2012年6月29日金曜日

レイ・ブラッドベリ


 最近、アメリカでWWRWを実践する人たちのブログで相次いで報じられたのが、SF界の巨匠レイ・ブラッドベリが91歳で亡くなったというニュースでした。★

 私はSFは読まない人間なので(そういえば、そもそもフィクションをあまり読みません!)、『ギヴァー』を出して、それがSFの範疇に入る小説であることを教えられてビックリしました(個人的には、まだそれを認めていませんが)。『ギヴァー』をプロモートしている最中に、SFに詳しい人に書評などを書いてもらうといいなどというアドバイスもあり、それでレイ・ブラッドベリの存在も知ったのでした。SFに詳しいといわれる何人かが、SFといえばブラッドベリみたいな書き方をしていたので。

 まだ彼の作品は一冊も読んでいませんが、今回は、WWやRWの実践者がその死を惜しむ内容の書き込みをたくさんしていたので、ほっておくことができず、『ブラッドベリ、自作を語る』を読み始めました。そしたら、こんな一説が見つけました。35ページです。

 12歳の誕生日におもちゃのタイプライターを買ってくれた。僕が欲しがっていることを知ってたんだ。それで僕は勝手にエドガー・ライス・バローズの『火星の女神イサス』の続きを書いたり、『バック・ロジェーズ』や『ターザン』のエピソードを書き足したりした。そういう好きな作家の真似をしてばかりいた。★★

 こういう真似が、のちに『華氏451度』や『火星年代記』になっていったことを考えると、すべては真似からしか始まらないんだとも思えます。

 ちなみに、ブラッドリーは27の小説と、600以上の短編を書いています。★★★文学界だけでなく、芸術界全体に及ぼした影響も大きかったようです。★★★★



★ 日本で、ある作家が亡くなったら、学校で国語を教えている先生たちが自分のブログで、その死を悼むような書き込みをするかな? するとしたら、誰かな? などと考えてしまいました。

★★ 他に真似をしたのは、ポーとジョー・カーターだそうです。(362ページ)

★★★ 星新一さんと比較(読みを)してみるとおもしろいかもしれません。

★★★★ それを実現した彼の人生の基本方針があります。
    「まず崖から飛び降りて、落ちながら翼を装備せよ」です。
 ブラッドベリ流の創作では、リスクがあってもやってみる、ということが基本である。経験があろうがなかろうが、もし情熱さえ持てれば、結果を恐れず新規の事業に参入する。だからラジオ、映画、アニメ、建築、詩、戯曲などなど、仕事の範囲が広がる。つまり方針どおりに行きている。毎日が崖から飛び降りる連続だ。(261ページ)

2012年6月22日金曜日

「作家クラブ」と「ピア・カンファランス」



 今週のRWWW便りも、引き続き、作家クラブについてです。

 ここしばらく、「作家クラブ」と「ピア・カンファランス」の違いと共通点を考えています。まだ考え始めたばかりのことですので、フィードバックで違う視点などをいただけると、とても嬉しいです。

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 いいピア・カンファランスの条件は、いい作家クラブの必要条件だと思います。

 「書き手の助けとなるフィードバックができるか」あるいは「そうでないフィードバックしかできないのか」、この違いは、ピア・カンファランスにおいても、作家クラブにおいても、成否の大きな要件になりそうですから、これは大きな共通点のはずです。

 では違いはなんでしょうか? 

1)(共通の)書くテーマ???

→ 先週のRWWW便りで紹介された表によると、作家クラブでは「グループ内で合意を形成して書くテーマを決め、テーマをどのように書くかは各自が決める」となっています。

 ただ「グループのメンバーがそれぞれに違うテーマで書く」という作家クラブも現実には多いと思いますし、私自身は、それぞれに違うテーマで書くという作家クラブにも、興味をもっています。となると、「共通の書くテーマが決まっているかどうか」は、ピア・カンファランスと作家クラブの決定的な違いにはならないように思います。

2)メンバー???

