2019年11月30日土曜日

「作家読み」のためのリストから、絵本を少し紹介

 校内の図書館にある本から、「この作家なら、この1冊」という、「今後の作家読み」につながりそうな、簡単なお薦め(絵)本リストを作ってみました。リストに記載したのは以下です。

①著者名、② 書名、③個人的感想などを一言、④校内図書館にある、その著者の異なる本の冊数

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 私は英語を教えているので、リストは以下のような感じになります。
 ① Anthony Browne  ② Piggybook  ③ 母親が家事をするのを当たり前と思っていると、ブタになるかも? ④ 21冊

① Louis Sachar  ② Small Steps   ③ ニューベリー賞受賞の Holes の登場人物が活躍するスピンオフ作品。不器用な主人公にドキドキハラハラしながら読み、途中で深呼吸しないと読み続けられないぐらいでした。 ④ 15冊
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  私自身は、選書手段として、「作家読み」を一番よく使っているので、「作家読み」を後押しできるような、こういうリストも「あり」かな?と思っています。なお、このリストで紹介する本は、すべて、勤務校の図書館では作家の名前別で配架されています。
   
 「10歩以内で本が手に取れるのと、100歩以上歩かないと手に入らないのでは、自ずと読む量が変わってきます。これが、いくら立派な学校図書館があっても、多くの子どもたちがなかなか読むようにならない理由の一つではないでしょうか」と、『読書家の時間』36ページに記されています。本当にそのとおりだと思います。

 物理的環境が与える影響を否定するつもりはありませんし、本が10歩以内にあり、かつ、学期が進むにつれ、学習者の成長や単元に併せて、本の配置を変えたり、オススメ本を置く場所の本が増えたりする、それができればどんなにいいだろうかと思います。

  でも、諸事情で教室に図書コーナーがつくれない場合もあると思いますし、図書館でリーディング・ワークショップを行う先生もいらっしゃると思います。そうなると、校内の図書館(そしていずれは町の図書館)に、願わくば、少しでも頻繁に足を運べるようになるように、あの手この手を考える必要があります。トピック別や作家別のリストをつくり、その本を教室に持って行ってブックトークしたり、授業中にリストの本をできるだけ手にとって読むことも、その一つです。


  このリストに載せた(絵)本を調べてみると邦訳が出ているものも多いです。今日は、そのリストの「絵本」のところに入れた本から、邦訳が出ているものを中心に少し紹介します。「ひとりの作家から1冊だけ紹介し、あとはその作家を好きになって、どんどんその作家を読んでね!」というのが目的ですが、それぞれの作家から「この1冊」を選ぶのが難しくて、この手のリストをつくるときは、いつも苦労します。

 本好きの皆さんには、ご存じの作家、本ばかりかもしれませんし、皆さんなら、同じ作家から違う1冊を選ばれるかもしれません。なお、→ で個人的な感想を一言入れました。

・アンソニー・ブラウン 『おんぶはこりごり』
→ 「この1冊」を選ぶのが特に難しいアンソニー・ブラウンですが、メカに強いお母さんに敬意を表して、今回はこの本を選びました。
 


・ショーン・タン 『ロスト・シング』 
→ アカデミーの短編アニメーションも受賞している作品です。最近、ショーン・タンの個展も開催されたようです。行きたかったです。

・ジャネル・キャノン 『ともだち、なんだもん!』
→ 映画、アイ・アム・サムのなかで、サムの子どもの女の子が読んでいる絵本。この映画の中でこの絵本が読まれていることに納得です。

・トミー・デ・パオラ 『絵かきさんになりたいな』 

→ 最後の1ページ、なんともカッコイイです。

・マーラ・フレイジー 『あかちゃん社長がやってきた』

→ あかちゃんが生まれるというのは、こういうことなんですね!

・ジョン・バーニンガム 『コートニー』
→ 最後に近いページに、よく見ると浪の間にコートニーの姿が小さくあるところが気に入っています。

・バード・ベイラー 『わたしのおいわいのとき』
→ 独特の世界観が楽しめる作家です。

・ユリ・シュルヴィッツ 『おとうさんのちず』
→ 主人公の実体験に基づいています。食べ物が満足にない状態で地図を購入したお父さんの思いを考えてしまいます。


・シェル・シルヴァスタイン 『ぼくを探しに』
→ 人生を考える?絵本。この続編もお勧めです!

・クリス ヴァン・オールズバーグ 『西南号の遭難』
→ この作家は、村上春樹が何冊も翻訳しているようです。

◇ 「この作家ならこの1冊」と思った本の邦訳が見つけられなかった作家もいました。以下、その作家で邦訳が出ている中から、オススメを紹介します。

・ イヴ・バンティング 『スモーキーナイト』→ これはロス暴動が元になっています

・ピーター・レイノルズ 『てん』 → 『てん』から始まる3部作は、もう絵本としては「古典」の域?みたいな気すらします。

・メム・フォックス 『おばあちゃんのきおく』 → 読み聞かせの名手でもあるメム・フォックスが、記憶を失いつつある高齢者と男の子の交流を描きます。


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 このリストを作りながら、つくづく思うのは、「もっと範囲を広げたい!」です。過去の学習者に好評だった作家を中心に、毎年、図書館に、できるだけ「作家読み」ができるようにリクエストを出していますが、学習者と話していると、「あ、こういうトピックの本リストが必要なんだ」「この作家の本ももっとたくさん必要」と思わされることが多いです。また、私がすぐに対応できないジャンルや私が詳しくない分野の本への興味もでてきます。

 『イン・ザ・ミドル』では、著者のアトウェルやアトウェルの同僚の教師が、「生徒一人ひとりがリーディング・ゾーンに入れているかどうか、読むのを楽しめているのかどうかを確認する」ことを大切にしています(279ページ)。この一見シンプルに見えることを確実に行うために、アトウェルや同僚の教師が、いかに学習者をしっかり理解しているか、そしてそれに対応できるだけの知識をもっているかを、改めて思います。

 そして、自分には学習者の理解も、それに対応する知識も不十分であることを思い知らされます。学習者の興味やリクエストを教師が知っていく過程は、学習者が、教師を読み手として成長させてくれる過程でもあるようです。リーディング・ワークショップは、教師を読み手として成長させてくれる教え方だと、よく思いますが、生徒が成長させてくれるという部分も大きい気がします。

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