2014年8月29日金曜日

「テキスト・セット」をつくる


 「教科書だけを読んでいれば、読む楽しさ・学ぶ楽しさに浸る経験ができて、優れた読み手・学び手としてどんどん成長していける」と思っている先生は少ないと思います。

 

 このことは、国語のみならず、社会や理科などの他教科においても、あてはまるのではないかと思います。

 

今、読んでいる Do I Really Have to Teach Reading?★という本の中に、歴史の教科書の中身が多すぎて、かつ子どもたちには難しすぎるという状態が描かれ、その解決法の一つとして、「テキスト・セット」を作ることが書かれています。

 

RWが行われている教室では、おそらく「ロイス・ローリーの書いた本」、「アンソニー・ブラウンの書いた絵本」等の作家別で本を集めたカゴやフォルダー、「詩」などのジャンル別で本を集めたカゴやフォルダー等々、本の配置にも工夫がなされていると思います。

 

このように、一つの作家やテーマで本を集めるというやり方を、他の教科にも応用すると相乗効果が期待できるのではないでしょうか。例えば歴史だと、「公民権運動」等のテーマで、本を1か所に集めて「テキスト・セット」をつくります。

 

上記の本 Do I Really Have to Teach Reading?★ では、「テキスト・セット」をつくるときに、いろいろなレベルの読み物を準備することが大切だと書かれています。いろいろな難易度の読み物があることで、教科書が難しすぎる子どもも読んでいるフリをしないですみますし、また、教科書1冊からだけ学ぶよりも、はるかに学びの幅も知識の幅も広がります。

 

815日のRWWW便りに「RWWWの時間数や、他の様々な教科の時数や内容を組み入れて、一つのユニットを形成すれば、子どもたちの学習にも余裕ができますし、子どもたちは一つの内容に浸ることができるので、一人一人の探求も深まっていきます」と書かれていましたし、822日のRWWW便りでは、読書家の時間の他教科への応用が書かれています。RWの考え方を他教科に応用しつつ、タイアップも考えていくと、時間のねん出もしやすくなるのかもしれません。

 

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★ 「テキスト・セット」については、Cris Tovani著、Stenhouse, 2004年の Do I Really Have to Teach Reading? の第4章に説明されています。

2014年8月22日金曜日

『読書家の時間』の他教科への応用


 夏休みの間に、生活科の視点から読んでみました。
 最初の2章だけでも、以下のようにたくさんのアイディアが出ました。(数字は、ページ数)

1 読む力  生活する力/生きる力
  読み手  生活者

2 生活科関連の絵本を使ったブッククラブ

4 生活者ノート

5 本に夢中になる代わりに、生活科では何に夢中になってほしいかな?

6~7 教師は生活者のモデルを示す!!

10 早速、夏の間に生活者図書コーナーをつくる!! 遊びの本も含めて

11 教師の生活者体験大公開   15も同じ

12 20分間の読む代わりに、何をしますか?

13 生活者ノートを書く

14 生活者関連の本探し/情報探し = 図書館探検

16 長期休暇中に家でやれること?

17 生活者として実践していること/したいこと

18 2人で生活者を楽しもう!!

19 生活科用のアンケートは作れますか?

27 生活科タイムのマナーづくり

34 生活科で図書コーナーづくり

46 保護者や地域の大人や学校のスタッフに生活者のモデルを話してもらう

 第3章以降も、

・ ミニ・レッスン、カンファランス、共有の時間は、とても魅力的!!
       子どもたちに「選択」をしてもらうことの大切さ。
       ガイド読みとブッククラブ・読書パートナーも、応用できそう!
       成果物として、ポスターやポップづくりも。
       第8章では、評価観が変わりました!!
       カンファレンス・ノートはそのまま活かせます。
       第9章は、年間計画(ゴールを意識すること)の大切さを改めて認識させてくれたし、理想を大切に軽い気持ちで作ってみることからスタートすることも。
       この方法で、「主体的に学ぶ」と「その子らしさ」が実現できる気がする。
       そして、生活科と国語を合科で取り組むことの価値にも気づけた!!

