感染拡大防止のための様々な策により、教室で今まで行っていたのにできなくなったことがいろいろあります。試行錯誤のなかで、代替方法を見つけたり、再発見があったりもします。今日はいくつかの教室から、再発見、代替案、新たに考えたことの点描です。
▶︎ 横浜の小学校で教える冨田先生は、昨年度は6年生の担任で、3月は登校日はほぼ無し。「読書が習慣として身についている子にとっては コロナでも本を読み続けることができていたでしょうね」と振り返ります。そして、今年は特別支援学級の担任です。
読書習慣が身についていないまま、新学期を迎えた子どもたちのことも考え、まずは「ストーリーの魅力」の体感を意識している冨田先生は、「紙芝居の魅力を再発見」中です。以下のように教室の様子を教えてくれました。
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読み聞かせや紙芝居を多く行っています。テレビよりも食い入るように楽しむ子どもたちに、僕も自信をつけています(笑)。
今は紙芝居の力強さを感じていますね。
文脈の理解が乏しい子どもたちだと、テレビも派手な演出がないと楽しむことができないようです。
ところが、紙芝居は派手な演出がないにもかかわらず、子どもは食い入るようにみつめています。
紙芝居の木枠シアターを用意すると劇場のようになります。そして、子どもたちの理解の様子を確認しながら読むスピード、声色、声の大きさをコントロールすることができます。場面が切り替わるときに紙芝居をめくり、木枠に当たってコツンという音がなります。そういうアナログな感じもいいのかもしれません。
「さるかに合戦」は最高に良かったですね。
以下のURLの「おとうさん」という紙芝居も秀逸で、父の日が開けた本日(6月22日)読みました。
おとうさんに化けた魔物が子どもをさらい、本物のおとうさんが助けるために頑張るというお話で、これも絵といいストーリーといい、子どもたちを惹きつけるものです。
読み聞かせよりも、シアターなので、考え聞かせやアドリブなどの語りも入れやすいと思います。
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*「さるかに合戦」「おとうさん」は、要チェックですね!
▶︎ 相模原市の小学校で4年生を教える都丸先生は、従来とは異なる制限として、「子どもたちを1箇所に集めて読み聞かせができない」「学校図書館の本の貸出を当面の間延期している」「ブッククラブができない」ことを挙げています。そこで以下のように工夫されています。
→ 読み聞かせについては、書画カメラを使い、教室のテレビとつないで読み聞かせ・考え聞かせをすることで、子どもたちは自分の座席で聞きます。
ちなみに先週までに読み聞かせをしたのは、以下の本とのことです。
『あらしのよるに』
『メチャクサ』
『車のいろは空のいろ』
『No, David!』
『セクター7』
『ふたりはいつも』
『てん』
『みんな、何を食べている? 世界の食事おもしろ図鑑 食べて、歩いて、見た食文化』
『ももこのいきもの図鑑』
『びりっかすの神さま』
→ 図書館の本は、貸出はできないものの、使うことはできるそうです。教室の図書コーナーには中学年向きの本が不十分なので、図書館は使いたい。そこで、各クラスの割当は週1回だそうですが、使わないクラスがあれば、そこにも入らせてもらって、選書のミニ・レッスンを行い、貸出ができる日に備えます。
ちなみにこの投稿をお願いした日の読み聞かせは、アンソニー・ブラウンの『こしぬけウィリー』とのこと。
この本と『てん』を読むときは、いつも主人公の最後の言葉をみんなで予想するのですが、子どもたちはよく考えて見事に当てる、とのこと。「ウィリーが登場する別の作品もあるよ」と紹介すると、図書室で『ボールの魔術師ウィリー』を探し出して嬉しそうに読んでいる子がいたそうです。こうやって「1箇所に集まらない読み聞かせ」と「貸出のできない図書館」もしっかり活用中です。
→ ブッククラブができないものの、『びりっかすの神さま』を全員で読んだそうです。1章を担任が考え聞かせ。表紙の絵や、読み進める上で鍵となる問いについてみんなで考えました。2章以降は自分のペースで読んでいます。クラスの数人にとっては難しすぎる本になってしまうので、背景や場面等の補足説明を個別に行うというサポートで、対応します。
* その他、この3週間で行ったことや、授業づくりへのヒントとして、以下を教えてくれました。
