2010年9月3日金曜日

(質問)「作品をつくるときの好きなジャンルは?」 → (答え)「詩!」

 突然ですが詩について書きます。そして、WWのブログですが、書くことだけ、というよりも「読み書きのつながり、つまり、書けるようになるために読む、そこから学ぶ」、そんなことについて書きます。

 中学生のクラスの子どもの2学期の「自己振り返りシート」を見ていた先生が、 「どのジャンルで書くのが好きですか?」という質問に、なんとクラス全員の子どもが「(特に形の決まっていない)詩」と答えていた、と気づいたそうです。

 この中学生のクラスとは? と言いますと、ナンシー・アトウエル氏のクラスです。(おそらく何度か名前を聞いたことのある方もいらっしゃると思いますが、RW/WW に大きな貢献をした中学校レベルのとてもとても有名な実践者です)。

 「どうしてそのジャンルで書くのが好きですか」という質問については、「素晴らしい時間をもう一度生きることができる」、「見たり、聞いたり、感じたりしたことを描写しようという、知覚・感覚的チャレンジが好き」、「表現に限界がない。自分のあらゆる思いを、具体的かつ美しく言葉にできる」等々、すごい答えがたくさん紹介されています。

 上のことはアトウエル氏の Naming the World: A Year of Poems and Lessons (Heinemann, 2006) とセットの A Poem a Day: A Guide to Naming the World の 最初のページに書かれています。

 ★ 生徒たちが、詩とは自分にとってとても強力な表現手段と感じている、そして中学生にとっては、このジャンルは、自分を表現するのにとても適したジャンルになっている、だから子どもたちは詩が大好きなんだなと思いました。★
 
 私はこの本を読みながら、詩ができることの素晴らしさというか、すごさに、目から鱗が落ちるような思いと、大きな感動をもちました(この本に限らず、アトウエルさんの本は、いい本が多いです)。

 A Poem a Day: A Guide to Naming the World には DVDもついていて、そしてNaming the World: A Year of Poems and Lessons の方は、アトウエル氏が厳選した集めた詩(200 以上)とその教え方が載っています。英語のいい詩(特に授業使えそうな)をさがしている人にも、いい本です(
中には教師が生徒をダメにしていく、みたいな恐ろしい詩もあります)。

 A Poem a Day: A Guide to Naming the World  の方に目を戻します。

 まずはいい詩に触れ、それらを使って適切に教えられること、これが基本です。

 アトウエル氏は自分にとって、授業で詩を選ぶ基準として4つ挙げています。

(1) 自分が好きな詩であり、それを共有するときに情熱を持って共有できる。

(2) 印象的で記憶に残るもの。そうすると、生徒の心に残る可能性もある。

(3) 自分の教えている生徒たちが、きっと好き、あるいは惹かれるだろうと思うもの。

(4) 詩とは何について書くことができるのか、そして、詩ができることとは何か -- これらについ
て、生徒が学べるような(いろいろな)詩

 → つまり、そういう幅をもって、いろいろな詩を扱っていく、ということです。

 → そうすることで、生徒は、詩でどういうことについて書けるのか、とか、詩を書くことでどういうことができるのかを理解できるようになってきます。(この4項目については、A Poem a Day: A Guide to Naming the World  4ページ) 

 『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)に、「絵本には多くの利点があり、ワークショップに使うには理想的です。まず、そんなに長くないので一度のワークショップで読み終えることができます。また、短いことの利点はほかにもあり ます。書き出し、場面設定、話の進め方、山場、結末といった話の構成要素が、子どもたちにとっては複雑な長編小説よりもはるかに把握しやすいのです(97~98ページ)と書いてあります。

 詩は、絵本と同じように、(絵本より短いものもあるので)、それほど時間がかからずに、でもいろいろなことを沢山教えられるようです。

 アトウエル氏はワークショップの初めにみんなに同じ詩を配り、先生がその詩について、簡単に話したあと、先生がとても上手に読みあげて(A Poem a Day: A Guide to Naming the World 21-24ページ)、そしてそのあとで、それについて学ぶ時間を少し取ります。詩についての時間は
全部で10分でできるといっています(A Poem a Day: A Guide to Naming the World 3ページ)。

 そして、Naming the World: A Year of Poems and Lessons (3ページ)では、新学期の初めの授業で、ノートの一番上に「詩ができること」という題名を書いて、そしてそれから
2週間、詩について話し合いをしたあとで、その日に新しく学んだ詩から、そのリストを少しずつ足していくようです。
 
 その2週間が終わったあとも、「生徒は詩ができること」について新しく気付いたときは、そこに足していくようです。詩の学びは最初の2週間で終わるわけではないからです。

 アトウエルさんが上の条件に合うように選んだ詩を、アトウエルさんが上手に教えるので、子どもたちもいろいろなことを気付きます。
 
 子どもたちが気付いたこととして、そのリストにどんなことが書かれているかが、なんと
20項目ぐらい挙げられています。Naming the World: A Year of Poems and Lessons、3ページ)

 そこからいくつか紹介します。

○ 詩は何についてでも書ける

○ 私たちの感覚をくみ上げてくれるーー想像の中で、見たり、感じたり、聞いたり、味わったり。

○ 本質的なレベルで他の人と結びつけてくれる:心と知性から心と知性へ

○ 怒りを表現する、苦しかった経験を理解するのを助けてくれる

○ 感情を定義し、それを芸術につくりあげる

○ 日常生活を新しい視点でみれるようにしてくれる

○ 日々存在していることの美に気付く。私たちの周りに隠れている詩について目をひらかせてくれる。
 
*****

 いい詩をみつけたとき、いい詩を教えたときは、ぜひそれも記録に残し、共有し、蓄積していきたい、そういう詩の(共有)仲間が増えると、詩も教えやすくなるように思いました。そして蓄積ができてきたら、1日のどこかで10分とって、「その日の詩」を毎日教え、生徒たちもそこから学ぶ、こんな学校生活もいいなあと思います。

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