日本の教育界では、この学習する際にとても大切な概念であるエンゲージメント(Engagement)をなんといっているのでしょうか?
(少なくとも、国語では聞いたことがありません。読むこと・書くことを最初から「苦役」と捉えているからでしょうか?)
日本のビジネス界は、結構切実にこの問題を捉えています。生産の質と量の両方を左右することを知っているからです。教育=授業も同じなのですが、日本の教育界は極めて鈍感です。★ (エンゲージメント/Engagementの意味や中身については、http://projectbetterschool.blogspot.jp/2015/03/blog-post_15.html を参照してください。)
読み・書きの視点で捉えた記事を見つけたので、紹介します。
高いエンゲージメントを示している子の特徴は・・・
「リーディング・ワークショップに、すでに読みたい本をもってくる子。その子にとっては、ミニ・レッスンも邪魔な存在と思ってしまうのですが、それでも、自分が読んでいる本にどう活かせるかという視点で聞ける。ミニ・レッスンが終わるなり、自分のいつもの「読み場所」に行って、早速夢中で読み始める。周りで何が起こっていようが関係なく集中して。読む時間が終わると、読んでいることについて紹介したくて仕方ない。自分の暮らしとの関連でも捉えている。読んでいることを、書くことにも使っている。すでに、次に読む本もリストアップしている」
教師たちにとっては、クラスがこういう子たちばかりだと楽で、たのしいです。
でも、現実には以下の3種類の子たちがいます。
①engaged reader/writer/learner ~ 上で紹介したような、興味・関心をもって自分で主体的に読み・書き・学べる子。それをすることが本当に好きな子たち。(そういう子たちの特徴・特性をしっかり把握して、一人でも多くの子たちがそうなれるように助けるのが教師の役割)
②教師へのお付き合いで集中して読み・書き・学んでいる子たち ~ 興味・関心があるから、好きだから、読んだり・書いたり・学んだりしているのではなく、その時間だから(仕方なく)取り組んでいる子たち。多くの子たちはこの分類に含まれる。①の読み手・書き手・学び手になってもらう候補者たち。
③disengaged reader/writer/learner ~ 教師が期待していることをしてくれない子たち。本を探し続ける子。自分の本が見つけられない子。本は手にしていても、ほんとうに読んでいるとは思えない子。いろいろなことに時間を掛けすぎて、本来すべきこと(集中して読みふける)ができない子たち。目立つので、教師が引っ張られてしまうのは、少数のこの分類の子たち。
◆ 子どもたちの熱中度/取り組み度を上げるには ~ ここが一番参考になる点です
・ 読むことを好きになってもらう。好きな本に出会える場やきっかけをたくさんつくる。
・ 読む時間を確保する。読んでいるものについて、話せる(話し合える)時間も含めて。
・ 選択を提供する。それもできるだけ多様な。家にも持っていける本の。
・ 他の教科や行事と関連づけてテーマを設定して本を集め、子どもたちの興味をひけるようにする。お気に入りの作家の本をたくさん集めるのも効果的。
・ 集中して読む(書く、学べる)ようになるには、いい関係が大切。子どもに関する情報を読む(書く、学ぶ)際に使いこなせる。教師と子どもの関係だけでなく、子ども同士のいい関係も大切。(要するには、読み手・書き手・学び手のコミュニティづくりが大切、ということ。)
・ 好奇心/知りたいこと/調べたいことを常に集め続ける。それが読む(書く、学ぶ)引き金になるから。
・ 主役を教師から子どもたちへ転換する。これまで目標を設定していたのは教師。それを一人ひとりの子どもにしてもらう。それでこそカンファランスやミニ・レッスンが効果的なものになる。目標設定こそが自立した読み手(書き手/学び手)への大切な鍵。
出典: A Closer Look at Engagement, by Cathy Mere
以上は、読むこと(書くこと)を中心に書いてきましたが、このエンゲージメントは国語だけでなく、すべての教科や学習活動・行事でも言えることです。それほど大切なことなわけです。
★ 日本では学力テストの煽りを受けて、教育委員会などは点数を上げるために教師に努力するように迫っているところも少なくありません。しかし、このエンゲージメント(Engagement)に言及しているところは聞いたことがありません。これこそが生涯にわたって学び続ける際に必要なのに。テストのための勉強は、苦役をこらえるスタミナのありなしと、短期記憶の得意・不得意に左右されるだけだというのに。