2012年8月31日金曜日

選書のミニ・レッスン


The Daily Fiveという本で、ぴったりのサイズやスキー靴など用途別の靴を使って、選書のポイントを教えるミニ・レッスンを見つけ、それを自分のクラスで早速試してみました。
I PICK」(自分にぴったりの本を選ぶ)の頭文字を使って子どもたちに覚えやすくしているのがうまいな~、と思ったのですが、それが日本語で伝わらないのが残念ではあります。

I choose a book.
は本を選ぶ。
Purpose-hy do I want to read it?
目的 ~ 何のためにそれを読みたいのでしょうか。
Interest-Does it interest me?
興味・関心はありますか。
Comprehend-Am I understanding what I am reading?
読んでいることを理解できますか。
Know-I know most of the words.
ほとんどの言葉を知っている




子どもたちには、KP法(紙芝居プレゼンテーション法)を使って黒板に紙を貼りながら説明しました。KP法を使うのは、パワーポイントなどのプレゼンテーション用のソフトのようにスピードがあって、板書のように情報が黒板に残るからです。

教えるためにいろいろな靴を用意します。サイズがぴったりの靴や理解ができないという意味でぶかぶかの大きな靴などサイズの合わない靴も用意します。

 まず頭文字のIは「I choose a book.」のIだと教えてから、頭文字がPの目的のことを話します。The Daily Fiveでは、バックに用意したゴルフシューズ、テニスシューズ、スキー靴、お父さんのとても大きい靴など、様々な靴を置きます。私の場合は、家にあったトレッキングシューズと学校の貸し出し用の小さな上履きを用意しました。子どもたちには靴を示しながら、「靴には目的があるんだよ。自分のやりたいことに合わせてぴったりの靴を選ぶよ。」と話します。「例えば、ゴルフをするときにスキー靴は選ばないよね。このトレッキングシューズは福島県の小野川湖での野外活動のために買ったものですよ。」と続けて、道なき急な山を登ったり崖を下ったりすることなどその野外活動で遭遇する状況についても話しました。さらに「このちっちゃい上履きで行ったら大変なことになるよね。ぴったりの靴を選ばないとね。」という話をして、野外活動ができるようにトレッキングシューズの靴底が滑り難くなっていることや、雨が降っても問題がないように完全防水加工になっていることなども話しました。そして、「本を選ぶ時にも『あるトピックについて知りたい』とか『ただ楽しみたい』とか本を読む目的を私たちはもっているね。例えば『虫について知りたい』という目的をもっているなら、虫についてのノンフィクションの本や虫の図鑑などを選ぶといいよね」などと本を選ぶ時の話に繋げます。
 次に頭文字がIの興味・関心の話に移っていきます。用意したバックの中にゴルフシューズがないことを話して、「なぜなら私はゴルフに興味がないからです。でもサッカーは大好きだから…」など、目的の時と同じように本を選ぶ時も同じだねと繋げて話をします。
 これまでと同じように、頭文字のCとKについても靴を選ぶことから本を選ぶことに繋げて話をします。サイズが大きすぎるのは本を読む時に難しすぎる、サイズが小さすぎるのは本を読む時に簡単すぎることを表しています。著者は、理解できる言葉、知っている言葉を分けて教えています。
The  Daily Fiveを読むと、ページにある「ほとんどの言葉を知っている」べきだとありますが、The Daily Five他のところを読むと、「全部の言葉を知っているべきだ」という違う考えもあるみたいです。しかし、実際には少しでもチャレンジする本を選ぶ時に知らない言葉があるかもしれません。『インクルーシブ教育の実践ーすべての子どものニーズにこたえる学級づくり』という本には一つのページに二つ程度までなら分からない言葉があっても大丈夫だとあります。私は、そのことを参考にして、本を選ぶ時に、一つのページに二つ程度までなら理解できない言葉や知らない言葉があっても大丈夫だよと子どもたちには教えています。
 
 このミニ・レッスンと合わせて、子どもたちの興味・関心や目的・目標などが明らかになるアンケートから、ブックトークやカンファランス、図書コーナーの配置などに繋げていくと子どもたちの選書をより助けられると思います。

出典:
Gail Boushey Joan Moser, The Daily Five: Fostering Literacy Independence in the Elementary Grades, Stenhouse Publishers, 2006, p .30
コンスタンス・マクグラス ()、川合紀宗 (翻訳)、『インクルーシブ教育の実践ーすべての子どものニーズにこたえる学級づくり』、2010年 p.76

