2018年1月26日金曜日
自分の実践を磨き続ける効果的な方法
2019年3月2日土曜日
時には、ミニ・レッスンに時間をかける
もう一つは、過去の生徒の書いた優れたレター・エッセイを集め、生徒が優れたレター・エッセイを分析し、その特徴を名づけていく(305~311ページ)です。
2013年1月11日金曜日
教室内の物理的環境(とその変化)
2021年2月26日金曜日
お薦め絵本
今日はここ5年ぐらいに出版された絵本から、いいなと思った絵本を紹介します。
・『カールはなにをしているの?』デボラ・フリードマン/よしい かずみ、BL出版 2020年
→ しみじみ、いいなあと思いました。主人公はミミズのカールです。ミミズの土や生き物に対する「貢献」を学び、そして、それぞれに置かれた場所でなすべきことがある、と率直に思いました。
・『アランの歯はでっかいぞ こわーいぞ』ジャーヴィス/青山 南訳、BL出版 2016年
→ 文句なしに大好きな絵本です。動物たちを怖がらせるのを楽しむワニのアラン。歯もすごい迫力です。
・『フォックスさんの にわ』ブライアン リーズ/せな あいこ訳、評論社 2019年
→ いつも一緒だった仲良しさんを亡くしたフォックスさん。そんなフォックスさんに寄り添いながら描かれています。
・『おおかみのおなかのなかで』マック・バーネット/なかがわ ちひろ訳、徳間書店 2018年
→ 「こう進むのかな?」と思いながら読んだのですが、私の予測は全く当たりませんでした。私の思考の柔軟性のなさ?を感じつつ、「でもね」と反論したくもなります。
なお、この著者は、TEDトークで「良い本が秘密の扉である理由」(日本語字幕あり)というタイトルで登場しています。TEDトークは、「皆さんこんにちは、マックといいます。私の仕事は子どもに嘘をつく事です。ただし、それは誠実な嘘です」で始まります。
・『めを とじて みえるのは』 同じ著者よりもう1冊です。 マック・バーネット/ まつかわまゆみ訳、評論社 2019年
→ TEDトークの最初に言った「誠実な嘘」?がたくさん出てくる本。楽しく読了し、後日「終わり方」を教えるミニ・レッスンでも使えるかも。
・『しっぱい なんか こわくない!』アンドレア・ベイティー/かとう りつこ訳 絵本塾出版 2017年
→ エンジニアとはこういう資質を持っているのですね。ロージーという女の子が主人公です。なお、この絵本は、女性の宇宙飛行士が宇宙から無重力状態で、読み聞かせてくれている動画があります(英語)。
https://storytimefromspace.com/rosie-revere-engineer-2/
同じサイト(https://storytimefromspace.com/library/)では、宇宙関係の本の読み聞かせがたくさん! いろいろな宇宙飛行士が宇宙から読み聞かせをしています(英語)。
・『お話の種をまいて 〜プエルトリコ出身の司書プーラ・ベルプレ』アニカ・アルダムイ・デニス/星野 由美訳、汐文社 2019年
→ こんな本がもっと増えてほしいです。こういう種からスクスクお話が育っていく土壌は、誰にとっても豊かな土壌だと思いました。
・『かべのあっちとこっち』ジョン エイジー/なかにし ちかこ訳、潮出版社 2020年
→ 英語の題は The Wall in the Middle of the Book です。「向こう側」は、「こっち側」から見ている限り、なかなかわからないですよね。
・『エイドリアンはぜったいウソをついている』マーシー・キャンベル/服部 雄一郎、岩波書店 2021年
→ 小学校高学年向き? 相手への理解や自分の行動、判断が変わることで、関係性も変わってくる??? 好き嫌いは分かれる本かもしれませんが、深い質問を考えることもできそう。
・『みんなとちがうきみだけど』ジャクリーン・ウッドソン/都甲 幸治、汐文社 2019年
→ 英語の題は The Day You Begin です。著者は『ひとりひとりのやさしさ』『わたしは、わたし』などを書いたジャクリーン・ウッドソン。
なお、彼女もTEDトークに登場しています(日本語字幕なし、Jacqueline Woodson, What reading slowly taught me about writing)。
****
いつもながらですが、リーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップ関連の本を読んでいると、教室内で使われている本や、著者たちのお薦め本などにたくさん出合えるのが嬉しいです。上記の絵本も、 Maria Walther and Karen Biggs-Tucker著の The Literacy Workshop(Stenhouse, 2020)を読んだおかげで知ることができました。