など、収穫は予想以上でした。

ぜひ、社会科、算数・数学、理科、音楽、家庭科、体育、図工、道徳など、他の教科でもやってみてください。学校経営の視点から読んでも、得るもの満載だと思います(それは、すでに『ライティング・ワークショップ』で証明済みですから)。

2014年8月15日金曜日

リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップをつなげる


 RWとWWにはとても価値があります。なぜなら、子どもたちを「読む」や「書く」のどちらかに縛り付けず、普段のRWやWW以上に、子どもたちの学習を自分自身のものにすることができるからです。

 4年生の10月に「私の読書」というユニットを組みました。このユニットはRWとWWの横断的なユニットで(おそらく、本来の意味でのユニットとは、RWやWWに限らずどの教科でも横断的に行うということを意味するのだと思います)、自分の読書ノートを読み返したりや好きな本をもう一度開いてみたりして、自分の読書を振り返り、それを文章にしてまとめるという流れです。子どもたちは、ユニットの期限の中で必ず書いたものを提出しなければなりませんが、一日ごとにやることが決まっていたり、書かなければならないことが決まっていたりするわけではなく、子どもたちは主体的に学習を選択して、ひとつの目的に向かって一人一人が学んでいきました。

 実際に書かれたものは、好きな本についての感想だったり、自分の読み進めていったお気に入りのストーリーの主人公を紹介する文章だったりしましたが、中には「私の読書の方法を紹介します」という内容で、自分の読書習慣を振り返って書いたり、また、「読書はどうしてするの?」という問いに答える内容だったり、はたまた、読書についての詩を書いた子どもまでいて、内容は多種多様でした。

 RWとWWは本来分けるものではないのかもしれません。「読む」と「書く」は表裏一体で、より大切に読むために読書ノートを書いたり、よい内容を書くために本を読むことも多々あるからです。「読む」と「書く」は、動作としては分けることができますが、息を吸って吐くが呼吸という動作であることと同様に、密接に関連し合い、分けることなど無意味なことであるような気がします。

 RWとWWの時間数や、他の様々な教科の時数や内容を組み入れて、一つのユニットを形成すれば、子どもたちの学習にも余裕ができますし、子どもたちは一つの内容に浸ることができるので、一人一人の探求も深まっていきます。

 これから夏休みが明けたら、少しずつ秋の学習へと進んでいきます。RWやWW、その他の教科などでユニットを組んで、子どもたちがどっぷり没頭できる学習を計画してみてはいかがでしょうか。



2014年8月8日金曜日

WWのカンファランスを成功させるためのチェックリスト



 以下のリストは、ドナルド・グレイヴスが1983年に最初のライティング・ワークショップの本を出して以来、その後、ルーシー・カルキンズ★やナンシー・アットウェルたちの先駆者によって磨きがかけられた、30年以上の蓄積を整理する形で、まとめられたものです。

・子どもに語ってもらう。 教師の役割は聞くこと/尋ねること。
・子どもと子どもが書いている作品のバックグランドを知る。
・伝えたい何かを子どもはもっているという前提に立つ。
・待つこと。沈黙に耐えること。 時間さえ提供すれば、大切なことを言ってくれる!
・対象によっては、教師がやり取りの大切な部分を書いてあげる。
・子どもが自分では見つけられないところを提案する。
・一人ひとりとのやり取りはできるだけ短く。(でも、短すぎない)
・次のアクションを確認して別れる。  (やりっぱなしにしない)

 これらを「原則」として出されてしまうと、大変だと思ってしまいますが、チェックリストとして捉え、自分がまだできていない項目の一つに焦点を当て、自分のものにしたら、次に移るようにしていけば、それほど大変ではありません。
 なお、これらの項目はすべて、RWにも使えるものばかりです。★★

   (出典:Writing Conference Principles   by Brenda Power and Ruth Shagoury


★ 『リーディング・ワークショップ』(新評論)の著者のカルキンズは、80年代から90年代の初頭にかけてライティング・ワークショップを中心に実践・研究・普及していました。

★★ 他の教科でも?? それには、授業観の大幅の転換が求められますが。もちろん、国語ですらですが。
そういえば、管理職や指導主事と教師とのやり取り(カンファランス)にも、ほとんど使えてしまいます。そういうやり取りができていないことが、授業も学校も変わらない/変われない大きな要因なのではないでしょうか?

