2010年10月22日金曜日

書かない子をどうサポートするか (2)

10月8日に続いての「書かない子をどうサポートするか」の2回目です。

RWの中で「優れた読み手が使っている方法」★を教える際に、もっとも効果的な方法は「読み聞かせ(read-aloud)」ではなく「考え聞かせ(think-aloud)」です。

読むことは、頭の中で起こっていることなので当然見えません。しかし、読む時はいろいろ考えます。その考えていること=優れた読み手が使っている方法を、声に出して語ってしまおう、というのが「考え聞かせ」です。そうすることで、教師(=子どもたちよりははるかに優れた読み手)が読む時にしていることが、初めて見える(聞こえる)ようになるわけです。「読み聞かせ」だけでは、残念ながらそれが見えるようにはなりません。★★

⑦ 書かない子/書けない子たちにとっては、この「考え聞かせ」をWWに応用した「書き聞かせ(write-aloud)」が効果的です。

書かない子/書けない子は、書ける人がどういうふうにして書いているのかをイメージできていないという問題があります。そこで、教師が実際に書く時、考えていることを声に出しながら書いていくのです。一文を書きだす前に、たくさんのことが頭をよぎります。それを全部言葉にして表してしまうのです。(実際に書くことの数倍を考えることもあるはずです。)次の文を書く前にも、ひょっとしたら書きながらも、いろいろなことを考えると思いますが、それも語って聞かせます。

このようにして、文章を書いていく時に考えていることを見えるようにしてあげるわけです。教師がいろいろ考えながら、苦しみながら、挑戦しながら、間違えながら、そして楽しみながら書いているのをナマで見せるのは、とてもインパクトがあります。

もう一つは、⑧ 子どもたちと一緒に書く方法(shared writing)があります。
子どもたちも興味が持てるテーマを設定して、子どもたちにも参加してもらいながら、一緒に文章を黒板に書いていくのです。もちろん、書かない子/書けない子たちだけを集めて、一緒に書くこともできます。とにかく、一人ではまだハードルが高いのを協力し合って書いてしまおう、また実際文字にする部分は教師が担って文章を書き上げる体験をするのです。文字のきれいさや正しさなどを気にせずに、自分が考えたことを発現するだけで、それが文章になっていくのですから、ハードルはかなり低くなりますし、協力し合って書くことは楽しいです。思わぬ発想も含めて、いろいろ異なるアイディアが出されますから。

「書き聞かせ」をする時も、「子どもと一緒に書く」時も、たまには意図的に間違えてください。そうすることで、子どもたちの修正・校正能力に磨きをかけられますし、最初から完璧な文章を書く必要はなく、下書き段階の間違いはOKという雰囲気もつくれます。

いずれか(ないし両方)試された時は、ぜひ実践報告を送ってください。(下のコメント欄か、e-mail: pro.workshop@gmail.comにお願いします。


★ 関連づける(自分と、他の本と、世界と)、質問する、イメージを描く、推測する、何が大切かを判断する、解釈する、自分の読みを修正する、批判的に読むなどが含まれます。これらの具体的な教え方については、『「読む力」はこうしてつける』(吉田新一郎、新評論、11月刊行予定)をご覧ください。「考え聞かせ」の具体的なやり方も紹介されています。
もちろん、「優れた読み手が使っている方法」はRWの中だけでなく、従来の国語の授業として扱うことはできます。しかし、教え方に注意しないと、従来の授業形態では身につかない可能性はあります。ポイントは、それらの方法を子どもたちが自分にあった本を使ってたくさん練習する時間を確保することです。

★★ だからといって「読み聞かせ」や自分でたくさん読むことに価値がないわけではありません。それらをすることで、書く題材のヒントや作家の技は蓄積されていきますから、とても価値はあります。特に、書かない子/書けない子をサポートする際のそれらの活用法ついては、別の機会に触れたいと思います。

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