2018年6月8日金曜日

「他の人からどのようなフィードバックがあれば、書き手として成長できますか?」



これまでも、本ブログで度々紹介してきたナンシー・アトウェル『イン・ザ・ミドル』の翻訳作業も大詰めで、いま校正をしています。書名も『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』(三省堂)に決定。しかし、このタイトルでは、国語や読み・書き等のキーワード検索では一切引っかかりません! なので、ブログの読者の皆さんの普及協力が不可欠になりますので、よろしくお願いします。

 上記の「他の人からどのようなフィードバックがあれば、書き手として成長できますか?」の回答で、生徒はどのような書き手か、教師はどのような実践をしているかが分かってしまう、ある意味、とても恐ろしい質問です。
本の第6章の冒頭部分で、アトウェルさんは以下のように書いています。

生徒(中学生)たちが、これまでに書き手としてどのように歩んできたのかを知るために、私は新年度に書くことアンケートを行っています。その中に「他の人からどのようなフィードバックがあれば、書き手として成長できますか」という質問項目があります毎年、この問いへの生徒の回答から、若い書き手たちがいかにやる気いっぱいで、目的意識をもち、果敢に学ぼうとしていることがわかります。★

 単に、やる気の高さだけではなく、「ほとんど作家になっている」と思わされるような回答です。ご覧ください。

・自分が書くことを後押ししてくれるコメント
・先生や友だちが、よくできている点と、改善できる点を指摘すること
・明確でない点、表現不足の点、わかりにくい点を教えてくれること
・理解できない箇所や加筆の必要がある箇所を示してくれること
・建設的な批判。これは傷つかないし、書き手として改善できる点を示してくれて、作品がもっとよくなる
・進む方向を決められる具体的な助言
・具体的なので、それを学ぶことで、後で恥ずかしい思いをすることがない批判
・再考し、使えるかもしれない具体的なコメント
書いているものの流れがよくなるような具体的な指摘
・自分が行おうとしていることについての具体的な助言

 アトウェルさん自身が書いているように、「生徒たち(=書き手たち)は、読んでもらうため、理解してもらうため、そして鑑賞してもらうために書くということを知っている教師や生徒からの助言を求めているのです。★

 このリストの中で、作文教育から出てくるものはどれでしょうか? 逆に、出てこないのはどれでしょうか? 書き手を育てるための教え方と、作品をよくする教え方は、根本的に異なります。生涯にわたって書き続ける書き手を育てるためには、はやくライティング・ワークショップ(そして、その読み版のリーディング・ワークショップ、さらには、他教科でも数学ワークショップ、理科ワークショップ、社会科ワークショップ・・・)に転換しないとまずいな~、とつくづく思った次第です。★


★ これまでの数々のブームと同じように、アクティブ・ラーニングの流行もすでに(大分前に?)ピークは過ぎたようです。「結局は何も変える必要はない」というのが大方の先生方(小学校から大学院まで)の理解のようです。それに対して、この本で紹介されている学び方・教え方は、究極のアクティブ・ラーニングです。それは生徒たちが教師やクラスメイトに求めるもののリストから明らかだと思います。「うまい作文ではなく、自立した書き手」「正解の解釈ではなく、自立した読み手」「正解ではなく、自立した問題解決者」「正解ではなく、自立した科学的探究者」「正解ではなく、自立した市民/歴史的探究者」等を育てられるアプローチに転換しないと、教育が危ないだけでなく、社会も危ないです。

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