2016年1月8日金曜日

WWがなければ出会わない子どもの可能性

『ライティング・ワークショップ』と『作家の時間』を読んで、5月から12月までWW(ライティング・ワークショップ)を実践した横浜のT先生からの実践報告が届きました。

Aさんのエピソード>
真面目で何でもきちんとこなすAさん。先生が与えた課題に黙々と一生懸命取り組んでいます。「この場面での、登場人物の気持ちは?」と聞くと文章を元に考えた素晴らしい答えが返ってきます。そんなAさんのWWの様子です。
 2年生になりクラスにも馴れ始めた5月にWWをスタートさせました。早速、Aさんは意気揚々と原稿用紙に向かいます。好きな動物を題材に書き進めているようです。どんなことを書いているのだろうと覗くと驚きが隠せませんでした。物語の設定がとてもユニークで、Aさんにこんな創造力や自分の世界があることを知り驚きました。
 別の日には、ミニ・レッスンでくどうなおこさんの「のはらうた」から詩を紹介し、詩の規則性などを学びました。その日は、紹介した詩を元に書く子がほとんどでした。そんな中、Aさんは自分の想像を膨らませ、書くことを自分で決め、オリジナルの詩を書いていました。Aさんは自分が書きたいことを明確にもっている。それは小さな喜ばしい自己主張ともよべるものでした。ミニ・レッスンでの知識を自分で選択して作品に活用している姿は、自ら学びに向かおうとしているそのものでした。

Bさんのエピソード>
 毎日の日記や書くことに対して、少し抵抗のあるBさん。WWが始まると、少しずつ書き始めるようになりました。嘘日記や冒険シリーズなどを書き、友達に読んでもらい勇気づけ合うことで少しずつ書くことに抵抗がなくなっていきました。
 ある日、WWで詩を書いていると、何やら考え込んでいます。しばらくその様子を見ていると書き始めました。書いている内容は、友達や先生への思いを詩にしています。ミニ・レッスンで学んだリフレインの技をふんだんに取り入れた優しい詩になっていました。友達との楽しい思い出や優しさといった経験が心を満たし、溢れ出たのでしょう。教科書を読んで、まとめの活動として書くような授業だけでは、Bさんが自立的に書き進めることはなかったのかもしれません。

Cさんのエピソード>
 絵を描くのが大好きなCさん。描いた絵をいつも説明してくれます。話を聞いていると絵にも設定があるようです。このことから私は、書くことでもCさんの豊かな表現力を発揮してほしいと思いました。今は定期的に書く時間(WW)が教室の中にあります。そこで思う存分Cさんは自分で書くことを決め、想像を広げて表現活動を楽しんでいます。その作品の量は群を抜いています。こちらが読むのが追い付かないペースです。本人は書くことも読んでもらうことも心の底から楽しんでいるようです。ちょっとした合間の時間にも、物語を書き続けています。アイディアが次から次へと出てくるのでしょう。

この3人のエピソードから、一人一人が自分の創造力や表現力を生かして創作活動に取り組んでいる様子がよく分かると思います。しかし、三人の子ども達は、WWのおかげで創造力が飛躍的に向上したのでしょうか? 私の答えはNoです。三人の子ども達、いや他の多くの子ども達も本来、創造力をもっているのです。WWは一人一人の創造性を十分に発揮できる場になっていただけなのです。そこにWWに価値があると私は思っています。
WWに出会う前の私の書く授業というと、ワークシートなどを使い指導事項がしっかりおさえられるようにしていました。できあがった文章は、教科書にだけ沿ったものでした。そこには、子ども達が悩んだり工夫したり書き直したりする場面はありませんでした。それでは、子ども達が本来もっている創造力を発揮し磨けるわけがありません。創造力ではなく、教師が求めているものを書かせているのですから。
 WWは子ども達に書く喜びを感じさせる学び方です。そのためには、私自身が授業のスタイルを見直す必要がありました。私は、赤ペンで添削するのも、子どもたち以上に「こうしたほうがいい」と話すことを止めました。私が大切にしていることは、自分も書く姿を見せること、子どもの作品を丁寧に読みフィードバックすること、定期的に書く時間があるように計画を立てることです。これだけでも、自分自身の書く授業への姿勢が変わったことをふりかえることができます。

 もしかすると、教師が何とか教えようとし、子どもが理解できるようにと考える多くの手立てや工夫が、子ども達の学びに向かおうとする力を妨げているのかもしれません。子どもは大人が思っているよりずっと学ぶ力があり、創造的であることをWWRW(リーディング・ワークショップ)から実感しています。

1 件のコメント:

  1. T先生が書いてくれたように、教師が提供できるベストのものは、
    ・子どもたち一人一人が創造性を十分に発揮できる場(=WWやRW)で、
    具体的には、
    ・教師も書く姿を見せること、子どもの作品を丁寧に読みフィードバックすること(添削ではなく、カンファランスの形で)、定期的に書く時間があるように計画を立てること
    のような気がします。そして、それは従来の作文や読解や図書の時間では無理と言えるのではないかと思います。(詳しく具体的にお知りになりたい方は、『作家の時間』『ライティング・ワークショップ』『読書家の時間』『リーディング・ワークショップ』そして『理解するってどういうこと?』をご覧ください。詳しく書いてあります。)

    他の教科でも、上と同じことが言えると思いませんか?

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