作家の時間(ライティング・ワークショップ)を実践している方のほとんどは、「作家の椅子」をされていると思います。とても効果的な方法ですから。
これを他に使えると思ったことはありませんか? もちろん、読書家の時間(リーディング・ワークショップ)で「読書家の椅子」や「詩人の椅子」としては使えますが、社会や理科、ひょっとしたら算数・数学等でも使えます。
その名も、「質問殺到の椅子」というのはどうでしょうか?
ある子がその人物になりきって、質問を受け、答えるのです。たとえば社会なら、聖徳太子、源頼朝、足利義満、織田信長、徳川家康、安倍晋三(?)などなど★。
答える方は、もちろん「何でも知っていないと、答えられません」し、質問する方も、「ある程度知っていないと、質問できません」。特に、椅子に座った人が答えるにこまるような質問をするためには。
5年生の国や、4~3年生の地域について学ぶ際には、その道の専門家/担当者になりきる形で使えるでしょう。
ちなみに、これはそもそも1年生での実践例ですから、もちろん1~2年生の生活科でもできます。
理科の場合は、それ(虫、魚、花、等々)が専門の科学者★★であったり、算数・数学の場合は、ある問題を解いた数学者(?)として。
ぜひ、試してみてください。
従来の総合的な学習などでされている「発表」よりも、発表するのと聞く両者にとってはるかに効果的であることは間違いありません。
なお、その人になりきった子は、「わかりません」とは言えないので、何かをでっち上げて質問者およびクラスが納得できるような回答を言う練習にもなります。教師やクラスメイトがその答えに納得しない場合の対処法も学べるとてもいい機会を提供してくれるのではないでしょうか? 世の中、すべての答えがあるわけではありませんから。
テーマが同じであれば(たとえば、国づくり)、6人の子が、聖徳太子、源頼朝、足利義満、織田信長、徳川家康、安倍晋三の役をやり、残りの子たちが変わりばんこに質問をすることも可能。校長や教頭(や保護者)にも参加してもらうという方法も!!
もちろん、有名な人だけでなく、「ごみ収集のおじさん」「リサイクルセンターのおばさん」「東電の職員」「水道局の担当者」「自動車工場の労働者(か工場長)」「農家のおじさん」・・・などなどになってもらうことも大切です。それなら、実際にインタビューもできますし。
自分がそのことについて書いたりする場合は、特に「質問殺到の椅子」が威力を発揮すると思います。読み手が知りたいことのほとんどが、事前にわかってしまいますから。
参考:Many Texts, Many Voices by Penny Silvers and Mary C. Shorey, 51ページ
★ もちろん、この名前を挙げていけば切りがありません。いま大河ドラマで主人公の黒田官兵衛でもいいでしょうし、高山右近でもいいですし、名もない足軽ならもっといいでしょう(資料を集めるのは困難ですが!)。さらには、『ハーバード 白熱日本史教室』流だとLady Samuraiのねね(豊臣秀吉夫人)、細川ガラシャ(明智光秀の三女で細川忠興の正室)、お江(母親のお市は織田信長の妹、姉は淀君、二大将軍徳川秀忠と再婚、家光の母)たちでもおもしろいと思います!
★★ 科学者よりも、当事者の方がおもしろいかもしれません。たとえば、光合成、ゴキブリ、寒冷前線やエル・ニーニョ、心臓などです。
なお、「作家の椅子」の他の応用法を実践されている方、考えた方、ぜひ教えてください。
フェイスブックとのダブルポストです。
返信削除吉田さんのおっしゃっている「質問殺到のいす」は「ホットシーティング」といい、ドラマ教育での基本的な技法と良くにていると思います。ホットシーティングはシェアの時間だけではなく、様々な場面で使われるのですが、質問を受ける人がその前におかれたいすにすわり、そのものになりきります。
そもそも、演劇のレッスンでは、配役の人物になりきるためのレッスンで、その役柄になりきって、様々なことに応える中で人物像をふくらませるわけです。それを教育にいかすと、吉田さんがおっしゃるように、誰かになりきったり、専門家になって質問に答えます。専門家になりきって、こたえる活動は、さらに発展させると専門家のマント゛mantle of the piece"という技法となります。質問を受ける側はもちろん、むしろ、質問をする側の、質問力が高まります。
読書でも、本を読んだ後、本の登場人物になって答えるということができ、先日、我々の読書クラブでは、「飛ぶ教室」の登場人物になって、みんなが質問しあうというのをやりました。(甲斐崎さんも参加して、大盛り上がりでした。)
ホットシーティングの他教科への応用は私たちの研究グループ「獲得型教育研究会」の本「学びを変えるドラマの手法」(旬報社刊)で実践例を紹介しています。