2011年7月15日金曜日

「締切りの活用」と「修正は繰り返し」 

 今日のWW便りは、「締切りの活用」と「修正は繰り返し」です。 

 まずは「修正は繰り返し」から、書きます。 

 WWで教えながら、私の教えている生徒の多くは、「提出して終わり」、つまり「第1稿がほとんど最終稿」で、今までの作文の授業を過ごしてきたんだな、と感じることが、けっこうあります。 

 さて、このWW便りでも何度か紹介しているドナルド・マレー氏は、修正とは、書く過程に存在する、ある一つの独立した部分ではないことに、あるとき、気付いたと、言います。 

 そうではなくて、修正とは、(その後に)校正する価値がある文(つまり、読んでもらうのに耐えうるもの)ができるまで、必要なだけ「何度も何度も繰り返す」という、(書く)過程だ、と考えています。

 もちろん、その「何度何度も繰り返す」過程の中で、そのとき、そのときで、「情報を集める」、「計画する」、「発展させる」など、修正の方法や修正の焦点が異なります。 

 マレー氏は、修正の過程で、生徒が自分に尋ねてみるといいのでは?というチェックリストも紹介してくれていますので、そこから修正の焦点・方法を、いくつか紹介します。 

○ 情報は十分か。
→ もしそうでなければ、「情報を集める」ことが必要 

○ 一つのことを語っているか。「この文は何を意味するの?」という質問に答えられるか。 
→ もしそうでなければ、(構成を)「計画する」ことが必要。

○ 読者が満足できるように情報を提示できているか。 
→ もしそうでなければ、今ある情報を「発展させる」ことが必要。

***** 

 さて、修正の大切さが分かっても、実際に「書く」ことを行わなければ、どこにも行き着きません。 

 WWでは、自分の作品を、どのジャンルで書き、どのくらいの長さにし、どのくらい時間をかけて仕上げるのか、というのは、書き手である子どもたちの選択にゆだねられることが多いです。

 この選択を活かして、子どもたちは自分の取り組みたい題材に力を注ぎつつ、書き手として成長していきます。

 その中で、絶対的に大切なのが、当たり前のように聞こえるかもしれませんが、「書く時間」です。

  『ライティング・ワークショップ』の中では、書くことの第一人者であるドナルド・グレイヴスに向かって、「もし、1週間に一度しか書く時間がとれないとしたら、どのように教えるべきでしょうか?」と尋ねた教師に対して、グレイヴスが以下のように答えたことが紹介されています。

 「週に一度しか教えられないのであれば、やめたほうがよいですね。<中略> 週に一度の授業では、子どもたちは書き手にはなれません」 

 実は、私のWWの授業は週に一度しかないのです(教える学年があがってくると、私のように、週に一度しか時間が確保できない先生もいらっしゃるのではないでしょうか?) 

 そして、書き手としての自分を考えたときに、書き手として自分がなかなか成長できないのは、やはり書く時間が少ない、ということに尽きるように思います。 

 私の生徒にしても、私にしても、書き手として成長できるかどうかのカギは、書く時間の確保だろうと思います。

 生徒の場合は週に一度しか授業時間が取れないという問題。 私の場合は、日々の忙しさに取り紛れてしまい、なかなか継続的に書く時間が取れないという問題。 

 さて、どうしましょうか。 

 まずは、書き手としての自分(教師)が、解決策を考えて、それを試してみる必要があると思います。 

 そのための一つの方法は、「締切りを設けて、締切りを活用する」ということだろうと思います。 

 締切りというのは、WWになじまないように思われるかもしれません。 もちろん、「全員が今週は下書き、来週は2章まで書く、さ来週は構成、その次の週が校正」というような、一律の締切りは、WWではまず使われないと思います。 

 しかし、それぞれの書き手が、「書く時間を確保」するために、それぞれに自分の生活の中に締切りを設けて、それを活用する、ということは、私はWW的にも、「あり」だと思っています。 

 上で紹介したマレー氏は、「たとえば、1日で(あるいはある時間で)○ページ書く」というような「締切り」を自分に課すのをやめたときに、自分は書くことをやめてしまう、ともいっています。

 また締切りというのは、「最終原稿」を仕上げる日だけではありません。

 「最終原稿を○月○日までに仕上げる」ということは、毎日の生活の中ではむしろ見えにくい印象を持ちます。 マレー氏の文を読んでいると、毎日の生活の中で見えにくい締切りを持つよりも、(その目標に向けて、まずは)「毎日○ページ書く、毎日○時間書く」というような、「毎日の生活」の中で目に見える締切りがないと、「書く時間」の確保にはつながらないということではないか、と私は思いました。

 最終の締切りだけを生徒に提示しても、前日に慌てて仕上げようとするだけで、日常的に書く時間が増えることにはつながらないのかもしれません。それと同じなのだろうと思います。

  「先生も皆さんも書き手です。書くことの大変さや苦労も一緒に乗り越えていきましょう」というメッセージが、『ライティング・ワークショップ』にでてきます。

 このメッセージを子どもたちに伝えられるように、まずは教師が、自分の生活のなかで書く時間を増やすために、この夏、日々の生活の中に、目に見える締切りを設けることを、試してみるのはいかがでしょうか?

出典:

Donald M. Murray の A Writer Teaches Writing, Revised Second Edition, (Thomson, 2004)で、修正は繰り返しについては56-58ページ、締切りについては52ページに書かれています。

『ライティング・ワークショップ』(ラルフ・フレッチャー、ジョアン・ポータルピ著、新評論、2007年)より、ドナルド・グレイヴスの上で紹介した言葉が出てくるのは19-20ページです。「書き手として一緒に」という上の言葉が出てくるのは43ページ。42-43ページでは、教師が子どもと一緒に書く、教師が書く姿を見せることの大切さが強調されています。

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