問題意識は共有している。そうした問題を考えるうえでの出発点になる本だ。

 

podcastのブッククラブ

https://anchor.fm/bookclubjp/episodes/20--ICT-e1bo62i?fbclid=IwAR3JkfVYf9v3PzFcUq9lbAvkIQqBTW8hjaKNPUb92AvIHl825J7xvgP6coA

 

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文字媒体の紹介と、音声での紹介の2種類を読んで/聞かれて、どのような印象をもたれましたか? これから(いま!)の時代、書くことだけがすべてではないことに気づかせてくれました。授業でも、多様な媒体を用意しないと、花開けない生徒は確実にいます。また、この本は国語の事例が中心ではありますが、ピア・フィードバックはすべての教科で使える方法です!

 

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