2019年8月3日土曜日

「意味のある繰り返し」と「読み直すことの価値」

 少し前ですが、小学校低学年向きぐらいの、短い英語の絵本を使った読み聞かせのワークショップに出席したことがあります。

 最初の読み聞かせのあとに、いくつか質問をされたのですが、それは、テキストをもう一度見ないと答えられないような質問でした。

 「では、どうだったか確認してみましょう」、ということで、質問の答えを確認するために、再度、読み聞かせです。

 その後も、さらなる質問が提示され、 気がつくと、同じテキストを、何度か、焦点を変えながら、読み聞かされていました。

 このワークショップの最後で、講師の先生が次のようなことを言われたのが、強く印象に残っています。

 「言葉が定着していくためには、重なりや繰り返しが大切。教師は、いかに意味のある繰り返しを作り出すかを、考える必要がある」

 上の言葉は、私の記憶の中にある言葉なので、きっと私の解釈の入った言葉だと思います。でも、「意味のある繰り返しを作り出す」という概念については、その後、よく考えるようになりました。

 「意味のある繰り返し」を考えるときに思いだすのが、「読み直すことの価値」です。リーディング・ワークショップの中では、同じテキストの「読み直し」は、例えば、以下のように、よく行われます。

・ブックトークをするために、その本をざっと読み直す。  
・ブッククラブの準備のために、話したいところに付箋などを貼りながら読み直す。
・書評や紹介文を書くために読み直す。  
・書き手の目で、上手な箇所や作者の工夫に注意しながら読み直す。(→ これはライティング・ワークショップのミニ・レッスンとして行うことも可能です)
・複数の本を比較するために読み直す。
  (その他、『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ、新評論)の46~47ページ「ミニ・レッスンで読み聞かせを使う」の中でも、それまでにクラス全体への読み聞かせで使った本の一部を、再度使う例が挙げられています。)

 また、教師があえて設定や奨励をしなくても、お気に入りの箇所の読み直しなどは、読み手がよく行っていることだと思います。

 他の読み手とつながったり、優れた作家が行っていることを学べたりと、読み直しから得られることは多いです。しかも、読み直しは、「読む目的に応じて読み方を変える」場ともなります。得られることの多い「読み直し」(つまり、意味のある繰り返し)ですが、言葉の学習自体も同時にサポートしているのだ、と思うと、まさに一石二鳥です。

 しかも! 読み直しの価値はそれだけではありません。6月24日のRW/WW便り「読書は人生の再読」では、読み直しから(そして、読むこと自体から)得られる豊かさや広がりという価値が説明されているように思いました。

  そういえば、『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の著者たちは、書くことにおいて、たった一つのことしか教えられないとすれば、自分の書いたものを読み直すことを教える、と記していたことも思い出しました。 

 こうやって書いていると、読み直しにはいいことがいっぱいありそうなので、夏休み、いろいろ「読み直し」ながら、引き続き、考えてみたいと思います。 

0 件のコメント:

コメントを投稿