「読み書きクラブ」という学び方は、リーディング・ワークショップ実践者の間でよく引用されている著者のひとり、フランク・スミス氏の著書から来ているようです。
例えば、『リーディング・ワークショップ』の「読書家たちがつながる世界」という短いセクションのなかに、以下のような文があります。
『Joining the literacy Club (読み書きクラブをつくろう)』(Heinemann, 1988)などのリテラシー教育に関する著書で知られるフランク・スミスは、すべての子どもたちが「心ゆくまで読み書きを楽しめるようなクラブ」の一員であると感じられるようにしよう、と提唱しています。読み書きは、極めて社会的な側面をもった活動です。私たちの話し方は、自分の接する人たちに似たり、その人に影響されて、服を選んだり考えたりするものです。
スミスは、「『私は誰でしょう?』という質問の答えは、鏡に映った自分の中にあるのではなくて、自分の周囲にいる人たちの中にある」と言っています。それほど、周りの人の影響というものは大きいのです。クラスのみんなが「心ゆくまで読み書きを楽しめるようなクラブ」のメンバーとなれるように、教師がサポートしていくことは極めて大切なことです。(ルーシー・カルキンズ著 『リーディング・ワークショップ』、新評論、2010年、25ページ)
また、この「RWWW便り」で何度も紹介している、中学校レベルの優れた実践者、ナンシー・アトウェル氏も、スミス氏の上記の本のなかで、「子どもたちは読むことを通して、読むことを学ぶ。子どもたちが読むことを学ぶのを促進するための唯一の方法は、読むことを子どもたちに容易なことにすることだ」と書かれていることを引用し、そのあと、次にように続けています。
ここに私は「読むことに招き入れる」ことを加えたいと思います。最初の数日の最大の目標は、すべての生徒が、純粋に自分が楽しめる本をみつけ、その話に浸れるようにするのを助けること。必要なのは多くのよい本、惹きこむようなブックトーク、本を探す時間と読む時間です。(Nancie Atwell著 In the Middle, 3rd ed. 2015年、Heinemann、92ページ)
このように、RWを行う人たちがよく引用しているフランク・スミス氏。つい最近、2012年に、1冊、邦訳がでていることを知りました。『なぜ、学んだものをすぐに忘れるのだろう? ~「学び」と「忘れ」の法則』 大学教育出版会です。
この本自体は、「学びと忘れについての二つの相反する見解の物語」(4ページ)です。最後の章には、「Q & A」があり、「理想の学校とは?」等の問もあって、賛否両論あるとは思いますが、面白いです★。
「読み書きクラブ」については、第2章の4というセクションが「読み書きクラブに加入する」という題になっています。
クラブの特徴として3点、印象に残りましたので、紹介します。
1)クラブに入るために、読み書き能力は要求されない。読むことは、読むことを通してしか学べない、という当たり前のことが土台になっているクラブ。
➔「読み書きクラブに加入するのに、スキルのある読者である必要はないし、書くことに関する知識を持っている必要もない。むしろ、その反対である。読み書きクラブのメンバーになるまでは、読むことや書くことを学ぶことはできない」 (40ページ)
➔ 「読み書きクラブに加入する」というセクションの前に、1年間に1500語学ぶ生徒と8500語を学ぶ生徒がいて、その差異がどこから生まれるのかという研究結果が紹介されています。★★
2.メンバーが手助けをしてくれる。でも、その中で子どもたちは、手助けしてもらうところから、自分で学ぶところに進んでいく。
➔「読み書きクラブに限定して話をすれば、メンバーたちが、あなたが興味を持っているものを読む手助けをし、書きたいことを書く手助けをする」 (42ページ)
➔ 読むことについては、親と子の例が載っていました。最初は子どものために読み聞かせ、それから、子どもと一緒に読む、子どもが自分でページをめくり出すときは、子どもは親を頼りにしていなくて、著者を頼りにするようになっているということです。 (42~43ページ)
3.読み書きクラブのメンバーであるかどうかという意識がもてるかどうかは大きい。
➔ 自分がメンバーでないと思ってしまうと、「一生、読むことや書くことに関しては多くのことを学べないことになる」 (45ページ)
➔ 「それは学習能力がないのではなく、間違ったことを学んだことがあるという個人的な経験または社会文化的歴史に原因がある。<略> 親切な協力者(つまり他の経験あるクラブメンバー)のサポートがなければ、克服は不可能に近い。 (40~41ページ)
***
★二つの相反する見解ですが、一つが「クラシックな学びと忘れの価値観」と呼ばれ、とてもシンプルで、実際に面識のある周りの人から学ぶというもの(5ページ)です。この学び方が、読み書きクラブの土台にあります。もう一つは「学びと忘れのオフィシャル理論」と呼ばれ、学びとは、努力の問題で、反復やテスト等々も重視されています。(6~7ページ)
最後の章にある「Q
& A」の中では、私は「理想の学校とは?」という問の答えに、スミス氏の教育観がよく表れていると思いました。
まず、それぞれの学校がそれぞれの顔を持っているので、唯一の理想像があるわけではない。自由化された学校の本質はコミュニティで、おもしろい活動に取り組むために人々が集まる場所。
また、そのような学校に「存在しないもの」は、意味のない課題、処罰的なテスト、差別、分離、無駄な競争、生徒へのラベル付け、制限的な時間割、教師・生徒に対する公的・私的な屈辱等と書かれています。 (167~168ページ)
★★「読み書きクラブに加入する」というセクションの前に、1年間に1500語学ぶ生徒と8500語を学ぶ生徒がいて、その差異がどこから生まれるのかという研究結果が以下のように紹介されています。
差異を生み出していたのは、リーディング(読み)、つまり読み物にどのくらい触れているかであった。研究者たちは、これは重大な発見であるとして発表した。たくさん読む人は、たくさんの単語を覚える傾向にある。彼らによると、読むために多くの語彙力が必要なわけでもなく、読んでいる間に語彙を教えてくれる人が必要であるわけでもない。読書家になるのに必要なのは、自分が理解することができ、興味を持てる「題材」だ。 (37ページ)
他にも、この研究者たちは、読んでいる間に人間が何を学ぶかに関する素晴らしい研究結果を発表した。すなわち、たくさん読む人は、良い読者になるということを発見したのである。もう一度いっておくが、たくさん読むためには良い読者である必要はないが、もしたくさん読めば読解力が高まる。さらに、たくさんの量を読む人は、読んでいる内容をより理解することができ、文章を書く能力、つづりを正しく覚える能力が高く、学力も高い傾向にある。(38ページ)
他にも、この研究者たちは、読んでいる間に人間が何を学ぶかに関する素晴らしい研究結果を発表した。すなわち、たくさん読む人は、良い読者になるということを発見したのである。もう一度いっておくが、たくさん読むためには良い読者である必要はないが、もしたくさん読めば読解力が高まる。さらに、たくさんの量を読む人は、読んでいる内容をより理解することができ、文章を書く能力、つづりを正しく覚える能力が高く、学力も高い傾向にある。(38ページ)
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