2025年6月6日金曜日

書かない/書けない子どもを、書ける子(しかも、教師に依存しない、自立した書き手)にするには?

 ここ2週間ほど、このテーマから離れられないでいます。

 https://wwletter.blogspot.com/2025/05/blog-post_23.html とhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2025/06/blog-post.html です。両方とも、自立した書き手ではなく、依存した書き手(ないし、教師に従順で忖度する書き手や反発する書き手)を育ててしまう可能性があります。しかも、両方とも教師や親は良かれと思ってしていますから、問題は大きいです!

 教師に依存する書き手ではなくて、自立した書き手はどう育てられるのでしょうか?

 多分に教師の接し方(カンファランスの仕方、教師の問いの発し方)を少し変えるだけで、転換は可能です。

 以下で、1年生から8年生(日本の中3)までを25年間教えた経験があり、現在は読み書きのコーチとインストラクショナル・コーチをしているヴィヴィアン・チェン先生の方法を紹介します。

●書き始める前

最初の工夫は、その日に子どもたちが取り組む作業の種類を伝えるときに、手短なチェックインを入れたことです。以前は単に「今日は、これまで学んだ作家の技を使って修正(推敲・書き直)している子もいれば、下書きを仕上げている子もいるかもしれません」と言っていたのですが、それを質問の形に変えました。「今日は修正しようと思っている人? 親指を立てて教えて。下書きを仕上げようと思っている人は?」といった具合です。この小さな変更によって、子どもたちは集まりの場(最初の5~10分は、自分が書くところではなく、教師の周りに集まって座っています)を離れる前に自分がしようと思っていることを明確にできるようになりました。

もうひとつの変化は、子どもたちに作業計画を立てる機会を与えたことです。たとえば、作家の時間のパートナーに向かって「最初に取りかかることは○○だよ」と伝えるだけでもいいですし、作家ノートにやることリストを作って、それをパートナーと共有する方法もあります。どの方法を選ぶかは、学年や子どもたちが書くサイクル(https://wwletter.blogspot.com/search?q=%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB)のどの段階にいるか(や、その理解度)によって異なるかもしれません。

 変更する前は、子どもたちが自分で「ひたすら書く」時間を始めるというよりも、教師の指示を聞いてから始めようとしたり、自分の行動が正しいかどうかを教師に確認してもらうのを待っていたりしました。そして、ひたすら書き始めようとしているときに私が指示を出したり声をかけたりすることで、子どもたちが書くために必要な静かな思考の時間を妨げてしまっていたのです。

やり方を切り替えた最初は難しく感じましたが、子どもたちがひたすら書く時間に入り始めるときに私が静かにしていることが、新しい習慣になりました。書いている子どもたちを細かく管理(マイクロ・マネージ)するのではなく、その時間を使って、彼らの書くときのふるまいや問題解決の様子を観察するようにしています。もし少しだけ後押しや思い出すことが必要な場合は、チャート(図)を指したり、書く紙やノートに意識を向けるように無言のジェスチャーで合図を送ります。こうすることで、子どもたちは自分自身で考えたり問題を解決したりする機会を得られるようになり、私はより静かで思慮深いひたすら書く時間の雰囲気をつくることができるようになりました ~ この段落に書いてあることが、https://projectbetterschool.blogspot.com/2025/06/blog-post.html で紹介した『"しない"が子どもの自力を伸ばす――叱らない・ほめない・コントロールしない、狩猟採集民の子育て術』(マイケリーン・ドゥクレフ著、築地書館)の中心テーマで、それを読むことで、授業への応用も可能になります!

●子どもたちが書いている間

言葉は大切です。

私はもう「I love how...(〜のところが好きです)」「I like the way...(〜のやり方はいいと思います)」のような言い回しを使わなくなりました。ただ単に生徒の自立した書く時間に騒がしくしていたからではありません。知らず知らずのうちに、生徒の主体性を損なってしまっていたのです。

生徒たちが私のところにやって来て、「これっていいと思いますか?」と聞いてくることは何回あったでしょうか?