・朝の会での1分間プレゼンで、その日の日直の児童が、自分のおすすめのものを紹介する時間をとっています。紹介するものは「本」「ゲーム」「アニメ」「マンガ」「文房具」「場所」「人」「ドラマ」「ニュース」など、みんなに紹介したいものであれば何でもOKにしています。先週は3日続けて本の紹介がありました。少しずつ本を読む文化が広がりつつあります。
・4年生の教科書に出てくる『白いぼうし』(車のいろは空のいろシリーズ)は、タクシー運転手の松井さんの周囲で不思議なことが起こる連作短編です。「質問を考える」ミニレッスンに向いています。また、色彩表現が豊かなので「イメージを思い描く」ミニレッスンにも向いています。おもしろい比喩表現も出てくるので、「書くこと」の授業にも使えます。教科書の作品だけを読んで終わりにするには、もったいない作品です。
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▶︎ 春学期がすべてオンライン授業になった大学で教える長崎先生は、フィードバックについて考え中で、以下のように、2つのクラスの対照的な様子、そして、そこから新たに考えたことを教えてくれました。
まず、2つのクラスのうち一つのクラスは、課題を与え、教師は進捗状況を確認し、フィードバックをし、評価をするというものです。
まず、2つのクラスのうち一つのクラスは、課題を与え、教師は進捗状況を確認し、フィードバックをし、評価をするというものです。
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僕自身もそうなのですが、フィードバックをするという点では、非常に大きな労力になるということです。とても、追いつかない。個人的には、次の3点がブロックする要因であるように思えます。
1 顔が見えない相手であること
2 フィードバックするための素材不足
3 フィードバックの効果が見えない
費用(労力)対効果で考えると、フィードバックなど考えず、ひたすら、課題に取り組ませて、答え合わせをするだけの方が良いのではないかと思えてしまうほどです。この辺りに、一斉授業とそうでないものの、本質的な問題が隠れているような気がします。
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さて、もう一つのクラスです。このクラスはブッククラブを活用しているスピーチ・コミュニケーションのクラスです。ここでは、Zoomを使っています。参加者を小グループに分けられる、Zoom の Breakout roomという機能も活用中で、これでピア・カンファランスを行っているそうです。
また、教室での対面授業では、付箋紙にコメントを書いて渡す形だったのは、Zoomのチャット機能を使っています。1分半で他のメンバーがフィードバックを送り、リアルタイムに他の人の意見も読め、なんとその記録もテキストとして残る、ということです。
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学生MCによる運営。しかも、他者に配慮し、リスペクトした運営を心がけている。授業の大半は、何らかの活動をやっている。準備してきたスピーチを行う人、オーディエンスの人もそのあとで論評やピア・カンファランスがあるので、詳しく、分析的に聞くことになる。ピア・カンファランスでも、お互いの意見が尊重される。ピア・カンファランスのリーダーを務めた「評価者」は最後のセッションで、メンバーを代表して、分析を述べる。
90分間、ほぼ僕の出る幕はない。
僕がやっていることは、このくらい。
1 その日のやることリストをつくること
2 最後に全体的な講評をすること
3 個人の振り返りメールに返信して、フィードバックを返すこと
4 ブッククラブへの反応
5 時間の管理係
オンサイトとオンラインの違いで感じることは、
1. ピア・カンファランスが充実しているように感じること。教室では、なんだか井戸端会議みたいになった気がしていたのだが、しっかりとスピーカーに焦点を当てた議論ができやすいように感じる。画面なので、他の情報に邪魔されないのかもしれない。
2. ブッククラブと実践のつながりが見えやすく感じること。ブッククラブで読んだことを実践し、評価し、振り返る、こういったサイクルが目に見える。話しっぱなしではなく、文字で送り合うからかもしれない。オンサイトとメーリングリストなどの組み合わせが良いのかもしれない。
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私自身も、制限のある現在の環境で、新たなことを学びつつ、今、学んでいることから、感染防止のための制限がなくなっても、使いたいことが見え始めてきています。引き続き考えて、また投稿します!