リーディングとライティングを、それぞれ別のものとして教えるのではなくて、両者に共通の教えるポイントを見い出す。そして、読み書きのミニ・レッスン合計2つを、一つのレッスンに統合して、読み書きの時間を組み立てていく。そうすることで、多くのプラスを見出している本『The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers』(★1)を、最近読んでいます。この本のタイトルであるliteracy studioは、直訳するとリテラシー工房??という感じでしょうか?)
まだ、読んでいる途中です。また、2021年9月11日土曜日の投稿「読み書きを統合する時間を設定する」で紹介した、リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップを統合した学びの時間である「リテラシー・ワークショップ(literacy workshop)」(★2)もそうですが、読むこと、書くことのミニ・レッスンで共通のトピックを見出し、そこから授業を組み立てると、少し違った風景が見えそうな気もします。
リーディング・ゾーン(★3)のような、ひたすら本の世界に入って「読む」ことに専念する時間にも魅力を感じる私は、読み書きを統合する時間は、まだ、ゆっくり理解中という感じです。でも、『The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers』で指摘されているように「考え聞かせ」を使って教える場合、一定の時間がかかります。ですから、一つのテキストの考え聞かせから、読むこと、書くことの両面を教えた方が、異なるテキストを二つ考え聞かせをするよりも、遥かに時間の節約になりますし、自然に読み書きのつながりも理解できます。これは確かにプラスだと思います。
さて、『The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers』では、従来のリーディング・ワークショップやライティング・ワークショップでの、1)ミニ・レッスン、2)それぞれに読む時間・書く時間、3)共有の時間は、それぞれ 1) crafting session、 2) composing time, 3) reflection と呼ばれています(42-47ページ)。
従来のミニ・レッスンの部分に対応しているのが、クラフティング・セッション(crafting session)です。クラフティング・セッションは、ぴったりの日本語が浮かばないので、今日はカタカナのままですみません。
クラフティング・セッションは、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップ、それぞれで別のミニ・レッスンを実施するのではなく、それを統合して一つのセッションにしています。
クラフティング・セッションは、クラス全員が必要とし、読み手、書き手として使えることを教える時間です。週に2-4回、1回の時間は5分から30分、この時間、生徒たちはお互いに交流(対話)しながら学びます。この時間で学んだことをもとに、クラフティング・セッションの後に続く、それぞれが読んだり書いたりする時間で、読み手、書き手として行うことを決めます(65ページ)。
→ 5分から30分という幅も面白いと思いました。一定の時間をかける必要のあるトピックに対して、「ミニ・レッスンは10分以下」という制約をかけてしまうと、中途半端で終わってしまいますから。ただ、著者も、子どもたちが実際に読んだり書いたりする時間を確保することの大切さを強調していますので、クラフティング・セッションがいつも長いと、当たり前のことですが、実際に、一人ひとりがそれぞれに読み書きする時間が減ってしまいます。
クラフティング・セッションの後に続く、それぞれが読んだり書いたりする時間では子どもたちが行うことを決めます。紹介されている事例の一つでは、登場人物の変化についてクラフティング・セッションで学んだ後に、先生は次のように言っています。
「自分の選んだ本で、登場人物の変化に目を向け、その変化がストーリーにどういう影響を与えているかを考えてもいいし、自分の書いている作品の中で、登場人物の変化をどう扱うかに目を向けることもできます」
子どもたちは、最初、やや戸惑った様子で「同時に読み書きをするの?」「読む生徒もいれば、書く生徒もいるっていうこと?」と反応しています。
先生は「登場人物の変化に注意して、まず読んでから、書くことをしてもいいし、書くことからスタートして、その中で登場人物の変化を考えてみてもいいね」などと答えています。(44ページ)
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読み書きを統合する literacy studioで目指しているのは、1) 子どもたちが読み書きのつながりをより強く意識し、2) 読み書きの選択を増やし, 3) 実際に読む時間、書く時間を増やすことです(8−9ページ)。「教える時間を半分にして、効果を倍に」なのです。(→この部分については、著者が4分強で、自ら著書を読み上げる形で説明しているのを、出版社のウエブサイトで聴けます★4)。
→ ライティング/リーディング・ワークショップでの「時間の確保」が難しい日本の教室では、二種類のミニ・レッスンから一つのクラフティング・セッションに移行することは、一つの選択肢かもしれません。
→ 従来通りに、読み、書きを分けてミニ・レッスンを行う場合でも、少なくとも教える側は、読み・書き両面から見る習慣をつけることはメリットが多いように感じます。読むことに没頭しつつも、ふと、書き手の目で見て「上手だなあ」と思うこともありますから、ミニ・レッスンで両面見ておくのは、ある意味、自然なことなのかもしれません。先日、何をどうやって選択するのかという話をしていたときに、その助けになる項目の一つとして「題名」が出てきました。そこから学んだことが、今度は自分が何かを書く時の「題名の付け方」を考えることにすぐに、つながることを思い出しました。確かに、読み、書き共通のトピックは多そうです。
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★1 Ellin Oliver Keene著
The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers
Heinemannより2022年に出版。
★2 「読み書きを統合する時間を設定する」の投稿のURLは以下です。
https://wwletter.blogspot.com/2021/09/blog-post_11.html
この中でも紹介していますが、リテラシー・ワークショップについては、The Literacy Workshopという書名で、それぞれ小学校1年生と5年生を教える、Maria WaltherとKaren Biggs-Tuckerの共著、Stenhouseより2020年に出版。この本は現在では Routledge より2023年出版となっています。
★3
『イン・ザ・ミドル』(アトウェル、三省堂、2018年)や Nancie Atwell と Ann Atwell Merkel の共著 The Reading Zone: How to Help Kids Become Passionate, Skilled, Habitual, Critical Readers (2nd Ed). Scholastic Professional, 2016
★4
https://blog.heinemann.com/literacy-studio-audiobook → 著者が本の一部を読んでいるのを聞くことができます。上記以外でも、検索すると、著者のインタビューや、本の一部の読み上げているものが出てきます。また、この本を出版した Heinemann社 のブログでも、以下のように、何度か紹介されています。
https://blog.heinemann.com/why-literacy-studio
https://blog.heinemann.com/topic/the-literacy-studio
https://blog.heinemann.com/on-the-podcast-the-literacy-studio-workshop-reimagined
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