→ 同じ表には、「一定期間、つくられたグループ内で合意をもとに書くテーマを決める」ともあります。ただ、ピア・カンファランスでも、メンバーをある程度固定して行う(複数回、同じメンバーでピア・カンファランスをする)ことも行われています。ですから、これも、ピア・カンファランスと作家クラブとの決定的な違いにはならないように思います。

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 おそらく、実際にある作家クラブの中には、「固定メンバーでのピア・カンファランス」に近いものもあると思いますし、それはそれで素晴らしい価値があるとは思います。

 しかし、ブッククラブの実践を読んだり、聞いたりしていると、個人ではつくりだせないもの、ピア・カンファランスだけではつくりだせないもの、つまり、チームでしかつくりだせないもの、が創造されているのも感じます。

 それは作家クラブでも同じはずです。

 ピア・カンファランスだけでは達成しにくいものとしては、以下があるのかなと、現時点では考えています。

 ○ 目標を共有する

→ たとえ、違うテーマで書いていても、学ぶ仲間と「次回までにここまで書く」、「次回に集まったときは***を行う」という目標がつくれるので、それに向けて頑張れる。

 (「次回集まったときは***を行う」の***のところは、学年やクラブによって異なると思います。例えば低学年や詩を書いているときであれば、作家クラブで集まったその場で他の人が書いたものを読めるので、「読んで話し合う」ことを行うことになります。しかし、高学年になって長いものを書いているときには、「集まる前に原稿を渡して、仲間の原稿に対してどういう作業をしてくるのかを決めて、それを行う」、ということもあるように思います。)

 ○ 一緒にチームとしての(あるいは書き手としての)問題を乗り越える

→ 作家クラブで行われていることの中の一つで面白いと思うのが、「筆が進まなくなるスランプ」への対処(あるいはスラスラ書き続ける練習)です。書き手として、多くの人が、多かれ少なかれぶつかる壁も、作家クラブという場をつかって乗り越えていくこともできそうです。

 また、ブッククラブ同様、チームとして問題があるときは、それも一緒に乗り越えていくというチャレンジもあります。

 ○ 話し合いを通して、(他の書き手から自分と違う視点を学ぶだけではなくて)、チームで新たな考えを創造する。

→ 上のことはブッククラブの醍醐味だと思います。同様に、(ピア・カンファランスのパートナーとしてではなくて)「作家クラブの一員」として話し合うなかで、考えてもなかった新たな考えも創造できるのではないでしょうか。

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 前回のRWWW便りで紹介されたボパット氏の作家クラブについての本★には、「先生の作家クラブをつくる」というセクションもあります。

 オンラインで、同じ学校で、違う学校の人とで、同じ学年で等々、作り方や集まり方も様々に考えられるようです。

 そして、ボパット氏は、「作家クラブに参加することで、多くの先生たちは、書き手としての自分、そして書くことを教える教師としての自分への見方が変わる。書くことを他の人に共有することの大切さを(再)確認し、書くことの楽しさを再認識し、作家クラブの体験から自分の教え方の振り返りができる」と述べています。

 もし、ご自分の周囲で作家クラブをつくられた方がいらっしゃれば、また、そこから得たことなどを教えていただけると嬉しいです。 

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 ★ ボパット氏の本情報は以下で、「先生が作家クラブをつくる」ことについては、その169−171ページ、上で引用した文は171ページにあります。

Jim Vopat, Writing Circles, Heinemann, 2009.


2012年6月15日金曜日

ブッククラブと作家クラブ


 6月1日以来続いている「作家クラブ」に関する書き込みを続けます。

 リーディング・ワークショップ(RW)は、ライティング・ワークショップ(WW)があまりにも書く領域で成功していたので、それを読むことに応用する形でスタートしました。
 ブッククラブ的な要素は、WWの中には含まれていませんでしたが、読む時は一人だけで読むのではなく、複数で読んだほうが効果的ということで、ブッククラブやペア読書(あるいは読書パートナー)が実践されていました。
 今度は、それらの成功を踏まえて、WWの中に取り込んだのが作家クラブです。
 ブッククラブと作家クラブの比較が、私が以前に翻訳したことのある『ペアレント・プロジェクト』★の著者であるジェイムズ・ボパット氏のWriting Circlesというタイトルの本の表紙の裏側に掲載されているので紹介します。(表をクリックすると、拡大して見られます。)