私の定番の返事は、たいていこうでした。「あなたはどう思う?」

その答えは、「うん、自分ではいいと思います」から「分かりません(だから聞いてるんですけど)」まで、さまざまです。生徒のやっていることに対して「いいね!」「すごく好き!」と私が繰り返し言っていたことで、彼らは承認を得るために私のところへ来るように訓練されてしまっていたのです。ピーター・ジョンストンは著書『オープニングマインド』(新評論)の中で、こうした言葉についてこう述べています。「それは、主体的な語りではなく、評価を与える語りであり、子どもの努力の目的があなたを喜ばせることだと暗に伝えている」~同じ著者の『言葉を選ぶ、授業が変わる!』(ミネルヴァ書房)もおすすめです。

子どもたちに、「あなたには書くことに対して主体性があるんだ」というメッセージを届けるために、私は書き手自身ではなく、書くサイクルに焦点を当ててフィードバックを行うようにしています。さらにそのフィードバックに力をもたせるために、私は具体的な点を挙げ、それがなぜ重要なのか、読者にどんな効果を与えているのかを伝えるようにしています。たとえば、「とてもよく書けているね!」と言う代わりに、「この場面に対話を加えたことで、登場人物が本当に生き生きと感じられたよ」と伝えます。ここで止めたとしても、書き手には「自分がやったことが誰かに影響を与えた」と伝わりますし、理想的には、その作家の技を今後も使い続けてくれるでしょう。

でも、さらに一歩進めることもできます。私のカンファランス(対話型の指導)が特にうまくいっているときは、そのフィードバックに新しい方法やヒントを加えることができます。たとえば、さっきの例を続けると、こんなふうに言えるかもしれません。「登場人物をさらに描き出すために、書き手がよくやることの一つに、その人物の外見についての描写を加えるという方法があります。あなたの作品でも、それを試してみるのはどうかな?」——こうしたフィードバックの伝え方をすることで、私は主体的な語りを支えることができます。「今あなたがやっていることを土台にして、試せる新しい方法があるよ。どう生かすかは、あなた次第です」 より多くのエイジェンシー(主体性)と、より多くの自立。

●ひたすら書く時間のあと

 二人寄れば文殊の知恵。

「しまった、もうお昼の時間! あとで続きをやってください」
これが以前の私のライティング・ワークショップの終わり方でした。

でも、ひたすら書く時間の最後に510分ほどの時間を取らないことで、さらなる学びと自立のチャンスを自分自身にも、子どもたちにも与え損ねていたのです。

タイマーをセットしてその時間を毎回確保するようにしてからは、ちょっとした編集作業や新しい書き方のコツを伝えるだけでなく、子どもたちのエイジェンシー(主体性)や自立心を育てることにも使えるようになりました。

「どうやってスペルを書くの?」「タイトルはどうやって考えたらいいの?」など、あまりに多くの子が質問してくるときは、そうしたよくある問題への対処法をみんなで考える時間として、最後の数分間を使いました。たとえば、こんなふうに話しかけます。

「みんな、『この単語のスペルってどう書くの?』って手を挙げて聞いたり、お隣の人に聞いたりしていたよね。それが、みんなが集中していい仕事をすることのじゃまになっていたんだよね。
 でもね、みんなは難しい単語のスペルを自分で考えるいろんな方法を知ってるよね。さあ、パートナーと話してみよう。『自分でスペルを考えるとき、どんなやり方があるかな?』」(子どもたちがペアで話す間、教師は会話に耳を傾ける)

「みんな、いろんな方法を知ってるね! 今、みんなが話してくれたアイディアをここに書いていくよ。これからスペルが分からないときは、このチャートを見て、試せる方法を思い出せるようにしよう。今度わからない単語が出てきたら、自分はどのやり方を試してみたいか、またパートナーに話してみよう」

このような終わり方は、「どこに材料があるのかわからない」とか、「書き終わったら何をすればいいのかわからない」といった、他の「つまずき」にも応用できます。

問題の解決方法を子どもたち自身が一緒に考えることで、より強いエイジェンシー(主体性)と自立心を育むことができます。
 そして、自分たちで考えたアイディアだからこそ、実際に困ったときに、自分の力で使ってみようという気持ちにもつながるのです。

出典:https://choiceliteracy.com/article/developing-independent-writers/

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