2018年5月12日土曜日

スキーマをRWに応用するには?

 「スキーマ理論」という言葉を初めて聞いたときは、難しそうな印象を持ち、そのときは「スキーマを活用して本を読む」と言われても、スキーマという言葉自体に馴染みがなかったので、「うん???」という感じでした。

 でもその後、何度かこの理論の引用などに出合っていくうちに、少しずつ、実際の授業で本を読むときに、子どもたちが応用できることを考えるようになってきました。

1)まずスキーマについて簡単に説明します。すでに、よくご存じの方は、すぐ下の説明を飛ばして、下の2)からお読みください。

『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因』(西林克彦著、光文社新書)には、スキーマ研究の実験に用いられたブランスフォードたちの文章が紹介されています。

 まずは、以下の一節をお読みください。なお参照・引用ページ数を(  )で示しておきます。

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 新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなものである。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。(45ページ)
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 上の一節は、言葉としては特に難しいことはないのに、何が書いてあるのか?と言われると見当がつかないです。しかし、上のことが、「凧を作って揚げること」についてであるとわかれば、すっと内容が頭に入るというような説明があります。(45~46ページ)

 そして、「何の話かがわかると、私たちは、それまでちんぷんかんぷんだった文章が、わかるように」なること、それは、凧に関する知識が文章を処理する際に使われるから」であること、また、「このように、あることがらに関する、私たちの中に既に存在しているひとかたまりの知識」がスキーマと呼ばれることなどが説明されています。(47ページ)

2)上の凧揚げの話は、なるほど、と納得です。そう思って読むと理解できます。

 さて、この話から、「読書家の時間」などで実際に本を読むときに応用できることは? ですが、まず、すぐに浮かぶのは以下です。

・単語もすべてわかるのに、話が全く頭に入ってこないときは、何の話かわかっていないからかもしれない、と考えてみる。

⇒ 一つの問題解決として何の話かわかるかどうかの努力を、少し行ってみる。例えば、その本の帯や裏表紙、書評や紹介文を読んでみる。すでにその本を読んだ友達と話しをしてみる。 何かの記事であれば、見出しや写真など全体を眺めてみる、等々。

・何の話かわかった場合は、その話について自分がどの程度知っているのかを考える。必要であれば、知識を少し補った上で、改めて読んでみる。あるいは、この話に関する知識を得るのはかなり難しいと判断したときは、その本を読むのをやめる、という選択をすることもありうる。

3)最近、気になっていて、もっと知りたいと思う点は、頭の中にあるスキーマを増やすことと読む速度の関係です。

 このブログでも度々紹介している中学校レベルの優れた実践者、ナンシー・アトウェルの教室の様子を見ていると、生徒たちは読んでいるものについて、それに関わるスキーマを持っていない場合は、読むペースを落とす、 読んでいるものについてのスキーマを豊かにしっかりもっていて、たやすく読める場合、スピードをどんどんあげてもよい」とわかっているようです。

 まだうまく自分のなかで整理できていないのですが、その前提に、「興味をもって自分のレベルで無理なく読める本を大量に読む経験が、読むことに関わるスキーマを増やしていく、そうするとそのスキーマを使って、スラスラ速度を上げて読むことができるようにもなる」ことがあるように思います。In the Middle 第3版、2015年、176-177ページ)  

 こういう点からスキーマを見ていくと、具体的な読み方を学ぶときに応用できそうなことがさらに増えそうに思います。この点は、考え続けて、いつか、再度ブログに書きたいと思っています。

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 *余談ですが、私は英語を教えているので、上の凧揚げの話の英語版を出して「分かった?」と聞くことが時々あります。そうすると、頷く学習者がけっこういるのです。それは単語も文法も難しくないので、「さらっと一通り母語に訳せる」からです。「何が書いてあった?」と尋ねると、さらさらと訳を言ってくれる学習者もいます。

 しかし、何の話?と、尋ねると、きょとんとしています。「英語を読む=内容が理解できる」ではなくて、「英語を読む=母語にできる」と思い込んでいる学習者も、けっこういるのだなと思わされます。

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