2025年8月1日金曜日

教室に活気(エネルギー)を取り戻す

 教師なら誰しも、生徒たちの学ぶことに対するやる気というか取り組みのエネルギー、教室全体の活気(あるいは、その逆のやる気のなさ、取り組みレベルの低さ、活気のなさ)は感じるのではないでしょうか(良くも悪くも。正のエネルギーも、負のエネルギーも生徒たちは発しますから。もちろん、教師も常に発していますが)?

 グレッチェン・シュローダー先生はオハイオ州の田舎の高校の英語教師で、AP文学(上級文学)から詩のワークショップ選択授業まで幅広く教えています。彼女の情熱は、生徒たちが文章を書くことで自分の声を見つける手助けをすることと、生徒が夢中になれる本を紹介すること★にあります。そして、彼女が大切にしていることが、教室の活気/エネルギーです。次の内容の記事を見つけたので紹介します。

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自分ではよく知っているつもりなのに、いざ誰かに定義を求められると、うまく説明できない言葉ってありませんか?
私にとって、最近そんな体験をしたのが “energy(エネルギー)という言葉でした。

普段からこの言葉はよく使っています。
今日はもう元気/エネルギーが出ないとか、
あのプレゼン、すごくやる気/エネルギーが出た!とか、
エネルギー切れにならないように、おやつ持って行きなさい!みたいに。

 

でも、「教室に新しいエネルギーをどうやって吹き込もうか」と考えていたとき、ふと気づいたんです。
――
そもそも「エネルギー」って、具体的にどういう意味なんだろう?って。

「雰囲気」みたいなもの? 「生命力」? それとも物理学のむずかしい概念?
よくわからなかったので、スマホを取り出して調べてみました。
すると、意外な結果が出てきました。

エネルギーって、なにか不思議な感覚のことじゃなくて、
「仕事をするための力」、それだけだったんです。

 

「そうだ、これだ!」と思いました。
エネルギーがないときは、何かに取り組もうという気になれない。
でも、すばらしいアイディアがあふれるワークショップに参加すると、教室に戻ってそれを実践したくなる。
自分の子どもたちにはおやつを食べてほしい。そうすれば、遊ぶことや冒険することに参加し続けられるから。
そして、そもそも「エネルギー」って、私自身も教室の生徒たちも望んでいることの根っこにあるものではないだろうか?
読み書きや聞くこと、話すことといった、難しいけれどとてもやりがいのある学びに、意欲的に取り組む力――それこそが。

 

私がこんなふうに考えはじめたのは、「教室に新しいエネルギーを吹き込みたい」と思ったのがきっかけでした。
でも、Googleで調べてみて思い出したんです。
エネルギーって、そもそも「なくなることはない」んですよね。
生み出されることも、消えることもない――いつも可能性として存在している。

熱力学の第一法則によれば、宇宙全体のエネルギーの総量は常に一定なのだそうです。

 

この考えに、とても安心させられました。
私がわざわざ「生徒のためにエネルギーを生み出す」必要はない。
生徒たちは、すでにエネルギーをもっているんです。
私にできるのは、その「可能性としてのエネルギー」を、「動き出すエネルギー」へと変換する方法を見つけること。

そして私が実感しているのは――教室でちょっとした工夫をするだけでも、生徒の「取り組む力」に大きな変化が生まれる、ということです。
教室の環境を変えてみる。いつもと違う配置にしてみる。ちょっとからだを動かしてみる。
そんな小さなことでも、生徒たちは動き出し、学びに取り組んでいくのです。

 

教室の環境(レイアウト)を変える

ふだんは机を4人一組にして並べているのですが、ある日、教室に入ると机が大きな円形に並べられていたり、向かい合う列になっていたりすると、生徒たちの好奇心が一気に高まります。
「今日はどんなことをやるんだろう?」と、教室の空気がわくわくした期待感で満たされるんです。

