これまで、時々、「ガイド書き」(guided writing) という言葉を耳にしつつも、「ガイド読み」の書くこと版?ぐらいのイメージしかありませんでした。(「ガイド読み」(ガイデット・リーディング guided reading) では、読むことについて共通の課題を持っている子どもたちを集めて、少人数で短い時間、教えます。ガイド読み」については、『リーディング・ワークショップ』(新評論、2010年)第8章「ガイド読み」と「効果的な読み」125ー138ページをご参照ください。★1)
最近、「小グループで教える」ことに焦点を当てた本『Teaching Writing in Small Groups』(★2)を読んでいます。ライティング・ワークショップで、「全体へのミニ・レッスン」と「個別カンファランス」に加えて、様々な小グループでの教え方をうまく取り入れると、「それぞれの子どもたちへの個別カンファランスの頻度が上がらない」とか「クラス全体にデモンストレーションしても、うまくできない子どもがいる」等への対応ができるヒントがたくさんあるような印象を受けています。
多様な小グループの教え方の一つが「ガイド書き」(guided writing)で、この本では「ガイド書き」という章(76-86ページ)で説明されています。(以下のページ数は『Teaching Writing in Small Groups』のページ数です。)
著者のセラヴァロウ氏(Jennifer Serravallo)は、小グループで書き手を教える場合、実のところ、それは「ガイド書き」になっていると言います。それは、集められた子どもたちが、現時点ではまだできていない新しい作家の技や方法にトライして、できるようにガイドするのが目的だからです。教師はいろいろな目的で小グループ活動をすると思いますが、他の小グループとの違いは、書き手に与えられるサポートの量(ガイド書きではサポートがたくさん与えられる)と教え方の構成(ガイド書きでは、教師がしっかりコントロールしている)だと記しています(80ページ)。
ガイド書きで子どもたちを集める場合、教えるポイントは同じですが、子どもたちは、それぞれ異なるトピックの作品に取り組んでいることも多いです。教師は、異なるトピックでも共通するような指示をたくさん出し、しっかり足場かけ(scaffolding)をしてサポートします(80ページ)。
例えば、幼稚園の子どもたちを教えているニカルズ先生は、「自分のこと(経験や行ったこと)を書く(personal narrative)」というユニットを教えている時に、「海岸には砂があります。海では泳ぐことができます。海岸が大好きです」というように、事実を書いているものの、それだけで終わっている子どもたちがいることに気づきます。そこで、そういう子たちを集めて、「自分のこと(経験や行ったこと)を書く」時には、ストーリーにはいくつかの出来事の連続性があることや、実際に行ったことや言ったことなどの情報を織り込むことを、ガイド書きで教えることにしました。 (ここから、以下の数段落は、77ページと78ページから、ざっくり紹介です)。
集められた3名の子どもたちは、それぞれ、プール、海岸、公園について書こうとしています。先生は、それぞれの子どもたちに、プール/海岸/公園に行った、「ある特定の時」を考えるように言います。それから「その時に起こった最初のこと、そこで自分が行ったことを考えるように指示し、それについてさっと絵を書いてみるように言います。「絵に誰がいるの?」「この人は何をしているの?」等も聞きながら、さらに、次に起こったこと、その次に起こったことの絵を書くように言います。
簡単な絵ができると、最初の絵について、子どもたちに最初に何をしたのかを尋ねて、それぞれが自分の行動を言えれば、それを文として絵の下に書くように言います。
また絵に書かれている人が言ったことを、吹き出しで書くようにも言います。
こんな感じでガイド書きを続け、最後には付箋に「言ったこと」「行ったこと」と書いて子どもたちに渡し、「言ったこと」「行ったこと」を加えるという二つの方法を、子どもたちが今後も覚えられるようにして、終了です。
先生は最後には「言ったこと」「行ったこと」を強調していますが、実は、ガイド書きの間には、もっとたくさんのことを、サポートをいっぱい出して、できるようにしていることも指摘されています。
例えば以下です。
・「(プール、海岸、公園に行った)ある1回」について書くのか「プール、海岸、公園について」書くのかの違い
・文を書く前に、場面を思い出して、絵を書いてみる
・文を書く前に、口に出して言ってみる
・一つの文を書いてから、次の文を始める
・絵に戻って吹き出しをつけることで、出てきた人が言ったことを思い出す
・絵を見て、言葉を足す
(77-78ページ)。
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上記のようなことは、先生がどんどん「具体的に行うように促す」ことで、子どもたちは行っています。
私がイメージしやすかったのは、「ガイド書き」で行うサポートを、自転車に乗り始めた子どもと親に例えていたことでした (80ページより)。
初めて自転車に乗ることにトライする時に、親が自転車を支えることで、子どもは転ばずに進めます。これは自分一人ではできないことです。親は、コンスタントにサポートをしながら、子どもに「前を見て」「ハンドルをまっすぐにして」「ペダルを漕いで」など、どんどん指示を出していきます。
これで、「自転車に乗る」という感覚がつかめます。
でも、いつも親がサポートすることは必要ではありませんし、いつも親がサポートしていると、子どもが一人で乗れるようになることの妨げにもなります。
同様に、ガイド書きの時は集中的にサポートし、指示もたくさん出しますが、それはガイド書きのときだけですし、ガイド書きばかり使うのも望ましくないようです。
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(★1)「ガイド読み」には多様な方法があり、行う人によってかなりバリエーションもあり、『リーディング・ワークショップ』で説明されている「ガイド読み」は、『Guided Reading』という著書もあるゲイ・スウ・ピネル(Gay Su Pinnell) に影響を受けた教え方だと説明されています(『リーディング・ワークショップ』126ページ)。
(★2) Jennifer Serravallo著
Teaching Writing in Small Groups (Heinemann社より 2021年)
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