『ぼくたちの散歩』(工藤直子作、文溪堂)は、子犬のカンタが日記帳をもって散歩に出かけるという設定で、書かれた歌やお話がたくさん載っています。
おそらくなりきって書くのが大好きな工藤さんのことですから、実際にこんなふうに書いているんだろうな~、と想像してしまいます。
子どもたちに作家ノートの使い方を教えるときに、この本の一部を読み聞かせてあげると、作家になるということがどういうことか、日記帳の代わりに作家ノートをいつも持ち歩くということがどういうことかがイメージしやすくなると思いました。
長新太の絵も描かれているので、書くことだけじゃなくて、絵でもOKということも伝わります。
ということで、低学年にはもちろん、高学年でも(特に、詩や自分の日常の中から題材を選んで書く時など)試してみてください。
もうひとつ、作家ノートについて作家本人が書いているのも見つけました。『安房直子コレクション2 見知らぬ町ふしぎな村』(偕成社)の巻末エッセイ(336ページ)です。「一冊のノートのこと」というタイトルで、以下のように書いてありました。
思いついたことは、何でも、メモすることにしています。
そのためのノートを一冊、いつも、引き出しにしまっておいて、ときどき、とりだしては、書きこんだり、ながめたりします。
そこには、おぼえたての花の名前や、珍しいお料理の作り方、猫の会話や、うさぎのひとりごと、そして時には、短編のはじめの一行や、きちんとしたあらすじや地図まで、何でも書いておきます。ごたまぜの、すごいノート! 他人には、とても見せられないし、見せたって、誰にもわけのわからないノートですが、これは、私の宝物です。
ひとつ作品を書き上げて、さあ、次は何を書こうかしらと、とりとめなく、このノートを開く時が、私のいちばん幸福な時です。
このノートの中身が、豊かであるかぎり、私は、これから、いくらでも、作品を書いていけるし、その過程の苦労にも耐えてゆけるという気がするのです。
『児童文学の世界』1988年 偕成社刊
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