冒頭の「読んでいて行き詰ったら、読むのをやめるよ」は、9年生(日本でいうと中学校3年生)のルーク君の言葉です。この言葉は、高校で教えながら教員研修にも関わっているクリス・トバニ(Cris Tovani)の本の中に出てきます。★
この本によると、どうやらルーク君はあまり読むのが得意でないようです。ルーク君の率直な答えに驚いた先生は、クラスの子どもたちに、読んでいて行き詰ったときにはどうしているのかを尋ねます。残念ながら、ルーク君以外の子どもたちも、あまり読むのが得意でないようで、「何もしない」、「100回読んでみる」、「もっと一生懸命考える」等々、あまりぱっとしない答しか出てこなかったようです。
私自身、国語でも外国語でも「読んでいて行き詰ったとき」にどうするのか、ということをはっきり教えてもらった記憶はほとんどありません。「何度も読めば、そのうちに分かる」とか「とにかく辞書で調べなさい」等々の、今、思うとほとんど助けにならないことを、誰かに言われたような記憶はあります。
(「ほとんど助けにならない」と書きましたが、「何度も読む」場合は、その「読み直し方」次第で、行き詰まりの打開につながることもありますから、「打開につながる読み直し方」を教える必要があります。同様に、「辞書で調べる」にしても、その調べるタイミングと調べ方を間違うと、かえって訳が分からなってしまうので、こちらも「いつ、どうやって調べるか」を教える必要があります。言い換えれば、どちらも、具体的に、役立つ読み直し方や調べ方を教えないかぎりは、「ほとんど助けにならない」ということになります)。
上のようなことも含めて、先生がどうやって解決しているのかを、「考え聞かせ」★★で、みんなにミニ・レッスンで教えるのもいいかもしれません。
でも、ミニ・レッスンで教えるだけでなくて、ぜひ、カンファランスのポイントにも、と思います。
というのは、読みにくい箇所も、その解決方法も、子どもによって様々だと思うからです。カンファランスで、読めているかどうか確認するときに、子どもがどんな解決方法を持っているのか(知っているのか)、そしてそれを使えているのか、なども見ていければと思います。
出典:
★
クリス・トバニ(Cris Tovani)氏の本、I Read It, But I Don’t Get It (Stenhouse, 2000)の、第5章は、上のルーク君のセリフで始まり、この章の最初の2ページ(49-50ページ)で、行き詰ったときに、どうしていいのか分からない子どもたちの様子がよく描かれています。また、この同じ本の51ページに「行き詰ったときにやってみる方法」も紹介されています。
★★ 「考え聞かせ」については、『「読む力」はこうしてつける』(吉田新一郎、新評論、2010年)の71ページに次のように説明されています。
「読む時、私達は『優れた読み手が使っている方法』を意識するかしないかはともかくとして使っています。しかし、頭の中で起こっていることですから、それは見えません。この読んでいる時に考えていることを言葉にして表すことを『考え聞かせ(think aloud)』と言います」
なお、この本のパート2では、「優れた読み手が使っている方法」を、具体的にどうやって教えるのかという事例が数多く紹介されています。
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