その中で、人数の多い日本の教室で、一人ひとりと向きあうカンファランス・アプローチの醍醐味と難しさの両方を感じています。 今日は、吉沢先生の了解を得て、 その振り返りの一部を紹介します。
(1)70冊の作家ノートを前にして
「楽しかったです」
吉沢先生は英語の授業で、ライティング・ ワークショップを実践しています。先生の授業では、 作家ノートを使っていて、授業中のカンファランスだけでなく、 ノートに書き込む形も併用して、一人ひとりに対応しています。
水曜日のライティング・ ワークショップの授業でいったんノートを集め、 次の授業が月曜日。週末を使えばフィードバックが書ける、 しかし週末は所属されている劇団の稽古が入っている、 そんな状況でした。以下、吉沢先生の書きこみからの抜粋です。
「しかし、やると決めて、稽古の後、 職場にきてノートに目を通しました。
楽しかったです。
連日、文化祭に向けて、 英語の歌を歌わせる指導に時間を割いています。 クラス一丸となって歌わせるというのは、 指導スタイルとしては一斉授業と同じなのです。 教師の力でひっぱっていくぞー、というものです。 時間がないですから、 一人一人にじっくり付き合っていられません。
この『一人一人に付き合っていられない』という状態が、 私にとってストレスなんだと気づきました。だから、深夜、 人気のない職員室で作家ノートに向き合うのが何と楽しいことか。 こんな気持ちになったのは始めてでした。<略> こういう時間を持ってしまうとライティング・ ワークショップはやめられないなあ、という気分です」
➔ この感覚が一人ひとりに目を向けるカンファランス・ アプローチの醍醐味なんだろうと思います。
しかし、同時に現実は厳しいです。 週末の深夜を使わないと一人ひとりに向き合う時間がないのも現実 です。一クラスの人数の多さ、 そして教師の多忙さも垣間見えます。
またノートによる一人ひとりのやりとりとだけでは、 十分ではないことも、以下からわかります。
「前回、今回と、とにかく全員に近い生徒に声をかける、 ノートを見てまわるということを心がけています。 質問の手が上がるので、 そこでは立ち止まることにはなるのですが、 何回も机間を歩き回ります。
私が今感じているのは、 やはり全体を意識した動きは大切だということです。 大人数のクラスだから全員にカンファレンスするのは無理、 だから数人にしか関われないというスタンスでいると、 関わってもらえない生徒が置き去りにされている感覚をもつのでは ないか。
簡単であっても、全員への目配りをしているということで、 クラス全体の雰囲気が心なしか落ち着くように思います。 教室でかかわれない分をノートチェックでカバーするというのは一 つの方策ですが、やはりface to face の接触の代替にはならないのだ、と思います」
私が今感じているのは、
簡単であっても、全員への目配りをしているということで、
吉沢先生の書きこみを読みながら、思い出したのが、『 ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年) の以下の記述です。
「書き手とのカンファランスがうまくいくと、 大きな充実感が得られます。<略>そこで、 教師は子どもがもっているエネルギーに乗って、 書き手を肯定しながら流れの方向をわずかに修正していきます。 そうなれば、 子どもとのカンファランスは自然なものに思えるでしょう。 [66~67ページ]
吉沢先生の場合、ノートを読むことにおいても、 子どものもっているエネルギーと多様性が原動力になっているから、「 楽しさ」が生まれるのだろうと思います。
そういえば「子どもたちの取り組むトピックの多様性にふれることも原動力の一 部なのです。それに日々接していると、 教師が設定する画一的なトピックがいかに貧弱かを痛感します」とも書かれていました。
そういえば「子どもたちの取り組むトピックの多様性にふれることも原動力の一
「大人数のクラスだから全員にカンファレンスするのは無理」 としないで、自分の立ち位置を変えてみる、すると、そこから、 自分の教室で、できることが見えてくるのでは?という励ましを、 私自身は感じています。
(なお『ライティング・ワークショップ』の本の続き(67~79 ページ)には、従来型の教え方・ 学び方しか体験していないほとんどの教師がカンファランスに違和 感を覚えることと、 違和感を感じる教師が学べるカンファランスのスキルと内容が具体 的に示されています。「聞く」、「読者になる」、「 書き手を理解する」、「子どもの状態に敏感に対応する」、「 うまく書けているところをほめて書き手を育てる」、「 一つのことだけを教える」という項目について、 それぞれに説明されています。また、幼稚園~中学生を3つの年代 に分けて、具体的なカンファランスの内容も説明されています。)
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