これまでに、これほどユーモアのセンスとイラストが多い教育書にであったことはありません。内容もとても濃いですから、ぜひ手に取ってください。
まず、著者たちは、以下のイラストで、この本がどんな本かを宣言しています。
「学校ごっこ」をする場とは、指導内容は「正解あてっこゲーム」ばかりをするので忙しく、ほとんど記憶に残らないので、「従順/服従/忖度」の練習の場化していることを意味します。
二人の著者が長年の実践と研究(文献)の成果から、転換を図ろうとしている教師たちにとって基礎となる、六つの「学びの真実」を紹介してくれている中の一つを紹介します(斜体は、引用箇所です。残りの五つの真実はどのようなものか、ぜひ本書を手に取って確認してください)。
●真実4 あなたが唯一生徒たちにできることは、予想もできない世界に向けての準備である。
教師の仕事は、生徒自身が何でもできるように準備するのを助けることです。これを物語にたとえると、私たち教師は案内役であり、生徒たちは主人公ということになります。
生徒たちの未来がどうなるか分からないとき、私たちの仕事は変わってきます。教科の内容は常に変化し続けているので、教科の専門家という役割から自由になって生徒たちをエンパワーする案内役となります。言うなれば、教科の専門家の代わりに私たちが学びの専門家であることを生徒たちに示すということです。生徒たちが何でも学べるようにサポートするためには、自分が知っている学び方を共有することが一番なのです。(本書、58ページ)
この文章と関連する内容が、本の別な箇所にあるので、それも紹介します。
実際、あなたは単なる寄り添う案内役以上の存在です。
教育界で広く知られたフレーズに、教師は「壇上の賢人」から「寄り添う案内役」にならなければならない、というのがあります。この考え方は、従来のように生徒が学ばなければならないことを一方的に教え諭す代わりに、生徒の学びを脇からファシリテートするべきだ、というものです。しかし、この考え方は全体像を正確に捉えているとは言えません。私も含めた多くの教師が「見逃しがち」となっている重要な点があるのです。
「時に、物語の主人公は生徒ではないことがあります。教師の場合もあるのです」
年度中に、生徒たちが私の案内人になり、私に行動を求めたことが何度あったことか。あなたにお伝えできないぐらいたくさんありました。私たちは、みんなが壮大な冒険のメンバーなのです。私たちはみんな、互いに学び合っているのです。
実際、もっともよい物語は、生徒たちと一緒に冒険の旅に出発したときに起こります。それは、一緒に着手して、互いに学び合っているときです。私たちが学んでいるのは異なる内容かもしれませんが、旅が共有されていたことは確かです。
生徒たちの学びの物語を、教師も主体的な役割を担う共有された旅と捉えると、私たちは寄り添う案内役以上の存在になることができます。★注・「教師も主体的な学び手である――この部分が日本の教師観には欠けているなと思いました。やっと日本は、教師はファシリテーターである、と言いはじめた段階です」という翻訳協力者からのコメントがありました。★
教師は成長途上にある案内役
私たち教師はこの冒険の主体的な参加者で、その過程において、生徒たちと同じくらいたくさんのことを学びます。生徒たちが学びの物語を紡ぎ出せるようにエンパワーされ、クラスの仲間や教師と学びの旅を共有すると、彼ら自身がつくり出したり、デザインしたり、探究したりすることを通して、自分と周囲にいるほかの人たちの人生に劇的な影響を及ぼす機会をつかむことになります。(本書、201~2ページ)
第6章では、従順なマインドセットから、自立的なマインドセットへの転換を呼びかけています。
それは、WWとRW が自立的な書き手と読み手(要するに、学び手)になるための方法であることと同じです。従来の国語(作文教育や読解教育等)をしていては従順(=一生懸命勉強し、大学に行き、そして出世の階段を上るという慣例に従っていれば何事もうまく運んだ!)のための練習をしているにすぎないのとは対照的です。しかし、そういう世界は、もはや消えつつあるのです。
107ページの図に示されているように、「自立した学び手」には、「自発的に行動する人」と「自己管理できる人」の両方が必要ですが、WWとRWはこれらの練習の機会がふんだんに提供しています(が、従来の国語ではほぼ皆無(?)です。確認したい方は、第6章をご覧ください)。また、これらの二つに必要なスキルは、学校経営を含めて組織経営やプロジェクトマネジメント等、私たちが仕事や生きていくうえでとても大切なスキルであり続けます!(私たちは今、それらをいつどこで身につけているでしょか??)
第8章のタイトルは、なんと「評価は楽しいものであるべき」です。その後に、
「そんなこと、ありえないでしょ。
本当です。私たちは真面目です」
と続きます。ちょっと普通の本ではありえない体裁で投げかけられるのが本書の特徴です。でも、WWとRWになじみ深い本ブログの読者は、「評価は楽しいものであるべき」も、「評価は教え方と学び方に役立つもの」ということにも納得していただけると思います(より詳しくは、第8章を参照ください)。
他にも刺激的な情報が盛りだくさんです。ぜひ繰り返し読んで、自分の授業に火をつけてください。
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