2017年11月10日金曜日
アトウェルさんのリーディング・ワークショップの柱
2019年10月5日土曜日
自分の立ち位置を「読み手」にする
ライティング/リーディング・ワークショップでは、「教師が先輩の書き手/読み手の役割を担い、子どもたちを若い書き手、読み手として育てよう」、ということをよく耳にします。「子どもたちを優れた書き手・読み手にしましょう」と言うのは簡単ですが、でも、「優れた書き手・読み手」の定義次第で、見えてくる風景が異なってきそうです。
先日、読みについての本★を読み直していました。「読むとは?」や「優れた読み手は。。。」という文が並んでいます。読むとは、「意味をつくりだすこと」「優れた読み手は必要に応じて問題解決のための効果的な方法を使えること」等々は、これまでもよく耳にしてきたことでしたので、あまり気にせずにどんどん読んでいました。
ところが、優れた読み手について説明している引用があり、ここで思わず立ち止まってしまいました。
・「 優れた読み手とは、学校で課題として出されたから読む人ではなく、読むことを好むようになり、生涯を通して読み続けるような人である」
「これを学校教育で目指すとどうなるの?」と思って読み直すと、この一つ前の文もチャレンジを感じる文です。
・「優れた読み手とは、短い文章を読み、表面的な解釈の質問に答えられる人ではなく、むしろ多様なトピックについて、よりまとまった量の、より複雑な、教材ではないテキストを読み、それらに対して、思慮深く、批判的に反応できる人である」
➡ この2項目のような「優れた読み手」を育てることを「授業の」目標にしようとすると、自分の授業観や「(学習者や自分に)期待すること」を、根本的に見直さざるをえません。
*****
『イン・ザ・ミドル』(三省堂)の「少し長めの訳者前書き」中に、「教師が読むことについて伝えている21のこと」について言及している箇所があります(9ページ)。これは、『イン・ザ・ミドル』の著者のアトウェルが、1998年に出版した In the Middle 第2版のなかで、教師が行っていることから、読むことについて生徒に伝えていることを21項目も挙げていることを紹介している箇所です。その中には、例えば、以下のようなものがあります。
1.読むということは難しくて真面目な作業だ。
2.文学は、なおさら難しくて真面目で退屈なものだ。
3.読むというパーフォーマンスは、たった一人の観客に向かってなされる。それは教師だ。
4.文章の解釈には正解がある。それは教師の解釈だ。
5.理解や解釈の「間違い」は許容されない。
6.生徒たちは、自分で読むべき本を決めることができるほどには、賢くないし、信頼もできない。
*****
クラスの人数、教室の図書コーナーの本不足、共通テスト等々、リーディング・ワークショップを実施するのに困難が多いクラスもあると思います。困難が多いときほど、自分が教えていることが、読むことについてどういうメッセージを子どもたちに伝えているのかを、時には書き出して見るのも必要な気がします。
自分の立ち位置を「読み手」にすると、良くも悪くも(?)、自分が読み手として行っていることと、実際に授業で行っていることのギャップが見えやすくなるようにも感じています。
そして、 制約(やギャップ)が大きいクラスほど、いろいろな制約の中で、自分の立ち位置を「読み手」にして、ギャップに目を向け、それを少しでも埋めれるようにしていく。リーディング・ワークショップはそんな連続の延長線上にあるのかもしれません。
*****
★Constance Weaver 著の Understanding Whole Language: From Principles to Practice (Heinemann, 1990, 201ページです。201ページの最初は、「読むとは」「優れた読み手とは」という説明が8つ並んでいます。その下に、Sheila Valencia他の書いた Theory and practice in statewide reading assessment: Closing the gap (Educational Leadership 46: 57-63, April 1989) の58ページから引用がされていて、その中に上のの項目も含まれています。
2011年10月14日金曜日
ミニ・レッスンとは?