2012年8月24日金曜日

ブック・プロジェクトと跳び箱


 今週のRWWW便りのテーマは「ブック・プロジェクト」です。「ブック・プロジェクト」とは、2012年7月13日2012年4月27日のRWWWに登場した「リーディング・プロジェクト」と同じものです。

 「同じものなのに、二つの言い方?」と思われるかもしれませんが、今回以降のRWWW便りでは「ブック・プロジェクト」という言葉を使おうと思います。

 というのは「子どもたちにとっても、先生たちにとっても、リーディング・プロジェクトよりもブック・プロジェクトという言葉のほうが、本にまつわるプロジェクトだとイメージしやすい」とご助言いただいたからです。

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 共にRWを学ぶ仲間の教室には、かなり難しい資格についての本を一生懸命読んでいる子がいるそうです。その話を聞いたときに、「選択」のあるRWの学び方を活かして、自分のブック・プロジェクトを見つけた子だと思いました。

 かなり前のことですが、私の教室での最後の時間の読書記録を見ると、一人の学習者は、アンソニー・ブラウンの絵本ばかり何冊も読んでいました。(この風景は、どこの教室でも、よくあることだと思います)。「今日はアンソニー・ブラウンをよく読んだのね」と声をかけると、「だって今日が読める最後の日だから」という返事でした。もし、ブック・プロジェクトを教えていれば、もしかすると今後につなげることができたかもしれません。

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 さて、私にとってブック・プロジェクトは跳び箱のイメージがあります。

 理由は二つあります。

(1)遠くから見ると高くて難しく見える。
(2)近づていって実際に跳んでみると、踏切板もあるので、超えられることが多い(もちろん、跳び箱の上に座ってしまったり、着地に失敗することもありますが、でも踏切板を体験するだけでも、踏切板で「ジャンプ」できます)。

 (1)ですが、始めようと考えたり、動き出した直後は難しいように見えます。

 2012年7月13日のRWWW便りに書いたように、自分にとっての好き嫌いは、ブック・プロジェクトの成否を分けると言ってもいいと思います。自分の好きなこと、興味の持てることに取り組めないと、「課題として出された調べ学習」になってしまいます。これだと、今後も続けてやってみたいというものにはなりにくいでしょう。
 
 ところが、「好きなことや興味の持てることに、うまく取り組めるようにする」ということ自体が簡単ではありません。私も模索中で、まだうまくできていない部分です。好きなプロジェクトがなかなか見つけられずに、「興味のないことはできない」と率直に言ってくれたおかげで、時間をかけたカンファランスの末、ようやく「妥協点」(それでも妥協点です)のみつかった学習者もいます。見つけられずに、「課題としての調べ学習」的になってしまうときもあります。

 しかも、始めようとすると、今まで、教室の図書コーナーに満足していたように見える学習者が、「○○という作家の作品の中でも、この本と同じタイプの本はどれですか?」、「このテーマと同じ本をあと3~4冊読みたいけど、ないのですか?」等々、教師の答えられない質問をしたり、教室の図書コーナーでは対応できないリクエストが増えます。

 こうなると、ブック・プロジェクトという跳び箱を跳ぶのはたいへんだと思ってしまいます。

 (2)しかし、実際に飛ぶ段になると、踏切板があります。踏切板は、跳び箱に向かう学習者も教師も、ジャンプさせてくれるので、成長できます。

 教師にとっては、学習者のブック・プロジェクトへの思いを聞き、質問を一緒に考えたりすることで、教師自身も読み手として、全く新しい分野に目が拓かれ、成長できます。

 学習者にとっては、もちろん全員ではありませんが、教師の考えていなかったようなトピックを選んだり、教師を待たずに自分で動いて情報を得たりし始めます。(教師の予想もしていないところで調べて情報をもってきたり、調べた情報にびっくりして確認にくることもあります)。教室の図書コーナーから、教室の外の世界にある本やリソースに目が拓かれるきっかけになり、教室の外の世界にジャンプできることもあります。

 この秋、『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ、新評論、2007年)12章(208ー215ページ)などを参考に、ブック・プロジェクトを考えてみるのはいかがでしょうか。210ページには、ブック・プロジェクトを見つけるための投げかけも例も載っています。









2012年8月17日金曜日

カゴを使った図書コーナー


 「自分にぴったりの本の選ぶことを子どもたちに教えるのに最もよい方法は、図書コーナーをよく考えて組織することである。」 
フランキー・スィベーソン達のStill Learning to Read(まだ読むのを学んでいる)p12にこうありました。
 
