2019年5月31日金曜日

自分を7つのストーリーで紹介するとしたら・・・

ジャネット・アレンさんは、読み書きを教える教師のサポートを長年している人です。
学校レベルの教員研修があまり機能しないのは、洋の東西に関係なく、同じようです。
彼女自身、2年間も失敗続きの校内研修をリードした体験をもっており、その振り返りとして、「やり方が教員を主役にできず、彼らはやらされ感満載の時間だった」という点を真っ先に挙げ、それを打破する方法として最初に取り組んだのが、この7つのストーリーの活動です。これほど、自分に引きつけられる方法はないのではないかと思います。

①「教師である自分を7つのストーリーで紹介するとしたら、何を紹介しますか?」
②「自分の読み・書き史を7つのストーリーで紹介するとしたら、何を紹介しますか?」
③「国語の教師である自分を7つのストーリーで紹介するとしたら、何を紹介しますか?」

②の質問に対する、私の7つのストーリーを紹介します。

1 まちがいなく、私自身の小~高時代の悲惨な国語教育が反面教師になっています。完全に読み・書き嫌いにしてくれ、それから立ち直れるようになるまでに大学院を卒業してからも5年ぐらいを要しましたから。それほど重い後遺症にもかかっていました。そしてその経験が、1960年代には日本のアメリカも同じ読み・書きの教育をしていたにもかかわらず、一方は飛躍的な発展を遂げ、もう一方は半世紀も同じ状態にあるのをなんとかしたいと思ったきっかけになっています(半世紀も、同じところで足踏みをし続けることは許されるのでしょうか?)

2 ワープロの登場。原稿用紙から解放され、削除やコピー&ペーストが容易にできるようになったことが、書くことアレルギーをかなり緩和してくれました。キーボードをたたく形で書けるようにならなかったら、私はいまでも書けないままが続いていたのではと思うぐらいに、大きな出来事です。

3 一方で読む方は、1980年代のグローバル教育、開発教育(いまはESD)、環境教育、人権教育など、90年代以降は教育の様々な(たとえば、上で説明したPD、評価、学校経営/リーダーシップ、そしてもちろん読み・書きなど)分野の英語の本を読み漁っていました。特にいいのは訳しました。http://eric-net.org/text01.html(残念ながら教育の分野で読むに値する日本語で書かれた本を見出すのは困難ですから。)明確な目的がもてて、かつその分野に精通すればするほど、いい本にドンドン出合えることに気づけたことも大きな発見でした。(いい本はいい本とつながっていますから、「芋づる式」という読み方が、もっとも確実にいい本に出合え、かつ効率よく学べる方法です! 80~90年代にかけて読んだ小説(歴史もの中心)は、司馬遼太郎、松本清張、堀田善衛、辻邦生、遠藤周作、塩野七生、五木寛之、阿部謹也などのものでした。阿部さんのは歴史研究書です。)

4 ナンシー・アトウェルの『イン・ザ・ミドル』との出合いは、2000年のことでした。教師ががんばって教えるのではなく、生徒たちががんばって(主体的に)学ぶ教え方を探していたので、この本に出合った時は「目から鱗」でした。彼女の実践は、中学生が対象です。彼女の本を訳して出せるまでに、18年もかかってしまいました。彼女も1970年代は、日本では今も主流であり続けている作文教育と読解教育をしていたことが第1章からわかります。

5 ルーシー・カルキンズやラルフ・フレッチャーをはじめコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ附属リーディング&ライティング・プロジェクト関係者の本との出合いも、アトウェルの本との出合いと同じレベルで大きいです。こちらの本はすべて小学生が対象です。とにかく、楽しさが前面に出ているのがいいです! 普及のしやすさも考えて『ライティング・ワークショップ』と『リーディング・ワークショップ』の順で訳しました。(が、それはほんの2冊に過ぎず、いまでは少なく見積もっても100冊は出ています。彼女たちの影響が大きいものの一つが下のデンバー・グループです。)

6 エリン・キーン(『理解するってどういうこと?』の著者)をはじめデンバー・グループとの出会いも外せません。彼女たちの業績が、優れた読み手たちが文章を読む際に当たり前のように使っている理解のための方法を、『「読む力」はこうしてつける』という形で私に紹介させたぐらいですから。こちらは、ワークショップのアプローチを国語以外の他教科に応用することにも熱心です。(すでに、こんなに本を出しています。https://www.pebc.org/publications/

7 最後は、『言葉を選ぶ、授業が変わる!』と『オープニングマインド』の著者のピーター・ジョンストンとの出会いです。彼は、研究者の立場から、リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップ(RWWW)のクラスの意味や価値を分析し、紹介してくれています。他のいろいろな教育の分野(たとえば、ドウェックの「成長マインドセット」やヴィゴツキーの「発達の最近接領域(ZPD)」など)とも関連づけてくれているのがいいです!

7つには含めることができなかった番外編として(理由は、読み書きが中心ではないという理由で)、
・著者のキャロル・トムリンソン自身が読み・書きの教師であったということもあり『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』と『一人ひとりをいかす評価』ははずしたくありません。
・『「学びの責任」は誰にあるのか』の「責任の移行モデル」は、元々は読みの指導からスタートしています。なお、「責任の移行モデル」を図化すると図1になります。それを読みの教え方に即して多様な教え方・学び方として表したものが、図2です(いずれも、出典は『読み聞かせは魔法!』の181ページ)。従来の読み聞かせ、考え聞かせ、対話読み聞かせ、そしていっしょ読みの4つが『読み聞かせは魔法!』で紹介されています。ガイド読みと個別読みは『読書家の時間』で、ブッククラブは『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』で、ブック・プロジェクトは『リーディング・ワークショップ』でそれぞれ詳しく紹介されています。要するに、日本の読解指導は「自立した読み手」になるには決定的に方法が欠落していることが図2から分かるわけです。)

・『最高の授業』は、RWWWの「聞く・話す」への応用と捉えられます。
・現在訳しているNurturing Inquiryという本は、ライティング・ワークショップを理科に応用して実践例ですし、日本でも「数学者の時間」「市民/歴史家の時間」「科学者の時間」の実践チームがすでにがんばっていますから、他教科への応用は十分に可能であることもすでに証明されています。

 ぜひ、皆さんも、教員研修をする際の導入として①~③の質問や、そのバリエーションを使ってみてください。メンバーが書き出したものをベースにしたら、従来の教員研修とは違った展開が考えられると思いませんか?

参考: Becoming a Literacy Leader, 2nd Edition, 2016  by Jennifer Allen(主に第3章)


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