 ★ 『ペアレント・プロジェクト』は、親の世代がWWRWを体験していないので、それらについて知ってもらうために開発された保護者対象のプログラムです。WWRWの要素をふんだんに使いながら、親たちに出会いと学びの場を提供しています。機能しているとは言い難いPTAの研修を、これに転換するだけで、学びのコミュニティが出来上がっていきます。(結果的には、教師の教え方まで転換する可能性も。)
  また、「大人対象の研修はこうすればいいのか!」と眼を開かれる内容でもあります。

2012年6月8日金曜日

作家クラブをはじめよう!


 前回のRWWW便りを読んでいると、「作家クラブ」が可能にしてくれることは相当に魅力的です。

 例えば、F先生はブッククラブについて、優れた読み手が使っている効果的な読み方を体験していきながら、読書の楽しさをたくさん感じることができるんです」と述べています。

 ここから考えると、作家クラブを導入することで、「優れた書き手が使っている効果的な書き方を体験していきながら、書くことの楽しさをたくさん感じることができるんです」ということになります。

 また、前回のブログには、「ブッククラブだけを導入することで、読むことについての態度や習慣は大きく変わります」という文もあります。

 ここから考えると、「作家クラブだけを導入することで、書くことについての態度や習慣は大きく変わります」ということになります。

 たしかに、作家クラブがあることで、ブッククラブと同じように、「この日までにここまで書く」という目標もできます。

 また、他の書き手から自分とは違う書き方や視点(もしかすると自分が知らなかった効果的な書き方も)を学ぶこともできます。

 そして、書くことが孤独な作業にならないので、一人では書き上げられないもの/書き続けられないものが,書けます。

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 とはいえ、私自身は、自分の授業に作家クラブを導入したことはありません。
 
 そこで、ブッククラブを踏まえつつ、作家クラブを教室で導入する場合、どんな感じになるのかを、今日のブログで考えてみたいと思います。

<作家クラブ導入に向けての準備>

○ 『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ著、新評論、2010年)を見ていると、ブッククラブは、何の準備もなしに、いきなり導入しても、あまりうまくいかないようですし、それまでにできるようになっておいたほうがいいこともいくつかあるようです。

 ブッククラブの準備として、たとえば、共通の短い読み物を使って、クラス全体でその本について話し合いをしたり、印をつけたりします(228ページ)。また、ブッククラブをうまく進める話し方が身に付くように短編を使って教えることもあります(229ページ)。

 → 上記を踏まえて考えると、作家クラブ導入に向けての準備期間もあったほうがよさそうです。

 たとえば、クラス全体で、それぞれの作家ノート等を使って、短く書く時間を持つ。その書いたことについて、クラス全体や小グループで話し合う時間をとる。

 最初は、その時間に先生も書いて、それについてクラス全体からコメントをもらうのもいいかもしれません。

 *どんな話し合いでもそうですが、この準備期間は、話し合いの方法や、助けになるコメントの仕方などを学ぶ時間でもあります。

 * この準備段階に、優れた書き手が使っている効果的な書き方やツールも使うと、作家クラブでも使えるように思います。題材さがし、下書き、修正、校正など、様々な段階での効果的な書き方から、厳選して、それを子どもたちが体験できるようにすると、有益だと思います。

 * 助けになる効果的な書き方やツールの選択ですが、これは、教師が、自分自身の書くことを振り返って厳選するといいと思います。ちなみに私にとっての、一番のツールは作家ノートです。これを使い始めて、書くことについての態度や習慣は大きく変わりました。