 今回は、本棚もすでに使っているのですが、ミニ・レッスンなどで教えることとの関連も含めて、カゴを使った図書コーナーのあり方をご紹介します。


 図書コーナーの目的の一つは選書を助けることです。だから本のカゴへの分類の仕方は、選書をどんなふうに助けたいかによって決まります。
例えば小学校3年生でシリーズの本を選べるようになることを目的とした場合は、シリーズ別にカゴを用意して本を整理します。フランキー達が小学校3年生を教える時には、シリーズ別にカゴを分類することに専念するそうです。なぜなら、小学校3年生の子たちはシリーズに興味をよくもつようになるからだそうです。
また作家で本を選ぶことを教えたいという目的の場合は、作家別にカゴを用意します。

他にもフランキー達は次のような項目で本をカゴで分類・整理しています。

ノンフィクションのトピック ~ 「ペット」「冬の動物」など。
新しく教室に到着した本
一緒に読んだ本 ~ ミニ・レッスンなどで扱った本のカゴ。
クラスメイトからの一押し ~ 自分が読んだ本の中から、クラスのほかの友だちにも読んでほしい、楽しんでほしいと思った本を入れるカゴ。
読み聞かせの本とその関連本 ~ 読み聞かせした本に関連する本を入れるカゴ。例えばラヴィのシリーズの本を読み聞かせすると、そのシリーズの他の本を入れたり、同じ作家ラヴィのそのシリーズとは関係ない本も入れたりするそうです。だから新しい本のカゴと一緒で一年通してカゴの中身は変わります。
人気の登場人物 ~ 人気の登場人物、キャラクター別のカゴ。
手紙/日記
○○が好きな君へ ~ もしあなたが○○を好きなら、◇◇が好きかもしれないという使い方をします。例えば「もしあなたがハリーポッターを好きなら」というラベルにカゴを分類したら、ハリーポッターを好きそうな人が、好みそうな他のファンタジーの本をカゴに入れます
賞に選ばれた本 ~ ニューベリー賞など、賞をとった本を入れるカゴ。
新聞・雑誌
友達と一緒に読もう ~ ペア読書など友だちと読めるように同じタイトルの本を複数用意するカゴ。

ジェニファー・アレンのBecoming a Literacy Leaderを読むと、書き出しやタイトルなど作家の技でもメンターテキストをカゴに入れて本を分類しています。

今年度、私は小学校3年生の担任をしています。
次に、カゴを使って図書コーナーの一部を組織してみたのをご紹介します。




シリーズの選書を教えたかったのでシリーズ別のカゴを作ってみました。他にも、マジックツリーハウスシリーズや杉山亮の名探偵シリーズなど、シリーズの読書をどっぷり楽しむ姿がよく見られた一学期だったと思います。




また読書記録のジャンルの項目やライティング・ワークショップの書くことに繋げるために、ジャンル別にもカゴを用意してみました。こうやってカゴで分類して教えると、読む時にも書く時にも、子どもたちの中にジャンルの意識が育っていくのを実感しました。
ライティング・ワークショップの文集では間違って、ノンフィクションの作品をフィクションとして掲載してしまいました。その時には「先生、これノンフィクションだよー。」と本人に間違いを正されました。その子には申し訳なかったのですが、ジャンルに対する意識が育っていることを実感できました。
前年度、4年生の担任の時には、ノンフィクションを「スポーツ」「動物」「その他」などより細かく分類してカゴを用意していました。サッカーや野球が好きな子や動物が好きな子がとても多いクラスだったからです。スポーツと動物の本は大人気でした。
あとやってみて分かったことです。上の写真にある茶色のカゴはA3サイズです。このカゴにはハードカバーサイズの本を2列にしてぴったり入れることができます。写真にありませんが、B4サイズのカゴには、文庫サイズの本を2列にして入れることができます。

最後にカゴと本棚の違いについて、気付いたことをご報告します。クラスではカゴと本棚をバラバラに併用しています。わたしは、それぞれ一長一短あるので、教室環境などを考えて使い分けるのがいいと思います。

◆カゴのいいところ
   「フィクション」「詩集」などラベルをつけて、本を細かく分類・整理しやすい。
     カゴにあるラベルが前を向いているので見やすい。
     本の分類がしやすい分、ジャンルやシリーズなど教えたいことにより繋げやすい。他  にも、いろいろな意図で本を分類・整理して、子どもたちの読むことや書くことを助けられる。
     レコード屋さんでレコードのジャケットを見る時のように、表紙が外を向いているので表紙を見て選書をしやすい。背表紙よりも表紙の方が子どもたちの興味を引き起こすだろう。その点は子どもたちの選書をより助けられると考えられる。
     本が入っていても移動がしやすい。位置のデザインがしやすい。