年に一度、私は思いきって教室をがらりと変え、生徒たちがまるで別の世界に来たような気分になれるようにしています。
今年はちょうど友人が引っ越すことになり、以前開いたルアウ(ハワイ風パーティー)の飾りをたくさん手放そうとしていたので、私はそれを喜んで引き取って教室に持ち込みました。

そして、「AP文学試験復習ルアウ」を開催!
ツタを飾ったり、滝まで(といっても、地元のパーティー・ショップで見つけた青いホイルのカーテンですが)セットして、教室を演出しました。

 

雰囲気を変えてみる

ふだんの授業で、ほとんどの文章を書き込みはパソコンで済ませるのが当たり前になっていた頃、シェイクスピアの作品を学んでいるタイミングで、私は羽ペンと羊皮紙風の紙を持ち込んで、その日の書き込みに使ってもらうことにしました。すると、高校生たちはまるで飛び上がるようにしてその道具を取り合い、ここ最近見たことがないほどの熱量で、書き始めたんです。

また、私は教室の棚にプレイ・ドー(こね粘土)を入れた箱を常備していますが、授業の雰囲気がマンネリ化してきたなと感じたときには、それを取り出します。そして、「これから読むテキストに出てくるイメージや象徴を、まずは粘土で形にしてみよう」と声をかけるのです。このひと手間が加わることで、生徒たちはより深くテキストを味わい、考えるようになります。

 

からだを動かすこと

生徒たちの「取り組む力」が落ちてきたなと感じるときは、授業や活動の中にからだを動かす時間を取り入れる方法を考えます。席を離れて動くことで、気持ちも切り替わりやすくなるからです。たとえば、教室のあちこちに「センター(拠点)」を作り、そこで違う課題をこなしていくというやり方があります★★。私はだいたいペアで動いてもらいながら、各センターの活動を進めてもらっています。

もうひとつ、生徒たちが立ち上がって動き回る活動に、「クエスト・トレイル(質問の旅)」があります。教室のあちこちに選択式の質問を貼り出し、答えによって次の質問の場所に進む仕組みです。すべて正解すれば、同じ質問に戻ることなく最後まで進めます。
もし間違えると、すでに答えた質問に戻ってしまい、自分のミスを見つけて修正しなければなりません。このアイディアは、@writeonwithmissg さんからいただき、彼女のテンプレートを購入して、質問のセットを簡単に「クエスト・トレイル」★★★に変えられるようにしています。

 

まとめ

エネルギーの単位として、世界で使われているのがジュールですが、私の教室では、エネルギーは「わくわく感」で測られます。いわゆる「場の空気を読む」ことを私は学びました。だるさが広がったり、いつものルーティーンがなんだか味気なく感じられたりしたら、教室のエネルギーを取り戻すために、こうした方法のどれかを取り入れます。生徒たちが動き出せば、またいつもの確かなルーティーンや学びの実践に戻ることができます。生徒のエネルギーに波があるのは当たり前。だからこそ、また元気を引き出すためのちょっとした方法が必要なんです。

 

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 皆さんも、エネルギーに敏感になってください。それが、同じ時間を費やしても、生徒たちの学びの質と量を決定的に分けてしまいますから。その際は、教師ががんばりすぎない(ほどよく手を抜く)アプローチで! がんばりすぎると、疲れますし、生徒の自立につながらないことが多いですから(生徒は教師に依存するだけで)。

 

★あなたの国語を教える情熱は何ですか? この2つを挙げているような先生に教えてもらっている生徒たちは幸せだと思いました。こういうとても大事なことが抜け落ちた形で行われているのが、日本の国語(であり、算数・数学であり、理科であり、社会・・・)の授業であるような気がしてしまいます。https://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.html でも紹介したように、『あなたの授業が子どもと世界を変える』ことを忘れないでください!

★★この学習センターを使った教え方はとても効果的なので、ぜひチェックしてください。https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794812261 で目次が見られます。

★★★「question trail」で検索すると、テンプレートも含めて、たくさんの情報が入手できます。

出典: https://choiceliteracy.com/article/renewing-energy-in-the-classroom/