2022年10月7日金曜日

最近のお気に入り絵本紹介(プラス長編詩?を一つ)

  今回は、最近のお気に入り絵本から何冊か紹介します。定期的に見ているオンラインの読み聞かせサイトで、新しい絵本に出合い、そこから同じ著者の絵本を探したりすることが結構あります。以下の3名の作家(デボラ・マルセロ、ソフィー・ブラッコール、アンドレア・ベイティー)のうち、2名も、最初に知ったのはオンラインでの読み聞かせを通してでした。

・『びんに いれてごらん』(デボラ・マルセロ、なかがわちひろ訳、光村教育図書、2022年)

オンラインの読み聞かせイベントで著者自身が読み聞かせていて★、この作家を知りました。この本の登場人物(動物)の中に教師は出てこないものの、ピーター・レイノルズの『てん』を思い出しました。友達の引っ越し、シェアすること、大切なものを伝えることなどを考えることができそうな絵本です。

→ この絵本と対になっている絵本として、『びんから だしてごらん』(デボラ・マルセロ、なかがわちひろ訳、光村教育図書、2022年)も出ています。テーマから考えると、あまり対になっている印象を受けませんでした。前作の『びんに いれてごらん』の方が、私は好きです。

・『地球のことをおしえてあげる』(ソフィー・ブラッコール、横山和江訳、鈴木出版、2021年)

自分の日常生活を眺める視点を、少し広くしてくれそうな絵本です。『いろいろ いろんな かぞくの ほん』(メアリ ホフマン、杉本 詠美訳、少年写真新聞社、2018年)を思い出しました。立ち位置は似ていますが、『地球のことをおしえてあげる』は、より広く、動物や自然についても思いを馳せることができます。家の形態も多様であるだけでなく、戦争や自然災害で家を失った人もいることも思い出させてくれます。

・『おーい、こちら灯台』(ソフィー・ブラッコール、山口文生訳、評論社、2019年)

『地球のことをおしえてあげる』と同じ著者の作品としては、『おーい、こちら灯台』が大好きです。灯台での仕事や日常生活を描いています。船舶の安全を守る大切な仕事。時には急いで対応しなければいけないこともありますが、絵本に流れているトーンは静かな印象を受けます。コールデコット賞を受賞しています。

→ 上記2冊を出したソフィー・ブラッコールは、他の作家のためのイラストも多く書いています。よく知られているのは『プーさんと であった日 〜世界で いちばん ゆうめいな クマの ほんとうに あった お話』リンジー マティック, ソフィー ブラッコール (イラスト), 山口文生訳、評論社、2016年)かと思います。

・『ちいさな こえが みらいを かえる!』(アンドレア・ベイティー、かとう りつこ訳、絵本塾出版、2021年)

同じ出版社、同じ訳者で、2017年に『しっぱい なんか こわくない!』、2018年に『せかいは ふしぎで できている! 』と、理系の女の子の背中を押してくれるような絵本を出したアンドレア・ベイティーですが、今回は公園をつくろうとするお話です。(コミュニティの人のために)役に立つ人であること、そのために実際に行動するときの不安などを感じます。主人公の働きに賛同する人が登場しているページのイラストでは、『しっぱい なんか こわくない!』、『せかいは ふしぎで できている! 』の主人公の姿もありました!

*****

(おまけ)

・『ビリー・ジョーの大地』(カレン ヘス、伊藤比呂美訳、理論社、2001年)

 10月1日の投稿「言葉のもつエネルギーに圧倒される〜宗左近の長篇詩『炎える母』〜」を読んで思い出し、少し古い本ですが、地元の図書館から借りてきて、読みました。こちらは絵本ではありません。300ページを越す長編で、14歳の少女の視点で、時系列で、日記のような詩で紡がれています。ニューベリー賞も受賞しています。原題は Out of the Dust(Karen Hesse, Scholastic Reissue版, 1999)。1930年代、アメリカ中部の大平原でダスト・ボウルと言われる砂嵐が何度も起こり、人々を苦しめます。初めて読んだのは10年近く前?ように思います。そのときと比較すると、私自身のダスト・ボウルについての知識も増えていたこともあり、その過酷さも以前よりは想像でき、理解の助けになりました。

 10月1日の投稿で、吉沢先生は『炎える母』について「東京大空襲の悲惨さを訴えるとか、戦争の醜さを告発するといった視点では書かれていません。自分にとってかけがえのない一人の人間を失うということ、その一人を死なせてしまうということ、そしてそれに向き合いつつも、それによって癒されることのない作者の心を伝えていると、私は感じます」と記されていました。

 『ビリー・ジョーの大地』は、著者の体験ではありませんが、過酷な現実の中でそれでも1日1日生きていく主人公に引っ張られて、どんどんページが進みます。

*****

★『びんに いれてごらん』の著者による読み聞かせ(英語)は3分半ぐらいですので、よろしければこちらもどうぞ!

https://www.youtube.com/watch?v=9o1Mr5yaJhg

0 件のコメント:

コメントを投稿