RWやWWを実施している多くの人の共通理解としては、「授業の最初に短時間(5- 15分)で行うことが多く、クラス全員にポイントを絞って教える時間」ではないかと思います。
(★教える対象者が「クラス全員」である点は、カンファランスとの大きな違いだと思います。)
ただ、中学校レベルの優れた実践者のアトウエル氏の本を見ていると、彼女の中でもミニ・レッスンが進化しているのも感じます。
少なくとも、「5~10分で、先生がしっかりポイントを一方的に提示する」ようなレッスンだけに限定していないように思います。一方的ではなくて、教師と生徒がミニ・レッスンで一緒に考えることもできる部分もあると、アトウエル氏の本を教えてくれているようにも思います。
そんなことも思い出しつつ、「私にとってミニ・レッスンとは?」と考えてみました。
とりあえずのイメージは、「河口に向かうボートにクラス全員が乗っている」です。
① このボートにクラス全員が乗っていることにより、例えば「オール」、「船尾」 など、クラス全員でボートや川下りについて、共有できる言葉がある。
ちょうどミニ・レッスンで、ある作家について学んだ後では、「ロイス・ロー リー」といえば、クラスのみんなが知っているのと同様です。みんなが共有している 土台であり、共有している知識でもあり、何かを語るときに基本となる枠組みでもあ るように思います。
② 先生には河口までどうやって進むのかについてのイメージや地図はあるが、川の荒れ具合や天候によって、調整が必要。また、次に教えることについては、それぞれ が現在、どんなふうに漕いでいるのかが基本となる。
(★ ただし教えている時間よりも、もちろん、漕いでいる時間のほうが長い)
教えている内容は、実際にボートを操るのに役立つこと。うそっぽいことや、実際に行わないことは教えません。また、子どもがどのようにボートを操っているのか、 これがスタートポイントにもなります。
★ 先生自身も、自分の漕ぐスキルを常に向上させている。
★ 川の曲がり具合や天候により、教える時間の長さが変わることもある。また、一緒に新しい漕ぎ方を試してみて、分かることもある。
③ 河口は学年末(あるいは卒業時)。ここからはそれぞれが新しいポートで、新しい川や海出て行く。
より大きな、新たな世界に出て行くという違いはあっても、どちらも本当に川で ボートに乗っているという点では同じ。
*****
ちなみに 『リーディング・ワークショップ』には、次のようは文章が登場します。
「ミニ・レッスンは、子どもたちを集めて問題解決に向けて取り組む最良の場を提供してくれます。ミニ・レッスンは、私たちが教えていこうとするカリキュラムを動かしていく力となるのです。ミニ・レッスンがあるからこそ何か素晴らしいことがはじめるという期待感をもって、一貫性のある、しっかりと構成されたリーディング・ ワークショップをつくっていくことができるのです」(82ページ)
「ミニ・レッスンは、子どもたちの日々の学びや生活と関係のないところに存在しているわけではありません。ミニ・レッスンで取り扱われる内容は、教室で行われている読むことにまつわる様々は活動と密接に関わっています」(83ページ)
また、 『リーディング・ワークショップ』の著者のカルキンズ氏は、書くことの教え方についての本(The Art of Teaching Reading)では、「ミニ・レッスンは一見 すると短時間の講義のように見えるが、そうではない」と言っています。
この本を見ていると、短時間の講義とミニ・レッスンの違いは、ミニ・レッスンの場合は「子どもありき」、つまり、実際に書いている(あるいは読んでいる)子ども たちがいて、その子どもたちの助けとなることは何かと考える、ここにミニ・レッス ンが存在する、そんな風に感じます。
出典:
アトウエル氏のミニ・レッスンの考え方は、 Nancie Atwell著 In the Middle (Second Edition), Boynton, 1998 の 150-151ページを参照しました。
『リーディング・ワークショップ』 ルーシー・カルキンズ著 新評論、2010年
Lucy McCormick Calkins著 The Art of Teaching Writing (New Edition), Heinemann, 1994では、193-217ページの12章にミニ・レッスンについて詳しく書かれています。
2016年8月26日金曜日
書くことについて、たった一つのことしか、教えられないとすると?
