訳者の一人・池田匡史さん(岡山大学・国語教育学)が、ジェフ・マーシャル著『あなたの授業力はどのくらい? ― デキる教師の七つの指標』(教育開発研究所)の紹介文を書いてくれました。
本書は、主に下記の価値があると考えています。
①「授業力」なるものの具体を、観点別に示してくれる。
②個人の「授業力」を構成する観点のうち、強みと弱みを見出し、その向上への道を示してくれる。
③個人にとどまらず、学校改善への道を示してくれる。
――――
「授業力」と言われるものがあるとすれば、それは何なのか。雲をつかむような、ぼやっとした問いですが、おそらく、一つの指標だけではそれを語ることはできないでしょう。「授業力」とは、さまざまな観点から複雑に構成されたものだという(なんとなくの)イメージは多くの人がもっていると思います。
ただ、それがどのようなものなのか、具体的に特定してくれるものがあれば…と思ってきた方も少なくないのではないでしょうか。
また近年、カリキュラム•マネジメントという名のもと、あらゆる教科の先生たちが協力して、学校全体の教育活動を改善していくことが要請されてきています。教員免許更新講習の発展的解消に伴って、校内研修の充実が図られようとしていることも同じ路線にあるものといえるでしょう。具体的には、他教科の先生の授業も観察して、改善への意見を求める、という取り組みも多くなることが予想されます。
ただ、いくつかの問題点、困難点、懸念点も生じて(残されて)います。代表的なものを二つ示します。
一つは、教科の枠を超えて、どのような視点で意見を出せばよいのか、困っている方や、教科を超えて「こういう方向性のもと、改善していけばよい」という手がかりになるものがあればよいのに…と思っている方も多くいることでしょう。(言語活動が軸になるから、国語科の先生は中心的な役割を果たしてくれ!などという要請を受けた方も多いのではないでしょうか?)
いま一つは、学校組織としての改善に注目がいくあまり、個人の資質・能力の面がおろそかにしていないかという懸念です。教職員支援機構などは学校改善を目的とした内容を、指導主事レベル向けの講習等で推しますが、個人の資質・能力の向上という面の捉え方は明確にできていないような個人的印象があります(学校改善の取り組みができていればよいとされ、その具体的なクオリティを問えているかは・・・ということです)。学校組織と個人の資質・能力は、これまでの(教員研修に関する)法律・法令等でも、別物として語られてきたものですが、どちらも見据えたものにしていかなければなりません。そのためには、どちらにとっても有意なものであることを自覚できる「何か」が必要です。
ここまで示したことを達成してくれる、具体的なものが、この国には少なかったように思います。本書は、それを与えてくれるものの一つです。
まず、本書の強みは、「ニーズ・アセスメント」★です。自分(あるいは、自分の学校の同僚たち)の強みと弱みを分析することができる指標が設けられており、そこで強みとして導かれたものは、さらにいろいろな資料や前例を参考にしながら伸ばしていけばよく、弱みとして導かれた観点は重点的に改善していけばよい、というものです。
これは、個人の資質・能力の強みや改善点を見つけることはもちろんですが、学校改善という面でも重要なことです。
先にも述べましたが、校内研修の充実がより目指されているという動向があります。
では、どのような校内研修を組む必要があるのか。せっかくの時間をムダなものにしないために、弱み(ないしは強み)に焦点化したものにしようとすることにも寄与してくれます。
(これがあったことで、私が学校に参与するとき、個人的に助かったなと思ったこともあります…。)
もちろん、それぞれの弱みを底上げしていくための方法の解説や、あるいはなぜそれが強みと言えるのかを言語化してくれる解説も多くなされています。
個人、そして学校の自信を確信に変えてくれるとともに、改善するポイントを探り、その方向性を見出すための確実な手がかりになってくれる一冊だと思います!
★この背景には、1970年ぐらいから延々と行われ続けている「効果的な教え方」の研究と実践があります。(それに類するものは、日本にも存在しているでしょうか?)今秋から冬に出版を予定している数冊の本も、そういう流れの上にあると言えますので、ぜひ楽しみにしていてください。
◆割引情報
・本体価格2400円でご提供します(消費税分をサービスします/送料も1冊から無料です)。
・教育開発研究所への直接ご注文に限ります(書店は不可)。
下記リンクよりご注文ください。その際、「WW便りを見ました」とお書き添えください。 https://www.kyouiku-kaihatu.co.jp/bookstore/products/detail/558
※ 今年9月いっぱいまでのご注文まで。
0 件のコメント:
コメントを投稿