2017年3月3日金曜日

子どもたちこそがワークショップの主役


When Writers Drive the Workshop: Honoring Young Voices and Bold Choices, by Brian Kissei, from Stenhouseという、とても魅力的なタイトルの本を読みました。
表題は、メインタイトルの部分ですが、サブタイトルの「子どもたちの声(考え)と大胆な選択に敬意を表す」というのもいいです。あまりにも、子どもたちの声を聞かず、選択を提供しない授業が横行していますから。

そして、まだまだワークショップも子どもたちや参加者主導にはなっておらず、ファシリテーター役の教師や講師が主役であるものがあまりにも多いからです。★ 
それは、ある意味では、教師や講師がすでに描いたシナリオ通りに事を進めるのがもっとも無難だからです。結果的に、子どもたちや参加者は見事なぐらいに、あらかじめ敷いたレールの上を歩んでくれ、ワークショップも成功裏に終えることができます。
しかし、教師や講師は事前にすべて知っていたことをカバーしただけですから、学べるものは何も(ほとんど)ありません! 一斉指導を、ちょっと違う形で(参加型で)しているのと変わりないと言えます。★
この本は、その根本的な部分を捉えなおさせてくれます。

 「まえがき」の部分からいくつか鍵となる文章を紹介します。

1 昔々(いや、そんな昔ではありません!80年代の前半ですから)、ドナルド・グレイヴスという男が、子どもたちの言うことに耳を傾けることが大切だ、と言いました。他にも、(作品ではなく)書き手を教えよ。本物の作家(やノンフィクション・ライターやジャーナリスト)がしているようにやってみよ、と言いました。そうすれば、課題を与えたり、既存のカリキュラムをカバーしたり、年間にやれることをはるかに越えて、教室の書き手たちは育ちます、とも。
 そしてそれが、私たちがまさにしたことです。北米ではライティング・ワークショップが国語の時間の主要な位置を占めるようになりました。(1ページ)

2 子どもたちが言うことに耳を傾けられれば、私は教師として成長できます。
 以下は、私が学んだ最も大きな教訓です。「子どもたちに教えるには、子どもたちを知っている必要があります。子どもたちを知るには、子どもたちが自分を開示しなければなりません。開示するには、子どもたちは安心・安全と思えなければなりません。安心・安全と思えるには、主体性をもっている必要があります。主体性をもつには、子どもたちは選択をもっている必要があります。子どもたちが自分の書く題材を決めるとき、子どもたちの人生(生き様?暮らし?)が作家ノートの上に姿を現します。私たち教師は、子どもたちの考えや大胆な選択によって学び続けることができるのです。」(6ページ)

3 教師になりたての頃は、いま現在、書くことを教えるのが嫌いな教師と同じように、私も書くお題を出していました。子どもたちの言うことに耳を傾けるようなことはしていませんでした。カンファランス?(なんですか、それ?) その時間は、私の机の上に山のように積まれた生徒の作品に目を通し、成績を付ける時だと思っていました。私の作品を見る視点は、言語事項からの観点だけで、子どもたちが何を言わんとしていたのかには興味が向きませんでした。私は、子どもたちの作品がほとんど同じでように見えたときに、うれしく思っていたぐらいです。私は、個々人が表現することの大切さではなくて、画一化こそを目標に設定していました。私の指導案は見事なぐらいに事前に決まっていました。それは、指導書からそのまま写したようなものでした。何を、いつ、どのように教えたらいいかが決まっていました。目の前にいる子どもたちのニーズなどはおかまいなしに。私は、このやり方を数年続けました。ひどい教師だったといまでは後悔しています。いまだにこのひどい教え方は、私の心に重くのしかかっています。(6~7ページ)

4 カンファランスで子どもたちと話すことを通して、子どもたちは私たちに教え続けてくれるのです・・・・多くの教師は、ライティング・ワークショップ(状況は、リーディング・ワークショップも同じです! そして国語以外の他の教科でも!)のこの点に最もためらいがちです。それにはいくつかの理由があります:自分が知らないことをさらけ出してしまう。何を話していいのか定かでない。クラスの中にたくさんの子どもたちがいるのに、一人の子に時間を割いてしまっていいのかという悩み、などなど。しかしながら、私たちが子どもの話すことに一心に耳を傾け、書いていることについて質問をし、書き手としての子どもについて学ぶとき、私たちは書き手が自分自身で振り返るということを助ける、とても重要なことをしているのです。(8ページ)

要するに、教師が学び続けることこそが、子どもたちが学べる条件なのです。
 間違っても、教師ががんばって教え続けることではありません!

 以上で紹介した内容はすべて、驚くぐらいに『好奇心のパワー』の内容と共鳴しています。
今回紹介したWhen Writers Drive the Workshop: Honoring Young Voices and Bold Choices(「子どもたちがワークショップの主役を担う」)は、まだ英語で出版されたばかりです。日本語で読まれたい方は、いまのところは『好奇心のパワー』でがまんしてください。

★ この辺は、ファシリテーションにつきまとう乗り越えがたい課題であり続けます。ファシリテーション型のワークショップでファシリテーターが主役でなくなっていたケースをご存知でしたら、ぜひ教えてください。
  そして当然、この課題はアクティブ・ラーニングにもつきまといます。
  http://projectbetterschool.blogspot.jp/2015/03/blog-post.html および『「学び」で組織は成長する』で紹介されている22の方法の20番目の「ワークショップ」の項を参照ください。


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