2016年8月19日金曜日

再読の楽しみ(そして再読を授業に取り入れる価値)

 ケストナーの『飛ぶ教室』を、数日前に町の図書館から借りてきて読みました。小学校高学年?向きの名作のようですが、実は初めて読みました。返却する前に、自分の好きな場面をもう一度読んでから返却したくなり、2か所ほど読み返しました。

 

 好きな本全体を再読する時もそうだと思いますが、ある本の好きな場面を再読しているときも、すでにストーリーが分かっているので、余裕をもって読めますし、1回目に読んだときに気付かなかったところに気づくこともあります。


 すでに自分が好きなことも分かっているので、安心できる、楽しい時間です。


 しかも、楽しみながら、しっかりある種の「反復練習」をしているわけですから、言葉の使い方なども定着していきます。文脈のないところで無理やりさせられるドリル的な反復練習よりは、はるかによいと思います。

 

 「再読」あるいは「読み返す」ことは、リーディング・ワークショップの授業では、友達に本を紹介する時に、とりあげられるトピックかもしれません。ただ、このときは「単純に再読を楽しむ」というよりは、「本を紹介するという目的で再読する」という感じだと思います。

 

(→ 少し話は逸れますが、友達に本を紹介/推薦をするために本を読み直す場合、紹介する側は「大切なところを見極める」「要点を確認する」「インパクトのある引用できそうな文を見つける」などの、目的をもった読み方の練習がしっかりできます。紹介される側は、いい本を知ることができ、かつ読んでみて分からなくなったときに、紹介者に質問することもできます。また「話す・聞く」という活動とも組み合わせることもできますから、本の紹介という活動自体、大きな価値があると思います。『読書家の時間』第7章「友達同士で読む」では、本の紹介文、カード、口頭での推薦等々の方法で、日本の教室での実践が具体的に載っていますのでご参照ください。)

 

 「本の紹介の準備をする」というミニ・レッスンはあっても、「単純に再読を楽しむ」というミニ・レッスンはあまりないのかもしれません。こんなに楽しい時間なのに!と思うと、なんだかもったいない気がします。
 
 もちろん、教室の中には、再読を楽しむというミニ・レッスンがあってもなくても、同じ本を何度も読む子どもも当然います。




 とはいえ、教師としては、あえて再読を奨励するよりも、「たくさん、どんどん読めるように、自分に合った本をみつけて、新しい本を読もう」と教えたくなることもあります。特に学年の初めの頃は、たとえば20分など一定時間一人読みができるように励ますようなミニ・レッスンもよく行われますし、クラスの状態を見ながら、クラスみんなで合計で読むページの目標を決める先生もいます。

 

 子どもたちの読む「量」(時間、ページ)が増えてくることは、とても嬉しいことですし、大切です。またその過程で、読むジャンルが広がっていくこともあります。


 同時に、読む時間や読むページを増やすことが順調にいき始めた時期は、量を強調することから少し離れて、たまには「再読の楽しさ」を伝えるのも一案です。

 

 夏休みもあと少し、「夏の間に読みたかった本、読まなければいけない本」のリストをちょっと横において、本棚あるいは図書館で、好きな本、好きな箇所を読み返す。ペナック先生の「読者の権利」10箇条★にも入っている「読み返す権利」を、教師もたまには謳歌するのも悪くないかもしれません。何よりもゆったりした楽しい時間ですから。


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★ ペナック先生の「読者の権利10ヶ条」はRWWW便りでも何度か紹介しています。一番最近ですと今年5月27日のRWWW便りのなかで少しでてきています。ちなみにその翌週の6月3日のRWWW便りでは「作者の権利10か条」についてです。「作者の権利10か条」は知人のブログで発見し、ブログ作成者の了承を得てRWWW便りで紹介させていただきました。作者つまり書き手の権利も、とてもいいなと思います。

さて私は『飛ぶ教室』の好きな場面を読み返したあとに、訳者(若松宣子、偕成社文庫版です)による解説を読み、『ケストナ― ナチスに抵抗し続けた作家』という伝記が出版されていること、ケストナー自身が『ファービアン』という風刺小説を出ていることを知り、新たに読んでみたい本が増えました。


またケストナーを少し検索していて、大昔に読んだ記憶のある、『点子ちゃんとアントン』もケストナーが著者だったということを知りました。読み返すことで、次に読む本への広がりも出てきますし、いつか再読してみたい本も出てきます。


余談ですが、 『飛ぶ教室』を図書館で借りたときに、ハリー・ポッター好きの家族のために、ハリー・ポッターに出てくる動物の本も借りて帰りました。すると、その動物の話が話題になるのですが、私はほとんど覚えていません。加齢(?)かもしれませんが、これだけ忘れることができるものだ、となんだか新鮮な(?)気持ちです。動物の名前は、ある意味、「新出単語」なので、新出単語定着という効果も再読にはあるようにも思います。



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