2012年8月24日金曜日

ブック・プロジェクトと跳び箱


 今週のRWWW便りのテーマは「ブック・プロジェクト」です。「ブック・プロジェクト」とは、2012年7月13日2012年4月27日のRWWWに登場した「リーディング・プロジェクト」と同じものです。

 「同じものなのに、二つの言い方?」と思われるかもしれませんが、今回以降のRWWW便りでは「ブック・プロジェクト」という言葉を使おうと思います。

 というのは「子どもたちにとっても、先生たちにとっても、リーディング・プロジェクトよりもブック・プロジェクトという言葉のほうが、本にまつわるプロジェクトだとイメージしやすい」とご助言いただいたからです。

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 共にRWを学ぶ仲間の教室には、かなり難しい資格についての本を一生懸命読んでいる子がいるそうです。その話を聞いたときに、「選択」のあるRWの学び方を活かして、自分のブック・プロジェクトを見つけた子だと思いました。

 かなり前のことですが、私の教室での最後の時間の読書記録を見ると、一人の学習者は、アンソニー・ブラウンの絵本ばかり何冊も読んでいました。(この風景は、どこの教室でも、よくあることだと思います)。「今日はアンソニー・ブラウンをよく読んだのね」と声をかけると、「だって今日が読める最後の日だから」という返事でした。もし、ブック・プロジェクトを教えていれば、もしかすると今後につなげることができたかもしれません。

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 さて、私にとってブック・プロジェクトは跳び箱のイメージがあります。

 理由は二つあります。

(1)遠くから見ると高くて難しく見える。
(2)近づていって実際に跳んでみると、踏切板もあるので、超えられることが多い(もちろん、跳び箱の上に座ってしまったり、着地に失敗することもありますが、でも踏切板を体験するだけでも、踏切板で「ジャンプ」できます)。

 (1)ですが、始めようと考えたり、動き出した直後は難しいように見えます。

 2012年7月13日のRWWW便りに書いたように、自分にとっての好き嫌いは、ブック・プロジェクトの成否を分けると言ってもいいと思います。自分の好きなこと、興味の持てることに取り組めないと、「課題として出された調べ学習」になってしまいます。これだと、今後も続けてやってみたいというものにはなりにくいでしょう。
 
 ところが、「好きなことや興味の持てることに、うまく取り組めるようにする」ということ自体が簡単ではありません。私も模索中で、まだうまくできていない部分です。好きなプロジェクトがなかなか見つけられずに、「興味のないことはできない」と率直に言ってくれたおかげで、時間をかけたカンファランスの末、ようやく「妥協点」(それでも妥協点です)のみつかった学習者もいます。見つけられずに、「課題としての調べ学習」的になってしまうときもあります。

 しかも、始めようとすると、今まで、教室の図書コーナーに満足していたように見える学習者が、「○○という作家の作品の中でも、この本と同じタイプの本はどれですか?」、「このテーマと同じ本をあと3~4冊読みたいけど、ないのですか?」等々、教師の答えられない質問をしたり、教室の図書コーナーでは対応できないリクエストが増えます。

 こうなると、ブック・プロジェクトという跳び箱を跳ぶのはたいへんだと思ってしまいます。

 (2)しかし、実際に飛ぶ段になると、踏切板があります。踏切板は、跳び箱に向かう学習者も教師も、ジャンプさせてくれるので、成長できます。

 教師にとっては、学習者のブック・プロジェクトへの思いを聞き、質問を一緒に考えたりすることで、教師自身も読み手として、全く新しい分野に目が拓かれ、成長できます。

 学習者にとっては、もちろん全員ではありませんが、教師の考えていなかったようなトピックを選んだり、教師を待たずに自分で動いて情報を得たりし始めます。(教師の予想もしていないところで調べて情報をもってきたり、調べた情報にびっくりして確認にくることもあります)。教室の図書コーナーから、教室の外の世界にある本やリソースに目が拓かれるきっかけになり、教室の外の世界にジャンプできることもあります。

 この秋、『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ、新評論、2007年)12章(208ー215ページ)などを参考に、ブック・プロジェクトを考えてみるのはいかがでしょうか。210ページには、ブック・プロジェクトを見つけるための投げかけも例も載っています。









2 件のコメント:

  1. ★ 跳び箱を飛ぶ一つの方法~自分の創造力を楽しむ10分~

     私がやってみた(WWへのおまけつき)方法を何かのご参考までに紹介します。

     まず、自分の作家ノートを取り出します。

     自分の教えている学習者を読者として、「ブック・プロジェクトとは何か?」を紹介する文の構想を練ります。もちろん、紹介する文のジャンルは自由です。ブック・プロジェクトを、比喩をつかって紹介してもいいし、リストにしてもいいし、詩の形式で紹介するのもありです。(私は詩を選択しました)。

     このとき、教師自身が自分のブック・プロジェクトから得られたことなどを織り込むといいと思います。時間は10分ぐらいに限定して書いてみます。

     → これでなんとかうまくいきそうでしたら、それを仕上げて、それを使ってブック・プロジェクトを導入します。(そして、もちろん、2、3時間あとのWWでは、この構想を練ったページを見せて、作家ノートの使いかたや書きのサイクルなどのミニ・レッスンに使います。実はこのミニ・レッスンは、WWのミニ・レッスンを考えていて浮かびました)。

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  2. ブック・プロジェクトは僕の理想です。こういうテーマがある読書を子どもたちが自律的にできるようになれば最高ですね。今年度もブック・プロジェクトに教室でチャレンジする予定です。3学期のブックレポートの単元でと思っていたのですが、2学期から導入したくなりました!

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