2011年6月24日金曜日

ワークショップの活気が失われてきたら

 学期が進むに連れ、順調に滑り出したと思うWWも、停滞気味になってしまうと
きもあります。

 今日はそんなときにできること(方法)・考えてみたいこと(考え方)を少し書い
てみたいと思います。

  『ライティング・ワークショップ』の10章は「予想される問題とその解決法」
の章ですが、その中に、「ワークショップが沈滞気味になる」という問題も登場しま
す(145-146ページ)。

 著者のラルフ・フレッチャー氏とジョアン・ポータルピ氏は、二つの提案をしてい
ます。

 一つは、新しいジャンル(例えば詩やノンフィクション)について学ぶ機会を導入
する。

 もう一つは、自分の今までに書いた作品の中からいいものを選び、磨きをかけ、他
の人の目に触れる機会をつくるという「作家の日」という、書き手たちを称えるよう
な活動を行う。

 後者は「出版」の一つの形態でもありますから、『ライティング・ワークショッ
プ』が出版について述べている88-89ページ、そして89ページの注もご参照ください。



 上の2点は、活気づけるための具体的な、いい「方法」だと思います。

  実は私のクラスも、滑り出しのほうがよくて、今は少し沈滞気味?なので、何冊
かWW関係の本を見ていました。
そして、ドキッとしたのが、ルーシー・カルキンズの
「考え方」です。(ルーシー・カルキンズは、『リーディング・ワークショップ』の
著者ですが、以下に述べることは、彼女の書くことについての本、The Art of
Teaching Writing
に書かれています。とてもいい本なのですが、残念ながら、こちら
の方は邦訳が出ていません。)

 カルキンズ氏の本を見ていると、「教師が押し付けることはやめて、子どもたちが
持っているエネルギーを使う/活かす」ことで、本当の活気が生まれると考えているよ
うに感じます。

 彼女は、もともとは、子どもたちを「刺激し、動機付ける」ために、いろいろな工
夫をしていたようです。しかし、それらは短期の効果しかない、といいます。また、
先生が面白いと思うものを教室にもっていって、それについて書かせることもしたよ
うです。

 「しかし」、と彼女は考えています。

 先生が面白いと思うものを教室にもっていって、それについて書かせること
は、間接的には、「あなたたちが選ぶ題材は価値がない」というメッセージになると
いうのです。(たとえば、その典型例の一つをすでに紹介しました。結構いい先生
というか、がんばっている先生ほど犯しがちな気がします。

 そうではなくて、子どもたち一人ひとりが、そこに時間とエネルギーをかけたいと
思う題材を活かす、クラスにあるエネルギーを活かす、そういうものでないと、本当
の活気は生まれてこないといいます。

 「クラスにあるエネルギー」となると、クラスという単位で、学びの場になってい
ることが、改めて問われてくる、カルキンズ氏の本は、そんなことも教えてくれました。

 
出典
○ ラルフ・フレッチャー、ジョアン・ポータルピ著、『ライティング・ワークショ
ップ』 (新評論、2007年)、88-89ページ、145-156ページ

○ Lucy McCormick Calkins 著 The Art of Teaching Writing, New Edition,
(Heinemann, 1994、12ページ、174-176ページ)
    



2011年6月17日金曜日

いい文章を書くには 3

 William ZinsserのOn Writing Wellの最終回は、パート3と4の書く「種類」と「姿勢」についてです。(左の数字は、ページ数です。)

種類

99 ほとんどの人にとって書くということは、ノンフィクションを意味する。
   それは、自分が知っていること、観察できること、調べることができることだから。子どもたちにとって、このことは特に当てはまる。 → 詩や俳句を含めて、フィクションは作り出す/生み出す/イメージすることとは大分違う! それとも変わりない?

    人、場所、出来事が中心。

100 人なら、聞けば話してくれる。
101 インタビューの大切さ。
105 それには、準備が大切。質問のリストを作っていく。
107 テープを使っても(補助的に使い)、メインは自分のノートにする。
   → やり取りを楽しむことの大切さ。願わくは、宮本常一のレベルで!!

   人と同じレベルで、読み手の場所への関心も大きい。
   人、場所、出来事以外は、思い出、科学技術、ビジネス。スポーツ、批評など。

195 批評/書評は評価することよりもレポートすることが目的。4つの条件は、①対象(の作品)が好きである、②内容を明かしすぎない、③具体的な例を使う、④大げさに書かない。+ ユーモアと真面目さは、表裏一体。ウーディー・アレンのように。

姿勢

233 読者が聞きたい「声」を見つけることは、書き手の好みが左右する。
    女性の着る服のセンスに似ている。
235 好きな作家を真似することを恐れない! 自分のものにしてしまう。