『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の著者は、もし書くことについて一項目しか教えることができないのであれば、「読み直すこと」を教えると言っています(89-90ページ)。
もし、私が同じ問いを問われたら、「読者意識」と答えると思います。「読み直す」ことと密接につながっていますから。
読者を意識するからこそ、読み直します。そして、読者が誰であるのかによって、読み直し方も、当然、変わってきます。
ライティング・ワークショップでは、「出版」を「読者に向かっての作品の発信」ととらえ、いわゆる印刷物での出版だけでなくて、口頭での発表も含めています。また学校内外での「掲示」も「出版」に含まれています。
『作家の時間』(新評論、2008年)の第8章は「出版」で、教室内外で、『作家の時間』の執筆メンバーが行った出版例が挙げられています。
「みんなの前で読む」という出版に、クラス全体で取り組んだときの様子も説明されています(136-137ページ)。
『作家の時間』8章では、いろいろな出版方法が紹介されていますが、そこから、以下、いくつかを紹介します(137-138ページ参照)。
✍ 隣のクラスに行って読む
✍ 保護者会で家の人への手紙を読む
✍ 校内放送(お昼の放送)で読む。
✍ 高学年の子どもが1年生の教室に行って読む。
✍ クリアーファイルにいれて、教室に掲示する。
✍ お薦めの本の紹介を掲示する。
✍ 掲示する図工の絵に話をつける。
上にあるように、「中身」を本の紹介にすると、読み書きのつながりもでき、かつ、読者は、いい本を知ることもできますから、一石二鳥です。
アメリカの優れた実践者アトウェル氏の学校の子どもたちも、しっかり「出版」をしています。アトウェル氏の本★の中では、17 もの出版方法をリストしています。
幸い、この方法をすべて日本語でリストしてくれているブログがあります。「あすこま」さんのブログの「これだけある、アトウェルの『出版』の方法」です。以下のURLからぜひご覧ください。
http://askoma.info/2015/06/06/1119
その中には、「質問状、お礼状、不満、葉書、ファンレター等々の通信の形(手紙)にする」というのも、ありましたが、そういえば『ライティング・ワークショップ』(88ページ)でも、 「おばあさんに手紙を書く」というのも、ありました。
実際に子どものニーズと一致する(ちょうど、御礼状をかかないといけない等)ようにするのも、いいと思います。
それ以外にも、『ライティング・ワークショップ』(88ページ)には、「ベビー・シッターをアルバイトでする人のための具体的なアドバイス」みたいなのもありました。
*****
「読者意識」はライティングだけでなくて、リーディングでも重要です。つまり「誰のために読むのか」という点で、読み方も変わってきます。「テストの作成 者のために読む」のであれば、当然、テスト向きの読み方が必要になります。そんな視点を教えてくれた本★★も含めて、近日中 のRWWW便りに書ければと思っています。
★ Nancie Atwell 著 In the Middle: A Lifetime Learning about Writing, Reading, and Adolescents, third edition (Heinemannより2015年).
★★ Patrick A. Allen著のConferring: The Keystone of Reader's Workshop (Stenhouse より
2009年)
2017年12月22日金曜日
「読み書きクラブに加入する」
「読み書きクラブ」という学び方は、リーディング・ワークショップ実践者の間でよく引用されている著者のひとり、フランク・スミス氏の著書から来ているようです。
『Joining the literacy Club (読み書きクラブをつくろう)』(Heinemann, 1988)などのリテラシー教育に関する著書で知られるフランク・スミスは、すべての子どもたちが「心ゆくまで読み書きを楽しめるようなクラブ」の一員であると感じられるようにしよう、と提唱しています。読み書きは、極めて社会的な側面をもった活動です。私たちの話し方は、自分の接する人たちに似たり、その人に影響されて、服を選んだり考えたりするものです。
