2018年10月6日土曜日

作品の読み直し/書き直しをしない子どもたちへの対応

 ライティング・ワークショップで、改善の余地がたくさんある作品が、読み直した形跡もなく、提出されることもあるかもしれません。

 その対策としては、以下の二つがあるように思います。

(1)自分の作品を読み直すときに、具体的にどういう書き直しができるのかを教えていく。
(2)読み直しながら「あーでもない、こーでもない」と思うこともよくあるので、書き手は、そういう「混沌としたプロセス」のなかで(1)のようないろいろな書き直し方を使っていることを示す。

 (1)については、例えば、『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の86ページには以下がリストされています。

・書き出しを変える
・結末を変える
・ある部分を付け加える
・話の順番を変える
・ジャンルを変える
・視点を変える
・文の調子を変える
・時制を変える
・大切な場面を膨らませる
・一部に焦点をあてる
・長い部分を複数の部分に分ける、あるいは章立てにする

 『イン・ザ・ミドル』(三省堂、2018年)にも、165ページに「書き手が使う技についての、必要不可欠なミニ・レッスン」の項目がリストされています。

(2)の「混沌としたプロセス」ですが、一般に「書くプロセス」と言われると、「アイディアを出し、下書きをし、それを読み直し、書き直し、推敲して、校正をする」等の段階が浮かびます。でも『ライティング・ワークショップ』の著者たちが言うように、書くことは一直線には進まずに複雑な過程を進み、現実には書き手は各段階を行ったり来たりしています(『ライティング・ワークショップ』81~83ページ)。

 (私自身の書くプロセスを振り返っても、この点は納得です。書き直している間に、最初に書こうと思っている主な内容が大きく変わることもよくありますし、数日前に書いた下書きが、書き直しているうちに、ほぼ原形をとどめないことも、私の場合はけっこうあります。)

 中学校レベルの優れた実践者のナンシー・アトウェルは、「読み直して、書き直す」ことを教えるには、生徒たちに「実際に読み直して書き直すことがどういうことか」を、しっかり教師が見せて教える必要があるとしています。

 それを示す効果的な方法が、教師が書くプロセスを見せる」とというセクションで詳しく述べられています(『イン・ザ・ミドル』166~168ページ)。

 その方法を簡単に紹介します。

 教師は用紙に向かい、手元の様子をスクリーンに映して、「自分の頭の中を生徒に見せると決めて、生徒たちに、上手に書けるようになりたいと思っている大人、つまり教師の頭のなかで何が起こっているのかを、しっかり観察するように言う」ことです。これで、「生徒たちは、何とかしてよい文を書こうとするときに生じる、手のかかる面倒なプロセスを目の当たりに」できる、のです。(167ページ)

 ⇒ 『イン・ザ・ミドル』の共訳者の一人、あすこまさんは、これを教室で行っています。その様子はあすこまさんのブログ「改めて感じる、教師のデモンストレーションの手応え」で、ぜひどうぞ!
https://askoma.info/2018/10/06/6934

 他のやり方もあります。それは、「自分の書いたいろいろな段階のものをさがし、それを残しておいてコピーし、教室で使えるセット」をつくることです。生徒はそれらを「書くプロセスについての研究者」として、「調査」します。生徒たちは、いろいろな段階の原稿を「調査」したあとで、書き手としての教師が、何をどういう理由で行っているのかについて、一緒に考えます。具体的かつ明確に何ができるのかを知るためです。(『イン・ザ・ミドル』167ページ、および、次の「教師が自分の書いた詩を使って教える」というセクション、168~174ページ)。

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 『イン・ザ・ミドル』には12~14歳ぐらいの生徒の書いたものがたくさん掲載されていますが、思わず引き込まれる作品が多いです。それは、「読み直して書き直すことがどういうことか」を、教師がはっきり示していることに加えて、「書くことは、紙の上でひたすら考えに考え抜くことで、そのやり方はたくさんある」ことを、ワークショップ開始の早い時期のミニ・レッスンで扱っていることも、後押ししていると思います(このミニ・レッスンについては161~163ページ)。

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 『ライティング・ワークショップ』の著者たちは以下のようにも述べています。

・「忍耐をもって子どもたちに接してください。教師は書くことを教えるのに熟達してくると、実は子どもたちは「書き方のテキスト」が言っているようには書かないのだ、という厳しい現実を学んでいくことになります。」(『ライティング・ワークショップ』147ページ)
・「教師がすべての子どもたちに一つの書くプロセスを押し付けることは大きなまちがいであり、それは書き手としての子どもを潰してしまうことにもなりかねません。」(82ページ)

 自分の書くプロセスを眺めてみても、「アイディアを出す ⇒ 下書き ⇒ 推敲 ⇒ 校正」 と一直線に着々と進まないからこそ、混沌とした中でできる、いろいろなことを教える価値があるのだ、と改めて思います。

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