245 自分自身が楽しむことの大切さ。楽しく学び続けることがカギ。
256 何に焦点を絞るかがポイント。

261 大きな判断は、作品のshape, structure, compression/focus/intention(形、構成、切り詰め/焦点/目的)
262 書き始めの大切さ
    文章を2つ、3つに分ける!
302 書くということは、自分の書いたことと自分自身を信じるということ。リスクを犯すということ、他の人との違いを際立たせること、成長し続けること。

2011年6月10日金曜日

いい文章を書くには 2

 前回に引き続きWilliam ZinsserのOn Writing Wellの紹介です。今回は、パート2の「方法」。(左の数字は、ページ数です。)

50 書くことを学ぶには、書くしかない! ひんぱんに書く。
   たとえば、記者は新聞社で毎日2~3の記事を載るか載らないかは別にして、書いていれば半年で自然にうまくなる。 → 教訓: 毎日たくさん書く。

   書くことは、問題解決。
   どこから情報を得るのか、それらをどう構成するのか等。
   書く姿勢, トーン(調子), スタイル(文体)をどう決めるのか。

51 3つの大きな選択:
    ・ 一人称か三人称か
    ・ 現在形か過去形か
    ・ ムードや調子

52 書き始める前に問うべき質問:
    ・ どのような立場で書くのか?
    ・ 人称と時制?
    ・ どのようなスタイル?
    ・ 書く姿勢は?(たとえば、のめり込んで?切り離なして?批判的?皮肉的?おもしろがって?)
    ・ どのくらいの量で書くのか?
    ・ 自分が言いたいことは何か?
 最後の2つが特に大事。切り落とすこと!!

 読み手は、こちらの意気込みをすぐに読み取ってしまう。
 それを自分が失わないレベルに押さえることが大切。

 2つでも、5つでもなく、1つだけ言いたいことが伝わればそれでいい。

53 計画/構想の奴隷になってはダメ!
   ムードやスタイルが一貫しているように修正する。

54 記事で一番大切なのは、書き出しの文章。
55 「これを読むことで何が得られるのか?」に答えてあげないと。
   その際、ユーモアや驚きは、大切な要素。
58 通常考えつかないような情報源を活用する(常に広く情報収集する)
63 書き終わりは、書きはじめと同じレベルで大切。

   はじめ ~ 中 ~ 終わり にこだわらないことの大切さ!!

66 驚きこそが、ノンフィクションで一番大切。

79 パラグラフは短く。作品はビジュアルに。見てくれが大切。読みたくなるように見えないといけない。

83 読み直しがすべて!
84 書くことがプロセスと思えないうちは、よく書けないということ。
   修正は、変形する(順番を変えたり、強弱をつけたり)、切り詰める、洗練する、の3つで構成されている。
86 声を出して読む。響きが大切。

91 読み手にも参加してもらうために、書きすぎない/説明しすぎない。
   自分の情熱/感動に従えばいい。必ず伝播する。

2011年6月3日金曜日

いい文章を書くには

 前回とのつながりで、「いい文章を書く」というか「上手に書く」とはどういうことかを、そのままのタイトルの本を使って紹介します。William Zinsserが1976年に書いたOn Writing Wellです。私がもっているのは2006年に出た30周年記念の改定第7版ですが、すでにその時点で100万部以上が売れています。サブタイトルには、The Classic Guide to Writing Nonfictionとありますから、対象はノンフィクション限定です。★この本の内容に相当する本がすでに日本語でありましたら、ぜひ教えてください。

 まずは、パート1の「原則」から。(私が読みながら取ったメモを起こしていますから、必ずしも要約とは言えないかもしれません。左の数字は、本のページ数です。斜字は、私のコメントです。

xii&4 書くことのエッセンスは、修正すること。
xiii    IT時代でも書くことがベース → 増えこそすれ、減らない!!

5 最終的に書き手が提示しているのは、中身よりもその人本人。
  書き手の意気込みが伝わってくるか? 文章を通じて、humanity, warmth, aliveness(人間性、温かさ、イキイキさ)が。 → これらが伝われば、読んでくれる。
  文章自体は、clarityとstrength(明快さと説得力)が大事。

6 いい文章の秘訣は、最小限に切り詰めること。
8 読み手は、30秒ぐらいしか時間をくれない。

16 最初の下書きは、何の問題もなく半分にすることができる。
   短くすることを、心がける。

19 読み手は、書き手に誠実であること/本当にその人であることを望む。そのために、書き手はリラックスすることと自信を持つことの両方を同時に実現しなければならない。
21 「私」という言葉を使わなくても、書き手の主張(Voice)は伝えられる。
   Style is tied to the psyche.(書き手のスタイルは、その人の心を表している。)

24 自分自身のために書く。自分が楽しめれば、他の人も楽しめる。
   書くときは、自分であれ!! 偽らない!

34 メンター・テキストから学ぶ/真似る。
Learn to use words with originality and care. (言葉は、大事にしかも自分なりのオリジナリティをもって使えるように練習する。)