2012年4月27日金曜日

GW中のミニ・プロジェクト


 少し前から、今日のRWWW便りは、「GW中に【こどもたちが】できそうなこと」
というテーマで書きたいと思っていました。


しかし、思いついくのは、「旅行や遊びに行くときに作家ノートをもっていく」と
か、「旅行に行く場所について本を読んで知識を得る」等々で、こういう活動を半ば
強制的に押し付けても、プラスよりもマイナスが大きい気がしました。


そんなときに目にとまったのは、中学校レベルの優れた教育者でもあるリンダ・
リーフ氏が、ワークショップ・シリーズの二冊目に書いていた文でした。★


彼女は、飛行機の中で、自分のノートを取り出して書き始めたときの話を紹介して
います。それを見た4歳の男の子ジミーは、興味津々です。


そこでリーフ氏は、「これは、見たり、聞いたりしたこと、自分にとって大切なこ
と、覚えておきたいことを書くノートだ」と説明したあとに、「ジミー君も書いてみ
たい?」と尋ねます。


*****


リーフ氏は、この飛行機の中で自分が行ったことは、自分が教室で行っていることと同じ
だと書いています。つまり「まず自分自身を、書くことと読むことにどっぷり浸から
せること、そしてそれを生徒たちに共有すること」だと記しています。★★


また、「私が教室で何を行うかという選択は、生徒たちが何を行うかということの
指針になるということを、以前よりもずっとはっきりと自覚するようになりました」
とも書いています。


*****


「教師が実際に行っている読み書きを共有すること」と、「自分の実際の生活では
していないことを子どもたちに押し付けること」には、決定的な違いがあると思います。


リンダ・リーフ氏の文を読みつつ、GW中に【子どもができそうな】ミニ・プロ
ジェクトを考える前に、【教師が】できそうなミニ・プロジェクトを考えたいと思い
ました。


ミニ・プロジェクトというと大げさですが、要は忙しい毎日だからこそ、このGW
中に、教師自身が読むこと、書くことに浸る時間を作る、ということです。


私も、自分用のGW中の読み書きのミニ・プロジェクトを考えることにしました。以下
は、現時点で、自分がしてみたいと思っている思いつきです。


○ 私のリーディング・プロジェクトの一つ(?)で、「愛する人との死別」とい
うテーマの本や詩集について、学習者向けの紹介文を書く。


○ これも私のリーディング・プロジェクトの一つ(?)で、気になっている児童
文学の作家についてさらに読む(今、4名ぐらい、気になっていて、もっと読みたいと思
っている作家がいます)。


○ 英語という教科でのRWWWについて学んでいる仲間たちに、おススメ
本の題名(特に読んだことについて話し合うことについて書かれている本)を共有する。


○ 読書ノートにメモしそこなった本を、購入した本のリストを見ながら、簡単に
メモする。


○ 作家ノートについて書いてみたい文があるので、その下書きを始める。


*****


以下は、上記以外にも、こういうのもあるのかな、と考えてみたものです。

(ですから、以下は自分が行おうと考えているものではありません)。


みなさ んもいいミニ・プロジェクトが浮かべば、ぜひコメント欄で共有してください。


○ 入院している友人にお見舞いの手紙を書く
○ 自分の作家ノートを見直して、そこから書きかけの作品を仕上げる
○ 読書ノートのメモを見直し、そこから友人におススメ本リストを送る
○ 図書館に行って30分間、本との楽しい時間を過ごす
○ 普段はなかなか足をのばせない大きな書店に行く
○ 友人にブッククラブの招待状を書く
○ お誕生日や記念日などに贈る本をさがして、その本を選んだ理由などをカードに書く
*****  


この週末に、GW中の自分用の読み書きミニ・プロジェクト計画を練って実行し、それを週
明けに子どもたちに共有するのはいかがでしょうか。


出典:
★ ナンシー・アトウエル(Nancie Atwell)氏が編者となっているWorkshop 2: Beyond
the Basal  (Heinemann, 1990) は、複数の人が自分の実践などを書いている本です。


リンダ・リーフ (Linda Rief)氏は、上の本の125-132ページに、Apprenticeship: At Four
Or Fourteen という題で書いています。