 
<そして実施>

○ ブッククラブの参加者たちは「次に集まる時間を決め、それまでに、読んでくる箇所を決め、話したいポイントに付箋を貼ってくる」ことをよく行っていると思います。

→ 作家クラブの参加者たちは、「次に集まる時間を決め、それまでにどういうものをどの程度持ってくる(書いてくる)のかを決める。自分がアドバイスを欲しいポイントがあれば、そこに付箋を貼ったり、メモをしたりする、という感じでしょうか。

 * 例えば、作家クラブの参加者たちが書いてくるものが、詩であれば、その場で(つまり、作家クラブ開催の当日に)、読むことも可能だと思います。

 ただ、それぞれが長いものを持ってくる場合は、「集まる○日前に、お互いに渡して、それまでに読んできて、人の書いたものの、いい点や質問、もっと聞きたい点などに付箋を貼って準備してくる」など、違う準備が必要かもしれません。

 上の準備期間を経たあとでも、「作家クラブ」本格導入の前に、まずは「詩に浸るユニット」で作家クラブをする、など、短いもので「ミニ作家クラブ」みたいな感じで試してみてもいいのかなとも思います。

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 ブッククラブ導入の前に、先生たちでブッククラブをつくって、まずは自分が体験する人も多いようです。作家クラブも、教師がまず体験してみるのもよさそうです。

 作家クラブをはじめましょう!

2012年6月1日金曜日

書くことも読むことも一人ですること ⇒ 仲間とすること


 書くことや読むことが好きになれない子たちにとって、その(最大?)理由は書くこと
や読むことが「一人で静かにすること」である場合が少なくありません。さらには、「暗
くて、楽しくない」というイメージまであるかもしれません。
それを、「仲間と協力してもいいこと」と位置づけることで、好きになれるだけでなく、書く力や読む力をみるみるつける子たちが増えます。

 F先生は、WWRWに取り組んでいる先生ではありません(?)が、ブッククラブにはまって、年に数回取り込みました。
「私自身がものすごく読者好きなんです。普段、忙しくて本が読めないことにストレスを感じるくらいなんですが、その読書のすばらしさを伝えたいと思っていても、なかなか感じてもらえず、毎年イライラ!?していました。ところが、ブッククラブは、くどくど説明なんていらないんです。みんなで、優れた読み手が使っている効果的な読み方★を体験していきながら、読書の楽しさをたくさん感じることができるんです。そこに惹かれました。
私も子供たちも読書は、一人黙々と読むだけのものと思い込んでいたので、 新鮮な驚きでした。★★読書の楽しさをたくさん感じることができました。もちろん、いきなり自分達で取り組むのは難しいので、ミニレッスンみたいなことをして、優れた読み手が使っている効果的な読み方とか、話し合いが今一つのときには交流の仕方についてとか、時には本の選び方といったこともみんなで考えたりする時間をとりました。
RWの実践者がしているような実践ではありませんが・・・子どもたちが楽しんでいることは確かです。
最後に、余談ですが・・・ブッククラブを始めて半年後くらいに個人面談があったのですが、たくさんの保護者の方に感謝の言葉をいただきました。家で読書をする姿がたくさん見られるようになったというのです。保護者のみなさんもどうしたら読書をするようになるのか困っていたんです。
もうひとつ、私が全く予想外だったのが、子供たちの書く力がとても伸びたことです。読解力アップにはなるなとは思っていたのですが、作文や毎日書いていた振り返りノートなどの内容が、質、量とも予想以上に大きくレベルアップしました。読むことの大切さをあらためて感じました」

 以上のように、ブッククラブだけを導入することで、読むことについての態度や習慣は大きく変わります。書くことまで好影響をもたしてしまうぐらいですから。
 これと同じことは、書くことでもやれます。ブッククラブを応用した「作家クラブ」なるものを実践することで。ぜひ挑戦された方は、報告お待ちしています。


★ 「優れた読み手が使っている効果的な読み方」については、『「読む力」はこうしてつける』を参照ください
★★ もちろん、ブッククラブを含めたRWで、基本は「一人でひたすら読むこと」です。同様に、書くとき=WWも、「一人でひたすら書くこと」が基本ではありますが、対象に応じて、ペアやグループで書いたり読んだりする機会を提供することはとても大切です。