◆棚のいいところ
     背表紙で本棚にある本を一望できる。何の本があるのか一目で分かる。
     文庫用など用途にあった本棚を選べば空間を無駄なく使える。より多くの本を置くことができる。
     本棚を置く時に必要な面積が、カゴを並べて置くよりも小さいことがある。

 フランキー達の教室を写真で見ると、カゴで本を分類・整理するために2段の棚を用意しています。そして棚の中や上にカゴを並べて置いて本の分類・整理に使っているのが分かります。カゴで本を分類・整理するためにちょうどいい大きさの棚をまだ用意できていないので、わたしは同じことができていませんが、このように棚の中にカゴを置くようにすれば、カゴを使ってもより多くの本を入れることができます。


出典:

Franki Sibberson Karen Szymusiak, Still Learning To Read, Stenhouse Publishers, 2003 , p12-p22

Jennifer Allen, Becoming a Literacy Leader, Stenhouse Publishers, 2006, p13

2012年8月10日金曜日

一人で読んでいない


 前回のRWWW便りジェーン・オースティンの読書会』」に登場したアーシュラ・ル・グィンの『闇の左手』(The Left Hand of Darknessは、以前、私の授業をとっていた一人が強く薦めてくれた本です。今まで読んだことのないタイプの本で、強く薦めてもらわないと、おそらく手にとることはなかったと思います。薦めてもらったおかげで、苦労しつつも読めましたが、読んでよかったです。また、映画「ジェーン・オースティンの読書会」は、検索してみると、同じ題の本が図書館にあるようなので、予約しました。

 72日のRWWW便りの「レイ・ブラッドベリ2」では、「一晩に一篇のエッセイを読むことを千夜続ける。また、一晩一篇の詩を千夜。一晩一篇のストーリーを千夜。そうすれば千夜で三千のメタフォーが頭の中にある」(『ブラッドベリ自作を語る』285ページ)という文に影響されて、毎日、必ず英語の詩(←私は英語を教えているので、英語だと授業にも何かと役立つので、続きやすいです)を最低一つよもうと思いました。そして机の隅に詩の本を置いていて、出勤したら1篇読み、仕事が疲れてきたら、また一篇読んで小休憩することもあります。またこのことが紹介されていた『ブラッドベリ自作を語る』も読んでみたくなり、この英語版を注文しました。

 上のことから分かるように、「本は実は一人で読んでいない」のです。そのことを、はっきり意識させてくれたのは、『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ著、新評論、2010年)の73ページの以下の文(紫字の部分)です。

今日はどんな本を読みましたか?」と尋ねてみてください。そして、「その本は、他の人となんらかのかかわりがありますか? 例えば、誰かがすすめてくれた本ですか? 誰かと の話の中で出てきた本ですか?」と続けてください。そうすると、私たちが「一人で読む」と考えていることは、実は「一人で読んでいない」ことに気付くはずです。

 もちろん、書評や、ある本の中で登場して、その本を読んでみたくなることもよくあります。私は長めの書評を読んで、次はどの本を読もうかと考えるのは大好きです。この場合は、書評などを書いた人が関わっていることになります。
 
 しかし、振り返ってみると、自分があまり読まないジャンルやタイプの本は、知っている人に直接、薦められて初めて手にとることが多いです。馴染みのないジャンルやタイプの本は、書評自体にもあまり目がいかないからかもしれませんし、直接、薦められると、そのときに、いろいろ質問したり、対話したりできることも大きいのかもしれません。また、後日会える人だと、「分からなくなったら尋ねられる」と思うのも大きいように思います。

 新学期、子どもたちの読むジャンルが広がるように、「先生がこの夏に読んで、ぜひそれについて紹介したい本」や「それぞれがこの夏に読んだ本」を、お互いにたくさん紹介したいものです。

*****

蛇足(1)

2012年の23日のRWWW便り「子どもが自分でできるようになっていなければ?」で、私が過去のブログなどにリンクがはれないことを書いています。

 この時のブログに書いたように、「先生がはっきりやってみせる」→ 「先生のサポートの中で自分が練習」 → 「自分一人で行う」のステップどおりに、ついに教えてもらう機会がありました!

