少し前に刊行された『中高生のための文章読本<読む力をつけるノンフィクション選>』(編者は澤田英輔、仲島ひとみ、森大徳、筑摩書房より2022年に出版)を、ここしばらく読んでいました。「おわりに」によると「若いみなさんが、説明文や評論を含めて広くノンフィクションと仲良くなるための本」を作りたい、という編者たちの思いから生まれた本のようです(221ページ)。ノンフィクションがあまり得意でない私でも、パラパラ見ていると面白そうで、こっちを読み、あっちを読み、最初に飛ばしたところを読み、関連して紹介されている本の紹介文を読み。。。と、気づいたときには、ほとんど隅々まで読んでいました。
読みながら、私自身の「読体」についても、いろいろと考えました。「読体」という表現は、石黒圭氏の『「読む」技術~速読・精読・味読の力をつける』(光文社新書、2010年)のKindle版を読んでいるときに、知りました。「書いたものに現れる個性は『文体』と呼ばれ、よく知られていますが、読むときにも『読体』というそれぞれの人の個性があります」(Kindle版14ページ)と説明されています。私の「読体」の特徴の一つに、意識的に読み方を変えない限り、物語を読むようにノンフィクションを読み始めてしまうことがあるように思います。(ノンフィクションがあまり得意でないのはそのためかもしれません。)『中高生のための文章読本』のセレクションは、読者を惹きつけるような語りがあるものが多かったためか、フィクション的な読み方でアプローチしてしまった私でも、そのまま読めてしまったのかもしれません。
以下、自分の「読体」を振り返りつつ、個人的な反応を記します。
1)中高生以上の読者について
この本の第一印象は、「この本が読める年代であれば、おそらく高齢者まで、幅広く楽しめる」でした。編者たちは、おそらく中高生が読めるレベルというターゲットを持ちながらも、何よりも、編者たち自身が、一読者として魅力を感じた本を選んでおられると思います。
明らかに中高生を意識した語り口・立ち位置だと思うものもありましたが、あえて中高生を意識したトーンにしていないと思うものも、結構あるように感じました。
2)大人のお節介について
「おわりに」に、「この本には、読む助けになる『手引き』やイラストもついていますが、大人のお節介は無視して、好きなところから、好きなように読んでもかまいません」(221ページ)と書かれています。
私は、前述したように、「あらかじめ設定された目的があり、意識的に自分の読むモードを変えて読む」とき以外は、フィクションを読むように読み始めてしまうので、最初は「大人のお節介」の部分を全て飛ばして読みました。(フィクションの場合は、ストーリーが気になるので、ストーリー以外のもので止まりたくないからです。)
でも、一度、読んでしまうと、安心して(?)、2回目は「お節介」の部分を読む余裕も出てきました。そうすると、「そうか、こういうところで立ち止まると理解の助けになるのか」とか「中高生であれば、こういう問いかけが役立つのか」と思ったりもして、それも面白かったです。
→ 大人の「お節介」は、特に1回目に読む際には、お節介があることでうまく読み続けられる人と、そうではない人がいるように思います。そういう選択肢が提供されているので、何通りかに読めそうです。
3)いろいろな読み方ができることの大切さ
『顔ニモマケズ』の中からのタガッシュさんへのインタビュー(130ー140ページ)は、タガッシュさんのいくつかの言葉に立ち止まったり、考えたりしながら読み終わりました。短時間ですが、リーディング・ゾーンに入って読んでいたように思います。
そして、読み終わってから、「こうやって、その世界に引き込まれてしまうと、試験問題として読むのは難しいだろうなあ、テストの時は、テストの読み方をしないと、時間配分などを間違うことになりそう」と感じました。「読み方を変える」ことができる必要性を意識し直したといえます。
4)詩も含めたセレクションの幅
この本では、「世界は一冊の本」という長田弘氏の詩で始まり、「主人公」という文月悠光氏の詩で終了しています。詩を味わうのが下手は私は最初は???。でも、何度か読んでいるうちに、「主人公」から、書き手と読み手のつながり(書き手の読み手への思い)や書き手が可能にできることを感じたり、読み手を閉じていない世界へ押し出してくれるような詩だと思ったりしました。
ノンフィクションにしろ、詩にしろ、「読めるようになるには、読む練習が大切」だと思います。でも、年齢を重ねても、これまで読んでこなかったジャンルやタイプのものをバランスよく?読んでいるとは限りません。この本では、気づかないうちに、いろいろなタイプやトピックのノンフィクション(そして詩も!)を、読み終わっているという経験ができたことも、私にはよかったように思います。
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そんなこんなで、中高生が遥か昔の私も、しっかり読めた1冊でした。各章の最後にある、他の本の紹介も参考になりました。
この本を知ったのは、編者の中の一人の方のブログやツイッターを定期的に読んでいたからです。おそらく、そうでなければ、『中高生のための文章読本<読む力をつけるノンフィクション選>』という題名だけでは手に取らなかった本だと思います。
私にとっては、中高生の後に【以上】を入れて、「中高生【以上】のための文章読本」でした。
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