2025年4月25日の投稿「どうしてこんなに面白い? 書くツールについての本 [その1] 〜「レントゲン読み」(★1)、そして拡がりへ 」で紹介した本(★2)から、今日は[その2]です。面白く読める理由を考えながら読んでいて、二つのことに気づきました。
まず、優れた書き手は、注意深くかつ幅広く読む読み手であることが、どのツールを読んでいてもわかります。55のツールを縦糸とすると、その横糸は「書き手は読み手」だと感じます。
それぞれのツールのポイントが明確にわかるように、数行から半ページぐらいの引用が、ほとんどのツールで1つ以上、登場しています(★3)。ツールのポイントが実例で示されると、「確かに!」と納得できますし、実例を読むだけでも面白いです。
多様な実例の引用がふんだんにあるという本のつくりかたを通して、「書き手は読み手である」ことが、何度も念押しされているように感じます。
二点目は、 著者自身がツールを時々使っていることを発見できることです。「あ、ここで使っている」と、隠しボタンを見つけたような気持ちです。
例えば、[ツール16]は、「自分のオリジナルなイメージを求めよう 〜決まり文句や凡庸に甘んじるのをやめよう」(80-83ページ)から考えます。
スポーツ記者であるレッド・スミス(Red Smith)が書いたボブ・フェラー(Bob Feller)投手の描写、後述するアン・ラモット(Anne Lamott)の本からの引用など、ここでも、著者が読み手だから提示できる例が横糸になっています。また、ピッタリくるものが見つかるまで1ダース以上の表現をブレインストーミングするという記者サウル・ペット(Saul Pett)のことや、ジョージ・オーウェルやドナルド・マレーのような著名な書き手たちが、決まり文句に甘んじてしまう危険性を指摘していることも示し、このツールも具体例が豊富です。
でも、それだけではありません。
この[ツール16]の最後の方(82-83ページ)で、作家であり、書くことの教師でもあるアン・ラモット(Anne Lamott)の本(★4)から、たとえ、しょっちゅう使われる、ありふれた表現("Whatevewr" や”Oh, well")を使っていても、その使われる文脈を移動することで、その表現に新しいイメージが吹き込めることを示しています。つまり、オリジナルなイメージとは、誰も使ってこなかったような斬新な表現を考えるだけでなく、ありふれた表現であっても、その使われる文脈を動かすことでつくり出せるのです。
この本は5つのパート(★5)に分けられていますが、パート2は 「特殊効果 Special Effects」となっています。使われている単語 Special Effects(特殊効果)を調べると、映画やTV番組制作に関わる文脈で、よく使われる表現のようです。この表現自体は特に目新しいものではありませんが、「映画やTV」という文脈から、「書くツール」という文脈に持ってくることで、新鮮味が生まれています。
また、著者自身も、決まり文句や凡庸に甘んじるのをやめて、自分のオリジナルな表現を、この本の随所で使っています。例えば、[その1]で紹介した「レントゲン読み」(X-ray reading)(211ページ)。また、[ツール12]では、自分が書くときの言葉の選択の傾向を説明するために word territory と言うフレーズをつくったことも紹介されています(64ページ)。
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