スミスは、「『私は誰でしょう?』という質問の答えは、鏡に映った自分の中にあるのではなくて、自分の周囲にいる人たちの中にある」と言っています。それほど、周りの人の影響というものは大きいのです。クラスのみんなが「心ゆくまで読み書きを楽しめるようなクラブ」のメンバーとなれるように、教師がサポートしていくことは極めて大切なことです。(ルーシー・カルキンズ著 『リーディング・ワークショップ』、新評論、2010年、25ページ)
1)クラブに入るために、読み書き能力は要求されない。読むことは、読むことを通してしか学べない、という当たり前のことが土台になっているクラブ。
★二つの相反する見解ですが、一つが「クラシックな学びと忘れの価値観」と呼ばれ、とてもシンプルで、実際に面識のある周りの人から学ぶというもの(5ページ)です。この学び方が、読み書きクラブの土台にあります。もう一つは「学びと忘れのオフィシャル理論」と呼ばれ、学びとは、努力の問題で、反復やテスト等々も重視されています。(6~7ページ)
他にも、この研究者たちは、読んでいる間に人間が何を学ぶかに関する素晴らしい研究結果を発表した。すなわち、たくさん読む人は、良い読者になるということを発見したのである。もう一度いっておくが、たくさん読むためには良い読者である必要はないが、もしたくさん読めば読解力が高まる。さらに、たくさんの量を読む人は、読んでいる内容をより理解することができ、文章を書く能力、つづりを正しく覚える能力が高く、学力も高い傾向にある。(38ページ)
2014年9月26日金曜日
題名についてのミニ・レッスン
一番よく行うのは、『ライティング・ワークショップ』の著者2名 (ラルフ・フレッチャー、ジョアン・ポータルピ)が書いた、ミニ・レッスン集ともいえる本★の中で紹介されていた「仮の題をつける」というものです
これは2010年9月24日のRWWW便りでも紹介しましたが、仮の題をつけることで、何について書くかをはっきりさせることができ、とりあえず下書きを書き始めることができます。
あとで仮の題を再考して磨くのですが、最初につける題は「仮の題」だと、最初から意識することで、書いている間も、「あとで題を変える」ことを考えている気がします。ですから、題に使えそうな言葉が出てくるとメモしたりもできます。私自身、自分が何かを書くときに、必ず使うプロセスでもあります。
次によく使うのは、「題のブレインストーミング」(できる限り出して見る、あるいは最低10を考えてみる)です。自分でやってみると、5つぐらいはすぐ出せるのですが、10はけっこうたいへんです。★★
あとは「いい題の条件とは?を考える」でしょうか。★★★
*****
最近、ミニ・レッスンをしてみたいと考えているのが、「題が選書の決め手になる瞬間」の提示です。
自分の選書の傾向を考えると、「題」ではなくて「著者で」選ぶことが一番多い気がします。そして次がテーマ。もちろん、人から本を紹介されることも大きいです。あとはいい本の中で紹介されている本を芋蔓式に読む。そう思うと、選書の一番の基準が「題」ではないので、題のミニ・レッスンにはあまり意味がないのでは?とも思ってしまいます。
しかし、同じ著者の中での読み物を選ぶときや、著者についての情報がほとんどないとき、そして実際に本を手にとれないときは、「題が選書の決め手になる」確率がぐっと上がります。
たとえば同じ著者の本の題名を図書館の検索画面で見せる、あるいは子どもがあまり知らない著者の本のリストを作成して、この中から一つ選ぶとすればどれにするかを尋ねる等々、「題が選書の決め手になる」瞬間をつくって、選書を体験し、それを振り返る、そんなミニ・レッスンを考えてみたいと思っています。
(その次の時間は、読み書きのつながりで、題だけで読み物を選んだ場合、そのあとにすべきことや、題以外の選書方法に焦点をあててもいいかもしれません。)
*****
★ このミニ・レッスンは、Craft Lessons: Teaching Writing K-8, 104ページに載っています。
★★ 作家ノートについての Aimee Bucknerの本、Notebook Know-How: Strategies For The Writer's Notebook の中に、10の書き出しを考えるなど、作家ノートを使っていろいろな選択肢を考える方法が書かれています。
