2010年9月17日金曜日

教師と生徒の力強い味方「メンター・テキスト」

 私たちは真似することで、いろいろなスキルを身につけていきます。
プロの作家もそこからスタートしている人たちが多いぐらいですから、小学生、中学生、高校生、大学生が同じことをやらない手はありません。むしろ、積極的に奨励しようというのが、このメンター・テキスト(師匠代わりの本)を使うという方法です。

 メンター・テキストの選び方は、
  ① 選ぶ教師自身が好きであること。
  ② 教えた「作家の技」がたくさん使われていること。つまり、単にストーリーが面白いというだけではダメということ。
  ③ 子どもたちのニーズとカリキュラムのニーズの両方を満たしていること。
  ④ 子どもたちにも気に入ってもらえること。
  ⑤ 多様なジャンルのメンター・テキストを探すこと。

 メンター・テキストの使い方は、
  ・ まずは、読み聞かせからスタートです。何よりも、子どもたちに気に入ってもらうことが先決ですから。
  ・ その後で、いろいろな形で使いこなしていきます。ミニ・レッスンで作家の技を教えるのに使ったり(作家の目で読んでもらったり)、個別(やグループ)カンファランスで使ったりします。要するに、メンター・テキストは子どもたちが自分でも試してみたくなるような書き方を多く含んでいるものが好ましいわけです。
なお、ミニ・レッスンやカンファランスで使う時は、本や絵本を全部使うことはありません。目的に適した部分のみを選んで使います。(子どもたちはストーリーをすでに知っているので、一部のみを使うことができるわけです。)
  ・ さらには、作家の技等を学ぶだけでなく、書く題材を見つけるのにも使います。

 メンター・テキストには、よく絵本が使われますが、その理由はいくつかあります。
  ・ 短時間で読めるだけでなく、年間を通して繰り返し読める。
  ・ 子どもたち自身で作家の技を探すことも容易にできる。
  ・ 子どもたちに真似して欲しい内容をたくさん含んでいる。
  ・ 長さは、質とは関係ないことにも気づいてもらえる。(短い方が、文章や作家の技が選りすぐられていることに気づける)
  ・ 何よりも魅力的なイラストが描かれている。読むのが好きではない子にとっては、それがあることが大いに助けになる。

 もちろん、メンター・テキストを絵本に限定する必要はありません。効果的なメンター・テキストの条件を揃えていれば、何でも使っていいし、また使うべきです。多様な方が好ましいです。(もちろん、教科書の中にある教材もメンター・テキストの候補に含まれるとは思いますが、上の5つの基準にあわないと、はずれてしまう可能性はあります。)

 以上は、Mentor Texts: Teaching Writing Through Children’s Literature K-6, by Lynn Dorfman and Rose Cappelli, Stenhouse, 2007を参考に書きました。

 具体的にどのような本がメンター・テキストとして使われているかというと、たとえば
    ジェーン・ヨーレンの『月夜のみみずく』
    ピーター・レイノルズの『てん』
    クリス・ヴァン・オールスバーグの絵本
    レオ・レオーニの絵本
    メム・フォックスの『おばあちゃんのきおく』
    バード・ベイラーの『だれにも石が大切』
    E.B.ホワイトの『シャーロットのおくりもの』
などです。「メンター・テキストの選び方」を参考にして、年間に数冊用意できるといいのではないかと思います。日本人が書いたのでいいのがあったら、ぜひ教えてください。

1 件のコメント:

  1. メンター・テキストを使いこなすためには、教師はいい本を読んでいないといけないことを意味します。これは一人ですると大変ですが、二人で、あるいは何人かのチームですると楽になりますし、メンター・テキストとして価値も検証しやすくなります。
     多様な子どもたちがいますから、1冊、2冊の本で全員を満足させるということは不可能です。(教科書は、その無理なことをやろうとしているわけです。)従って、多様な本を探すことが求められるわけですが、間違ってもがんばりすぎて、1年でたくさん集めようとしないことです。数年をかけてやれば、徐々にいいのがたまっていきますから。
     とにかく、教師ががんばって教えるのではなく、子どもたちが真似したくなるような作品を提示することで、教師はがんばって教えなくても済むようにする方法です。本物の作家が実際にしている方法ですから、とても効果的であることは間違いありません。

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