2016年9月23日金曜日

「何も書くことがない!」への対応の仕方


9月から作家の時間(WW)に取り組み始めた先生から、「ほとんどの子たちは順調に書いていますが、数人の子たちが何も書くことがない状態で困っています。何かいい対応の仕方があったら教えてください」というメールをもらったので考えました。

1)子どもたちが好きなこと、得意なこと、学校以外のところでよくすることなどなど、子どもたちについて知ることがまずは考えられます。ある程度以上の学年であれば、子どもたちを対象にアンケートを取れますが、低学年なら保護者に協力してもらうといいかもしれません。

2)カンファランスでは、その子について聞きまくります。好きな本は? 作家は? テレビは? 遊びは? 興味関心は? 趣味は? 自分にとって大切な人は? 場所は? これまでに書いたものの中で、自分がいいと思っているものは? などなど ~ これら自体、上記のアンケートのテーマになり得ます。要するには、アンケートないしインタビューで、子どもについて尋ねてあげるのです。★

ここまで書いて、このブログでは過去に何回も、このテーマを扱ってきたのを思い出しました!

3)たとえば、サッカーがとても好きだということが分かったら、それについて根掘り葉掘りインタビューします。そして、「それってとても面白いよ。ぜひ書いてみて」と誘ってあげます。『ライティング・ワークショップ』の「はじめに」のジェレミのように。

4)なかなか書く題材が見つからない子が何人かいる一方で、多くの子たちが書けているなら、その子たちに作家の椅子で発表してもらいます。「ああいうのを書けばいいんだ」「あれなら、自分も書ける」「ああいうの自分も書きたいな」というモデルが多様に提示されることが刺激になります。(それは、教師の誘いよりも、インパクトがあるぐらいです。立場が近い子どもがすでにやってしまっていることなので。)

5)教師と子どものカンファランスではなくて、子どもたちに話させる(会話をさせる)ことも、インパクトがあります。主には、問いかけに対して答える形で自分の書きたいものが生まれることが少なくありません。従って、書く時間は静かにするのではなくて、特に書けない子たちにとっては、自分のアイディアを(興味やこだわりや趣味等について)聞いてもらい、それに対して質問をしてもらうことで、自分は何を知っているのか、何が書けるのかを発見できるのでとても価値があります。要するに、ピア・カンファランスです。

6)書き手はどこから/どうやって題材(書くアイディア)を集めているのか、というミニ・レッスンをやることも大切です。それも、本物の作家たちのモデルを紹介しながら。(『作家の時間』の第5章「題材探し」を参照してください。詳しく紹介してあります。)

7)時間制限をして(約5分)、各自で(あるいは小グループで)、書ける/書きたい題材のブレーンストーミングをし、その後で相互に紹介し合い、最後に出されたものの中から自分が書きたい題材を自分の作家ノートに書き足します。

8)教室のWWの時間だけ書く努力をするのではなくて、作家ノートを持ち歩き、書けるテーマを書き出すように提案してみます。自分は書き手であるというアイデンティティをもってもらうこと★★は、とても大切です。提案するだけでは弱いので、教師が自分でモデルを示すことが先決かもしれません。

9)そのアイデンティティをもってもらうために何よりもインパクトがあるのは、自分が作家の椅子に座って発表し、友だちの反応(ファンレター)をもらうことです。そういう機会を早く(可能なら度々)もってもらえるように、最大限のサポートをします。

他のアイディアを実践している方、他のアイディアが浮かんだ方、ぜひ教えてください。


★ 日本の作文教育を含めた国語教育は、子どものことを知らなくても教えられてしまうことが、一つの特徴なのではないでしょうか? それに対して、WWRW(読書家の時間)も子どもたちのことを知ることがスタートラインです。この違いは、大きな違いを生み出します。

★★ 書き手を育てるうえで、書き手としてのアイデンティティを確立することは欠かせませんが、この考え方も日本の作文教育には存在しません。いい作品を書くことには努力していますが。


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