★★★ これは中学レベルの優れた実践者、Nancie Atwellの In the Middle の163-164ページの中で紹介されています。
2010年6月18日金曜日
ピア・カンファランス
Katie Wood RayさんのAbout the Authors: Writing Workshop with Our Youngest Writers (Heinemann, 2004) という本があります。幼稚園から小学校2年生ぐらいを対象としたWWについての、実践例豊富な、とてもいい本です。
こんな年代の子どもたちでも、ピア・カンファランスをしています(pp. 188-191)
この本によると、一つの方法として、ピア・カンファランスが必要なとき、ということでいくつかの項目を挙げています。
例えば、どんな時にピア・カンファランスをするといいかというと、「誰かに尋ねたいことがあるとき」、「自分の書いたものにある意図があるので、それが読み手にちゃんと伝わるかテストをしたいとき」、「今、書いていることを、もっと膨らませたいから、誰かに自分に質問をしてほしい(これについて、何が知りたいかを自分に言ってほしい)とき」等々です。
年代的な特徴を踏まえているのかもしれませんが、子どもに「こういう必要があるときに、他の人に助けを求めるといいよ」ということを、はっきりさせることで、ピア・カンファランスをしやすくしているように思いました。
そして先生が、それぞれのカンファランスについて、説明をしたあとに、みんなの前でロールプレイなどをつかって、どんなカンファランスかをはっきりと教えていきます。
また、こんなカンファランスがあるよ、と説明するときに、できる限り、子どもたちの書き手としての経験に照らしあわせて、子どもたちにつながるように教えているのも、よく分かります。
***********
☆ 以下は、先週の金曜日に貼り付けたのですが、設定がうまくいかなくて、再度、貼り付けましたが、うまくいきませんでした。それで、今日、再度、貼り付けます。もしかすると、ほぼ同じものが、すでに2回、メールで流れたかもしれません。もし、そうでしたら、すみません。
人数が多い日本の教室では、ピア・カンファランスはけっこう大切な気がします(←たしか、このことは『作家の時間』でも言われていたと思います)。
ピア・カンファランスをうまく行うためには、いろいろな方法があるようです。
Nancie Atwellさんの In the Middle (2nd ed.) (Boynton/Cook 1998 )という本があります。私の大好きな本の1冊です。
彼女は中学生を教えています。クラスでピア・カンファランスをすることもあると思いますが、彼女の場合は面白い方法を使っています。それはミニ・レッスンを使って、良いカンファランス(助けになるカンファランス)と悪いカンファランス『助けにならないカンファランス)の例を見せるということです(pp. 158-159)。
子どもに協力してもらって、ピア・カンファランスの「いい例」と「悪い例」のロールプレイをして、子どもたちはそれを観察するというものです。同じ作品でいい例、悪い例の両方を行うとはっきりするようですね。
*****
Carl Anderson というカンファランスのカリスマ?とも言われている?人が、WWのカンファランスについて書いたhow’s it going? (Heinemann, 2000)という本があります。
彼も、同様に「金魚鉢」(何人かが金魚になり、その行っていることを他の人が金魚鉢の外側から観察するというので「金魚鉢」と言われる方法)を使っています。
先生は、子どものやっていることを言語化してはっきりさせたり、ときには中に入り「今、先生が何をしたか分かった?」みたいに問いかけたりもしています(p. 146)
→ 私が思うには、どちらにおいても、そのポイントの一つは、他のカンファランスに応用できるような形で子どもが理解できるように、先生が言い換えたり、サポートしたりすることかなと思いました。
例えば「何について助けてほしいかを伝える・(あるいは)尋ねる」などは、次回のカンファランスにもすぐ応用できそうです。
2016年1月23日土曜日
フィクションを書くことを教えるには?
