これまで『Reading Essentials(読み方指導の本質)』by Regie Routman の内容については、3回紹介してきました。
今回は、4回目で第5~6章を紹介します。(左の数字はページ数、斜体は筆者のコメントです。)
第5章 教室内の図書コーナー
日本を訪ねる欧米の教育者が一番驚くことの一つが、教室にまったく本を見かけないことです。64ページにも書いてあるように、読めるようになるためには本が不可欠だというのに。(これは、主には小学校の話です。大分前になりますが、新潟県のある公立小学校を訪ねた時に、各教室に段ボール箱に2つぐらいの本が各教室においてありました。全教室でこれだけの量の本を見たのは、私自身初めてでした。でも、いいところ60冊といったところでした。)
67 最低200冊から、いい「クラス図書スペース」には千冊以上!!!
この本の数字には、教師の「読み」に対するこだわりが表れています。単なるクラスの図書コーナーではダメで、傑出したのが必要!! 日本は、基本的に、これなしで読む教育をやろうといういのですから、最初から目標達成を放棄しているようなものと解釈できますか?
アメリカなどの小学校の教室に本が置いてあるのは、全部教師自身が持っている本の場合がほとんどです。★ 一方、オーストラリアの場合は、図書館の機能を充実させようという動きが強いようで、図書館の本を各教室で行われているテーマに沿った学習に応じて、長期間各教室に貸し出すような仕組みをとっているようです。(以上は、いずれも、小学校レベルの話。
中・高レベルでは、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアといずれも図書館を学校の真ん中に配置して、授業ではもちろん、授業以外でも生徒たちがアクセスしやすいように努力しています。申し訳ありませんが、私の情報収集は高校レベルで止まっています。)
80 夏休み中の読書はクリティカル!! ~ 小学校~大学院までを通して休み中に関わらず、ほとんど本を読んだことのない者がこんなところを指摘するのもおかしいのですが(読む時間があったら、運動ばかりしていましたから)・・・、いまはとても大切だと思っています。宿題でもなく、課題図書的なものを読ませて、読書感想文を書かせるのでもない、もっと主体的ないい方法はないものでしょうか??
この章(本)では、残念ながら「読む場所」については、一切触れていません。読む場所(や書く場所)については、日本での実践本の『読書家の時間』に詳しく書いてあります。本の集め方についても!(特に、第2章を参照)
第6章 一人読み(Independent Reading)
そもそも、「一人読み」は日本の読解教育ではテーマにすらなっていないのではないでしょうか? 国語の時間中の「一人読み=ひたすら読むこと」の必要性に、日本の国語関連の本で言及しているのはあるでしょうか?
朝読も含めて、「一人読み=ひたすら読む」を計画/モニターするという発想もありません! それこそが読み手として育てる一番いい方法なのに。日本の読解教育というのは、「読むことはせずに、読むことを教える方法」というきわめておかしな方法を取り続けていることになります。何のため? テストのため!?
そうなると、日本の図書(読書)教育もあやしくなりますね。いったい、日本の「図書/読書教育」は、何のために存在しているのでしょうか?
83の真ん中: 一人読みとあわせて、モデルで示す、(主には解釈/理解の方法を)教える、ガイドする、モニターする、評価する、目標を設定する/計画するがバランスよく(しかも、一斉ではなく個々のニーズに合わせて)行われないと自立した読み手は育てられない! ~ とてもまっとうなことなのですが、これが丸ごと抜けている日本の読むことの教え方!
84の上: 誰もが読む時間を提供されたら、読めるようになるわけではない。自分の読みのレベルに合っていない本や、読んでいる内容が理解できていなかったり、誰も成長の具合をモニターしていなかったりしたら、読めるようにならない子は結構多い。
84の下から8~10行目: 教師がうまく教えることと、生徒がたくさんの量を読んだり書いたりしないと、読めるようにはならない。
85 日本で普及しているSustained Silent
Reading(朝の読書は、これの日本流の解釈)とIndependent Readingがわかりやすく比較している(表を参照)。欧米では、すでにSSRだけでは不十分と思われているにもかかわらず、日本では大手を振ってSSRだけのアプローチが受け入れられ続けている。ある意味では「学び」ということを本気で考えていない証拠!! 多読も含めて?!
86 このページに書いてあることは、85ページの表にまとめてあることを別な形で言ったり、若干補足されたりしているものと捉えられます。 ~ ちなみに、私が『テストだけでは測れない!』(NHK生活人新書)で書いたことは、このページで著者が書いていることを具体的にどうやるかを説明していると言えます。
87 Independent reading こそが生徒たちにとっては一番楽しいこと!! 日本では、国語でこの時間を確保することは考えられていない!!! ということは、楽しく学ぶということを考えていない!?
個別のカンファレンスによって、各生徒の読みのレベルや課題や関心などを把握することの大切さ。
88 「ひたすら読む」の要素をしっかり押さえることの大切さ~表2のチェックリスト
この中で朝読(や図書の時間)が押さえているのはいくつ?? ← これによって、読むことにはほとんど寄与していないことが明らかに! 何のためにしているのか? 静かな=落ち着く時間を持つため。
89 自由に読ませるのではなく、指示を出して特定の読ませ方をするときもある。(この辺は、一つの決まったやり方を繰り返すよりも、臨機応変に教師が生徒にとってベストを考えながらやるのがいい!!)
よりよい読み手=自立した読み手になっていくために、いろいろする(教える)ことが必要。
本以外の文字媒体を扱うことも重要!! (これは、生徒たちにとって読むことが身近に感じられる機会でもあるので、とても大切。)
91 特に年齢が低い場合に効果的なパートナーとの読み
93~97 自分(たち)にぴったりあった本を選択できるようにするためには、たくさんの本が不可欠。
★ ちなみに、私の友人で、自分の教室に(というよりも、隣の空き教室に)自分で買い集めた本を千冊以上並べている小学校の先生がいます。やる気があれば、日本でも不可能ではない、ということです。
なんと言っても、日本において最大の壁は、教科書です。
教科書をカバーすることが、授業であり、最善の方法だと思われていることが。
あの授業スタイルで書くことと読むことが好きになれたら(うまくなれたら)奇跡です。(このことは、すべての教科に言えてしまうのかもしれません。)
安倍さんを中心に教育改革を旗印にしている政治家も、文科省も、この部分にはまったく触れないで、先生方のやる気を削ぐ政策ばかりを出しますから、状況は悪化の一途です。
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