2021年7月23日金曜日

それぞれにぴったりの方法を見つけることをサポートする、という教師の役割

  「スペイン語の勉強中、教科書の文章にうんざりしました。ホセが駅までの道順を尋ねるとか、どうでもいいでしょう?」と、「新しい言語を学ぶ秘訣」というタイトルのTEDトークで、スピーカーのリディア・マホヴァは語ります。彼女は、複数の外国語を流暢に操ることのできる人たち100名に学び方を尋ねると、おそらく100通りの学習方法が 返ってくるだろうと言います。そして、学習方法はそれぞれに違っても、その共通項として、「方法はバラバラですが、どれも必ず自分が楽しめるものにしてある」と、全員が「言語を学ぶ過程の楽しみ方を知っている」ことを強調します。https://www.ted.com/talks/lydia_machova_the_secrets_of_learning_a_new_language(英語、日本語どちらの字幕でも視聴できます)

 このTEDトークから、それぞれにぴったりの方法を見つけることをサポートする、という教師の役割に関連して、以下の2つのことを考えました。

(1)それぞれに学び方が異なること

 「100名に学び方を尋ねると、おそらく100通りの学習方法が 返ってくる」 というところから思い出したのが、ライティング・ワークショップです。『ライティング・ワークショップ』(フレッチャー&ポータルピ、新評論)では、子どもたちそれぞれにとってうまく書ける方法は異なること、そしてそれを見つけられるようにサポートすることも、教師の役割であることが記されています。

「実際のところ、それぞれの書き手はほかの人とは全く異なる独特の執筆方法をもっています。したがって、教師がすべての子どもたちに一つの書くプロセスを押し付けることは大きなまちがいであり、それは書き手としての子どもを潰してしまうことにもなりかねません」(『ライティング・ワークショップ』82ページ)。

 ライティング・ワークショップでは、「書く前の準備」から始まり「出版」に向かう「書くプロセス」を踏まえて教えることが多いです。例えば「書く前の準備」段階。そのための方法はいろいろありますが、「往々にして、書く前の準備はこうしなければいけないという、決まりきったもの」になっていて、「すべての子どもたちが、話のアウトラインをつくったり、話の進め方を決まった形式の図で整理してみたり、と教師が決めた方法で書く準備をさせられて」いることが指摘されています(『ライティング・ワークショップ』83ページ)。

 教師が「往々にして、書く前の準備はこうしなければいけない」と思ってしまい、教師が決めた方法で書く準備をさせる。同様のことは、ライティング以外のことを教える時でも、教師は、おそらく善意から、「一つの良い方法」をあたかも「唯一の方法」であるかのように教えてしまう(押し付けてしまう)可能性があることは、自分を見ていても、実感します。

 → 自分にとって「これは便利、うまくいく、効果的」と思えることが、他の人にとってそうではないことを、忘れないようにしたいです。そして、私自身、多様な方法を知っていること、そのためにも、学び続けることの大切さも思います。

(2)100通りの学び方の共通項は、プロセスを楽しむ方法を見つけていること

 このTEDトークで、リディア・マホヴァが、100通りの学習方法の共通項として挙げているのは、「楽しい」というなんともシンプルな基準です。「ただプロセスを楽しむ方法を見つけて、言語の学習を退屈な学校の科目ではなく、毎日やりたくなる楽しい活動にしているだけなのです」と指摘し、そして、「単語を紙に書き出すのが嫌なら アプリで入力すればいいですし、教科書のつまらない内容を聞きたくないなら YouTubeやポッドキャストに いろんな言語の面白い番組があります」と選択肢の例も提示しています。実際、このトークの中で、彼女自身も、自分の大好きな番組(フレンズ)や本( ハリー・ポッター)を活用したことも教えてくれています。

 「学ぶプロセスが楽しい」このシンプルさに、戸惑いも感じました。また、教師が無意識のうちに自分の中につくりあげた「学びはこうあるべき」という、教室内に限定していたことの壁を崩してくれるような気もしました。

 他方、学習者がとても楽しそうであっても、その学びが、教師から見ると、極めて効果が低いと思うときもありそうです。

 そのギャップ?を、学習者の学び方を、教師が理解するスタート地点にできる、と、このTEDトークを試聴しながら思いました。つまり「ある学びかたを楽しめているのか」という、一見、とてもシンプルな点から学習者についての知識を得る、ということです。

 書き手として、あるいは読み手としての、それぞれの学び方の特徴を知って、それぞれにぴったりの方法を見つけられるようにサポートしよう、と思うと、どこから取り組んで良いのかわからないという時もあると思います。そんな時に、その学習者が楽しんでいる学び方を知るというアプローチも一つの方法のように思いました。

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