「読む」という面から考えると、フィクションは、子どもにとってはおそらく小さい時から親しんでいる身近なジャンル、教師の中でもフィクションを読むのが好きな人もいると思います(私も含めて)。
でも、教師にとっては、「フィクションを書く」というのは、頻繁に教えるトピックではないのかもしれません。改めてどうやって教えたらいいのか? と思い、いくつか考えたことを共有します。
(1)フィクションを書くことは、子どもの経験から離れた荒唐無稽なものを書くことではなく、子どもが自分の経験を、(実際に経験したことだけに限定されずに)、「仮定や仮想」という目を持って見直す道を開くものでもある、こんなことを最近読んでいる本★から、学びました。
WWでは、「まずは自分がよく知っていること、興味のあること」から題材さがしをするように言うことが多いと思います。
でも、フィクションだって、自分がよく知っていること、興味のあることの延長線上にあり、ただ、そこに行くために、現実としては起こらなかったことを仮定する想像力が必要、それを後押しできるように教える・サポートするという考え方もいいな、と思いました。
→ そういえば、『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の共著者フレッチャー氏とポータルピ氏が書いた、書き手の工夫を教える本★★(ミニ・レッスンのアイディアが満載)の中に、「もし~であれば」という質問を使って、イマジネーションを使うレッスンがあるのを思い出しました。
このレッスンから、自分が「どうなんだろう?と思いつつも、答えが見つかっていないこと等で、「もし~であれば」という、一つの質問を掘り下げて考えることで、物語ができる可能性があることを教えていますし、フィクションの話が子どもの手に負えない大きなものにならないように、でも、現実という枠に閉じ込められないようにしているのが分かります。
(2)フィクションを書くときには、短いテキストを読むことからスタート
フィクションに限らず、WWのミニ・レッスンを見ていても、絵本や短い読みものを使うものも多いです。個人的には、「短い」のは、一つのポイントだと思います。(上の「もし~であれば」というレッスンでも、George Ella Lyon の Cecil's Story という本が、子どもたちが考えるきっかけとして、使われています。)
最近、面白いと思った実践例は「超短い物語」を「書き手の目」で見て、どうすれば効果的な「超短い物語」が書けるのかを考えている例です★★★。これはアメリカの教室で、300単語以下の物語(マイクロ・フィクションと言うそうです)を一つのジャンルとして教えています。(日本語で読める、お薦めの「超短い物語集」としては、何があるのでしょうか?)
(→ 9月11日のRWWW便りで、丸岡町の出している「一筆啓上」シリーズを紹介しましたが、その後、高校の英語先生から、WWでメンターテキストとしていくつか紹介したあと、面白い作品がでてきたことを教えてくださいました。これは手紙というジャンルですが、どのジャンルにせよ、いい作品を紹介するのは大切ですし、短いと時間的にも扱いやすい、という大きなメリットもあります。)
私は「読み」の授業では、「フィクションの種類は特徴」などを扱います。フィクションを理解する上では有効な情報だと思いますが、「テーマは? 場面設定は? 登場人物は? 起こる問題は?」等の質問を、書くときのスタート地点としては使えるか?と言われると、馴染みにくい感がぬぐえません。ここしばらくWWを教えていないのですが、今度、WWを教えるときには、短いフィクションをたくさん読んでそこからメモを取り、効果的な書き方を自分で見つけていく方を選びたいと思っています。
*****
★ このブログでも何度か紹介しているNancie Atwell氏の In the Middle 第3版 (2015年、Heinemannより出版)の461-462ページより。
★★ Ralph Fletcher と JoAnn Portalupi著の Craft Lessons: Teaching Writing K-8 (Stenhouse 1998)ですが、ミニ・レッスンのアイディア満載です。しかも小学校2年生まで、3~4年生、5年生~中学校2年生と、3つの年齢レベルに分けて紹介されています。上の「もし~であれば」は 48ページのExercising the Imagination というレッスンで出てきます。
またこの本のノン・フィクション版もあり、Nonfiction Craft Lessons: Teaching Information Writing K-8というタイトルで、2001年に出版されています。
★★★ 上の★で紹介した本の461ページから始まる章は「短いフィクション」という章で、その中で、マイクロ・フィクションという、300単語以下で書かれているような短い話を使っています。
472-ページ以降を中心に。
2019年2月23日土曜日
「大好きなこと」と「それを教えること」のギャップ
そこで、授業で扱うのは、自分が大好きな詩ではなく、アトウェルの言葉を借りると水で薄められたような、教室向けの詩を提示して、それを1行ずつ解説したり、お決まりの詩の形を教えたりしていたようです(78ページ)。詩を書かせるときにも、「五感を使う詩」とか「5W(Who-What-When-Where-Why)の詩」、その他「願いごとの詩」「色の詩」等々を行っていたようです(92ページ)。
アトウェルは、詩を教え始めたときには、自分の好きな詩を集めてファイルをつくり、大好きな詩を生徒たちにシェアしました。つまらないと思っている詩を1行1行解説するのではなく、自分が本当に好きな詩を読み聞かせるので、子どもたちに詩が好きになるように招きやすくなります(89ページ)。
1987年に出版され、爆発的に売れた In the Middle の初版にも、生徒たちが書いた素晴らしい詩がたくさん登場しますが、それは「書きなさいという課題から出された詩ではなく、生徒たちが詩の中に入り込むようになって、そこから生まれてきたものだ」(94ページ)ということです。