2024年1月5日金曜日

「作品をよくするのではなく、書き手を成長させるために教える」ってどういうこと?

この違い、分かりますか? 

これは、ライティング・ワークショップの生みの親であるドナルド・グレイヴスが繰り返し言っていたことで、ライティング・ワークショップ(作家の時間)で最も大切にされていることの一つです。

 私たちは、個々の生徒の作品をよりよくするために時間とエネルギーを割きがちです。それは、一般的には添削という形で行われます。教師がテーマを出して生徒たちに書かせ、提出された作品を丁寧に読んで、間違いやよりよく伝わりやすくできる部分を訂正したり、提案を書いて生徒に返します。それが、あたかも教師にとっての最も大切な仕事であると錯覚して。

 しかし、大方の生徒にとっては、作品を提出した段階で「すべては終わっている」ので、教師が添削したものをもらっても、それを丁寧に見直して、教師の提案等を踏まえて書き直そうとは思いません(実際、時すでに遅しです。教師もそんな時間は生徒に提供することはしません)し、訂正が次の作品にいかされることもありません。

 ちなみに、この問題は本の執筆者(特に、ノンフィクションで学術系の分野が多いと聞きます!)と編集者との関係でも存在し、生徒たちと同じ問題が起こり続けています。編集者が一生懸命に読者にとってより読みやすく、分かりやすい文章にすべく手を入れるのですが、執筆者は、編集者から戻ってきた原稿をサ~と読み直し、気になった点だけを指摘して(つまり、編集者が努力して読みやすく/分かりやすく修正した部分などは目もくれずに)戻すだけです。結果的に、編集者は「執筆者たちの文章は読めたものではない!」と不平を言い続けています。

 両方の場合で、かなりの時間を教師も編集者も割いているのに、いっこうに生徒の書く力も、執筆者の書く力も向上しません。どこかに、構造的な問題があるというか、時間のかけ方に問題があるようです。

 ライティング・ワークショップ(作家の時間)は、この問題を乗り越えた方法として、生徒がまだ書いている間に(作品を清書して提出する前の段階で)、繰り返しカンファランスを行います。その際のポイントが、タイトルの「作品をよくするのではなく、書き手が成長するために教える」です。これによって、直す必要がある全てを指摘して直させるのではなく、書き手が身につける必要のある優先順位の高いものから順に確実に身につけられるように(つまり、いま書いている作品ではもちろん、これから書くであろう作人でも活かし続けられるように)提案/問いかけていきます。「指導していきます」と書きたいところですが、それは結果的にしていることで、実際に教師がしていることは、投げかけです。判断して、それを受け入れ、そして実際に使うか否かを判断するのは生徒ですから。つまり、選択権を生徒に委ねているのです。その方が、身につきやすいからです。

 これは、ライティング・ワークショップ(作家の時間)で書く作品は教師に対して書かれたものではないことが多いことにも関連しています。個々の生徒が明確に書く目的や対象を設定して、それを満足するために書いていますから、従来の作文の作品のようにほとんど読むのは教師だけとの大きな違いです。教師も、自分が納得できるものにすることが目的ではなく、その対象に届くように生徒が書けるようにすることに、生徒と一緒に取り組むサポーター的な役割を担っています。

 また、ライティング・ワークショップ(作家の時間)では、提出された作品に対しても、教師がしっかり読み込んで添削するようなことはしません。そもそも、下書きや修正を繰り返している間にかなりのやりとりをすでにしていて、内容はもちろん、書き手の強みや弱みはすでに把握していますし、自分に対して書かれたものではありませんから。ベストのフィードバックは、教師からよりも、作品の対象(やクラスメイト達や保護者等)から直接書き手に戻してもらった方が、次に書く意欲につながります。

 このようなサイクルを回しながら、ライティング・ワークショップ(作家の時間)は「作品をよくするのではなく、書き手を成長させるために教える」を実現しています。直接的に、作品をよくする努力はしませんが、結果的には、旧来の添削アプローチよりもはるかにいい作品ができてもいます!

 

 書き手を成長させるために教えることを実現するためにやれることは、

   個々の生徒を書き手としてよく知る ~ 強みと弱みを把握する。個々の生徒の作家のサイクルhttps://wwletter.blogspot.com/2012/01/blog-post_28.htmlをよく観察すると同時に、カンファランスをして記録を取る。

   何が一人ひとりの書き手にとって最も伸ばす必要があることかを判断する ~ 学年の間に押さえること(学習指導要領と教科書をベースにつくったチェックリストないしルーブリック)を参考にしながら、①を踏まえて、生徒との話し合いをさらにして、教師が判断する。

   一人ひとりの書き手に、ニーズの高い順番に教えていく ~ 例えば、何を書いていいのか分からない生徒、短い文章しか書けない生徒、たくさん書けるけどインパクトが伝わらない生徒に、それらを乗り越える方法★を、ミニ・レッスン、小グループ対象、個別カンファランス★★で教えていく。

   常に「書き手はどうするか」という言葉を使って教える ~ 生徒が書いている作品を対象にして教えるのではなく、書き手がやれることを教える。たとえば、読み手が読みやすく、かつ理解しやすくするための方法として、詳しく説明するのではなく、どう見えのるかを書くことによって実現する方法を教える。そうすれば、いま書いている文章はもちろん、これから書くすべての文章に応用することができる。

 

参考: https://www.edutopia.org/article/teaching-writing-elementary-school

★これら3つは同じ課題ではありませんが、自分が書きたいもの/書けるものを網羅的にリストアップし(誰に対して何のためにも考えつつ)、それらのなかから優先順位の高いものを選び、どういう流れ(構成)が望ましいのか、どこに力点はどこか(どこは詳しく書き、どこはあっさり書くか)などを考えるなどの方法です。

★★クラスのほぼ全員が該当する場合はミニ・レッスンで、数人の生徒しか該当しない場合は小グループで、一人の生徒しか該当しない場合は個別カンファランスで対応する選択肢を教師はもっています。

0 件のコメント:

コメントを投稿