2014年8月1日金曜日

『読書家の時間』を読んで (2)


「先生、俺毎日が忙しいんですよ!」
「へぇー、どうして?」
「塾や他の習い事がいっぱいあるんです。」
「そっか、じゃあ作家の時間みたいにじっくり自分と向き合える時間は貴重なんじゃない?」
「本当にそう思います!」

教壇に立って5年目になりました。今年度、はじめて6年生担任になり、作家の時間に取り組んでいます。
冒頭の言葉のやり取りは、自分とクラスの子供との会話です。このように、教師と同じぐらい忙しい日々を送っている子供たちにとって、ほんの少しでも安らぎを与えられるのが作家の時間でした。そして、この実践に手応えを感じていたころに、新評論から新たに出版され出会えた本が「読書家の時間」です。もうすでに作家の時間の素晴らしさを実感していたので、この「読書家の時間」もきっと素晴らしい実践なのだろうと期待をこめて読み始めました。

まず、印象に残ったことは、「学習指導要領との比較」がとてもわかりやすいというところです。どんなによい実践でもあくまで学習指導要領に基づいた授業を計画するのが我々の役目です。また、研究授業で実際にこの読書家の時間を実践しようと思うならば、ますます学習指導要領との関連が大事になります。その点において本著は、管理職、同僚、保護者などに、実践に関する説明責任がしやすい構成になっていると思います。

次に、これは同じ新評論出版の「作家の時間」でも感じたことなのですが、「これからこの実践をやろう!でも、はじめに何をすればいいのだろう?」という疑問にしっかり答えられる内容になっているということです。具体的には「第1 最初の10時間」「第2 読書環境をつくろう」を読むだけで、だいたいの実践の流れが見えてきます。もちらん、次の章からのミニレッスンやカンファレンスの説明も大切になるのですが、まずは「この実践は自分のクラスでもできそうだ!」という意欲とイメージが、最初の数ページでとても尽きやすいと思いました。

さらに、「第10 教師の変容」について触れたいと思います。この章には、なぜ読書家の時間を実践しようと思ったのか、ある教師のインタビューがあります。読書家の時間の目標は「自立した読み手」を育てることです。それにはしっかりと教師自身がこの目標を意識しなければなりません。かつてこれまでも読書を好きにさせよう、と様々な実践がありました。しかし、それらはあくまでも「教師自身が望んでいる目標」に対して子供たちを導くという実践が多かった気がします。子供たちはもっと多様です。それぞれの読む力もペースも違います。そういった子供たちの前提をしっかり教師が把握することが読書家の時間において大切になります。つまり、「自立した読み手」を育てるために教師はどのような「考え方」を持たなければならないのか、この章は読書家の時間を成功させる根幹の部分が書かれています。

以上、読書家の時間を読んだ感想を述べましたが、最後に伝えたいことがあります。それは、作家の時間なり、ブッククラブなりを教室で実践する前に、「自分自身が体験してみる」ことをぜひおすすめします。自分が体験し、その面白さがわかれば、子供たちに対する行動や言葉掛けが変わっていき、より「自立した読み手や書き手」が育っていくのではないかと感じています。

茅ヶ崎市立梅田小学校 石井康友


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「読書家の時間」読み終えました。
プロローグは本当に衝撃でした。
この本に携わった先生方が子ども達にどのように向き合ってきたのかということが伝わってきたからです。
 P7 依然の私は、誰かが大切だと言ったことを、
   みんなにうまく教えることができる教師が良い教師だ
   と思っていました。
   本当は、それを大切だと思っていないのに、
   大切だと思っているふりをしていたことに気付かずに。

10章「教師の変容」でインタビューの中から読み取れるように、この道を歩みながら先生達は自分に向き合い、自ら道作りを続けていったのですから。
 P195 「一斉授業に戻ることで、一気に気が
     楽になりました。指導所を見れば、
     どのような流れで授業を行っていけばよいか
     が書かれてありますし、
     子ども達の活動を指示することによって、
     とりあえずは自分の望むようなことを
     子ども達は始めます~」
このくだりは、やはり、そう思うんだなぁ。本をまとめていくプロジェクトに入っている方ですらそうなのだなぁと。そうであれば、方法を押し付けられて取り組んでいる先生たちは動かないだろうと。

Sさん


『読書家の時間』を読んで

副題に「自立した読み手を育てる教え方・学び方」とありますが、子どもと共に、自立した教師を育てる時間であることに気付かされました。
伴走する教師の姿と、そのプロセスで活かされるアイディアとツールが本の随所に散りばめられていますが、圧巻は第10章の‘教師の変容’でした。
制度上の時間ではなく‘生きられる時間’の中で、子どもも教師も呪縛から解かれていくーーーー教育の原点がそこに在るように思えました。
間違いなく学生にも薦められる一冊です。

聖心女子大学 永田佳之