 ということで、今日のRWWW便りは、「自分一人で行う」ができるように、リンクをたくさんはってみました。

 また、そのときにラベルの付け方も教えてもらったので、今日のブログには「本を紹介することの価値」という、前回と同じラベルを付けました。

蛇足(2)
 本の紹介というラベルをつけたので、私が昨夜、読んだヤングアダルト向けの本を紹介したいと思います。Avi著のThe True Confessions of Charlotte Doyleです。以前、同じ著者のNothing but the Truth: A Documentary Novel を読んだときに、今までにあまり読んだことのないタイプの本で、強く印象に残っていたからです。どちらも邦訳が出ていて、どちらも、アメリカの児童文学賞である、ニューベリー章のオナーを受賞しています。『星条旗よ永遠なれ』は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私は一読の価値があると思いました。「似たようなことはありうる」と思えるのですが、誰か被害者なのか等、考えるポイントもいくつかあります。私としては、『星条旗よ永遠なれ』が☆5つ、『シャーロット・ドイルの告白』は☆4つという感じですが、この2冊を読んで、この作家、もう少し読んでみたくなっています。どちらの本も、後半に入ってしまうと、途中で読むのをやめるのが難しかったです

        アヴィ『星条旗よ永遠なれ』くもん出版 ★★★★★
        アヴィ『シャーロット・ドイルの告白』偕成社 ★★★★☆

2012年8月3日金曜日

映画「ジェーン・オースティンの読書会」


すみません、読み・書きがテーマのメルマガ/ブログなのに映画が続いてしまって。
今回は、「ジェーン・オースティンの読書会」です。

前から観たいと思っていました。
本場のブッククラブの様子を見たくて。

ジェーン・オースティンの本にはまったく興味がないので、それらを読んでいないとこの本を読んでもおもしろくないのでは、とあきらめていたので、映画で見られてよかったです。(必ずしも、本と映画とはイコールではないと思いますが。)

十分にイメージが伝わってきました。
参加者6人が順番にホストになり、自宅ないし自分が指定した場所でブッククラブを開くのです。基本的には、ホーム・パーティーの雰囲気です。
メンバーは、親しい友人もいれば、ほとんど行きがかりの人まで様々です。
人数を確保するのに、かなり無理をした、という印象です。(ジェーン・オースティンが書いた6冊の本を読むので、6人いた方がいいと思いこんでいた人がいたようです。)

しかし、私が映画で一番印象に残ったのは、ブッククラブそのものというよりは、唯一の男性メンバーであるグリックをブッククラブに誘った際に、まとめ役のジョスリンは、サイエンス・フィクションが大好きなグリックからアーシュラ・ル・グィンの『闇の左手』と『天のろくろ』を紹介され、しばらく後には、その本をプレゼントされたことに関連することでした。
グリックは、その後何回かジョスリンに「本は読んだ?」と尋ねますが、サイエンス・フィクションは小説ではないと思っているジョスリンは読む気がまったくありません。
しかし、あるきっかけから実際に読んでみると、とても気に入り、グリックと恋にまで落ちてしまう、というお話です。

ブッククラブの具体的なイメージがつかみたくて観たかったのですが、発見したのは、自分の気に入った本が人に与えるインパクトの大きさでした。
他の何人かのメンバーもそういえば、ジェーン・オースティンの本が取り持つ縁で関係を修復させていました。

それほど、本を介した関係というのは大切だ、ということです。
私たちの社会でも(学校も含めてですが)、あまりにも軽視されすぎている気がします。
(ちなみに、『ギヴァー』のコミュニティーでは、本自体が存在しないので、ブッククラブも、本の紹介もできません。)それで、いい人間関係が築けるのかな、と。少なくとも、極めて効果的なきっかけを失っていることだけは確実のようです。

なんとか呼び起こしたいものです。

そのためには、
  ①まずは自分のこだわりの本を見つける(それも、できるだけたくさん)
  ②紹介してもいい人を見つける(これも、できるだけたくさん)
  ③本と人をうまくマッチングして、実際に紹介する
  ④グリックがしたように、しっかり繰り返しフォローアップする
  ⑤何が生まれるかは、相手に任せる
  ⑥可能なら、一冊の本ないし一連の本に関心の持てる人を集めてブッククラを開く
といった手順が考えられるでしょうか?

なんか、「おせっかい」の手引きみたいですが、アクションを起こす価値は大いにあるのではないかと思います。
大村はまさんが、毎年国語の授業でしていたことはこんなことも含まれていたんじゃないかという気がします。
一方的に教科書の中にある「良書」の一部を読まされるのではなく、「これは、あなただけの特別な本よ」という紹介の仕方で渡されたら、インパクトはまったく違います。