2019年5月25日土曜日

子どもの希望をかなえる選書 ~子ども、教師、司書の連携

 リーディング・ワークショップが進むと、子どもたちも、自分なりの選書の基準を少しずつ作り始め、自分の読みたい本がどんな本かを、少しずつ言えるようになってきます。ある本を「面白い!」と思うと、「この本と同じ作家の、他の本はないの?」とか、「こんな感じの本を次も読みたい」などの声を耳にする先生もいらっしゃると思います。

 「それなら、次に読むお薦めは、これ!」と、お薦め本をさっと本棚から取り出せるときは嬉しいものです。でも、その反面、「教室には、この作家の本はこれ1冊だけだし、こんな感じの本も他にはない」「このトピックの本もこれ1冊だけ」というときには、少しもどかしさも感じます。

   今回は、5年生を教える冨田先生の教室から、子どもたちの希望をかなえるような選書を支援した一つの試みを紹介します。

 これは、子どもたち全員に、どんな本を読みたいかリクエストを書いてもらい、それを活用しながら、公立図書館の団体貸出を使うというものです。

 冨田先生の教室の様子を見ていると、公立図書館の団体貸出を使うときは、①子どもの希望、②その子どもが読めそうな本をわかっている教師の知識、③本に詳しい司書、この3者の連携があると、団体貸出が、より効果的に機能するのがよくわかります。

 その時の具体的な手順や様子が以下です。

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 「どんな本が読みたいですか?」という問いに対して、子どもたちに答えを書いてもらうと、以下のようにいろいろと希望が登場しました。

・野球の練習の方法の本が読みたい。
・世界的サッカー選手の伝記が読みたい。
・宇宙の本が読みたい。
・恐竜の本が読みたい。
・海外旅行の本が読みたい。

 もちろん具体的な書名を挙げてくる子もいます。

 公立図書館からは、予約いっぱいの人気のベストセラーは借りられませんし、あまりにテーマが狭くて該当の本がないものもありました。

 司書の方に、具体的な書名でも揃えてもらいますが、それに加えて、子どもたちの希望を聞いて、該当しそうな本を多めに揃えておいてもらいました。

 僕が図書館に行ってその子の顔を浮かべながら見繕い、難しすぎる本、簡単すぎる本は手を加えてちょうどよい本にしていくようにしました。40冊しか借りれないので、60冊ぐらい揃えてもらい、司書の方にアドバイスを受けたりしながら選書していき、できるだけ子どもの希望に近いものを選ぶようにして、40冊にすることができました。

 子どもたちは、自分がリクエストをした本が実際に教室に届いたことが本当に嬉しいようです。

 自分のリクエストを図書館が聞いてくれたという体験を持っている子はほとんどいないので、宝箱を開けるかのようにダンボールを開いて、自分のリクエストした本を手にとっていました。

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 ライティング・ワークショップで、書く題材を上手に選ぶことが書くことの原動力の一つになるのと同様に、リーディング・ワークショップでは読む本を上手に選ぶことは大切です。でも、読みたい本がわからなかったり、自分では読めない、難しすぎる本を手にとったままの子どもがいるときもあると思います。

 上の実践を紹介してくれた冨田先生も「選書は難しいので、教師の支援が必要な子が多くいます。教師の他にも、学校司書や公立の図書館司書の助言、良い本を探すための掲示物やおすすめ本、友達が読んでいる本など、手がかりになるものを紹介して、選書の力をつけていくサポートが必要です」と言っていました。

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 上の実践を読みながら、『読書家の時間』(新評論、2014年)の52-53頁に、「公立図書館の利用」というセクションがあることを思い出しましたので、またこちらもご参照ください。


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