上で紹介した飛行機の中でのできごとは、125-128 ページに書いてあります。


★★ 「まず自分自身を、書くことと読むことにどっぷり浸からせるこ
と、そしてそれを生徒たちに共有すること」、「私が教室で何を行うかという選択
は、生徒たちが何を行うかということの指針になるということを、以前よりもずっと
はっきりと自覚するようになりました」は、両方とも128ページに出てきます。

2012年4月20日金曜日

【続】クイズ? ~ぺナックの「読者の権利 10ヶ条」~

 前回のRWWW便りのテーマは「読むことに関するクイズ」でした。

 今回は、まず最初に、作家のダニエル・ぺナックが書いた『ぺナック先生の愉快な
読書法』★から「読者の権利 10ヶ条」を紹介します。

 前回のクイズ風に以下の10ヶ条を眺めてみませんか? この中で、リーディング・
ワークショップを行っている先生に支持されるものは、いくつあるでしょうか?  

1.読まない権利
2.飛ばし読みする権利
3.最後まで読まない権利
4.読み返す権利
5.手当たり次第何でも読む権利
6.ボヴァリズムの権利(小説に書いてあることに染まりやすい病気)
7.どこで読んでもいい権利
8.あちこち拾い読みする権利
9.声を出して読む権利
10.黙っている権利

*****

 このRWWW便りでも、何度か紹介しているナンシー・アトウエル氏は、最初の週
に、この10ヶ条を子どもたちに見せて、子どもたちと話し合うそうです。★★

 子どもたちは、「3.最後まで読まない権利」については、「最後だけ読む権
利」を付け加えたり、11番目として「多くのいい本にアクセスできる権利」を足し
たりもしているそうです。

*****

 上の10ヶ条は、もしかすると従来型の教室で行われてきた「読書とはこうあるべき
もの」とは、かなり違う部分があるのかもしれません。

 また、「教育」という場では、上の10ヶ条の中には、無条件で支持できないも
のもあるのかもしれません。

 それは、ライティング・ワークショップでも、子どもたちが、教師が感心しない題材
を選択したり、不適切な言葉を使ったりすると、教師はそれについてちゃんと対応
して教えていくのと似ているのかもしれません。
★★★

 「選択があること」イコール「何でもあり」ではないからです。

 とはいえ、リーディング・ワークショップの教室が、本当に読むことを目指す場で
あれば、読者が本当に行っていることを、無視はできないはずです。

 ぺナック氏は、
「もしわたしたちが息子や娘や若者たちに本を読んでもらいたいと思うなら、わたち
たちが獲得した権利を彼らに至急与えなければならないからである」とも記していま
す。★

 学年によっては、子どもたちに分かりやすい言葉で、上の権利を話し合ったり、
「この教室での読み手の権利」をつくったりして、一緒に考えてみるのも面白いかも
しれません。

出典:

★『ぺナック先生の愉快な読書法』 
ダニエル・ぺナック著、浜名優美、木村宣子、浜名エレーヌ訳
藤原書店(2006年) 
上の10ヶ条は裏表紙にもまとめて印刷されていますので、そこから抜き出しました。
なお、この本は、1993年に刊行された『奔放な読書』の新版だそうです。

「もしわたしたちが息子や娘や若者たちに本を読んでもらいたいと思うなら、わたち
たちが獲得した権利を彼らに至急与えなければならないからである。」
とこの本の168ペー ジに記されています。

★★ 
ナンシー・アトウエル氏が、子どもたちとこの10ヶ条について話し合うことを述べて
いるのは、以下の本の26-27ページです。

Nancie Atwell 著  The Reading Zone  (Scholastic, 2007)

★★★

ライティング・ワークショップで、子どもたちが、教師が感心しない題材を選択した
り、不適切な言葉を使ったりするときに、どのように教えていくかについては 、
『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の138-141ページをご
参照ください。


2012年4月13日金曜日

読むことに関するクイズ

今回は、クイズです。
 内容は、読むこととリーディング・ワークショップに関するもの。
 以下の15問で、「正しい」答えはいくつあるでしょうか?
 答えは、コメント欄かpro.workshop@gmail.comにお送りください。

① いい本だけを読めばいい ~ 正しい、間違い
② 量じゃなくて、質が大切 ~ 正しい、間違い
③ 机に向かって正しい姿勢で読むのがいい ~ 正しい、間違い
④ レベルにあった本を読めばいい ~ 正しい、間違い
⑤ 推薦図書を読めばいい ~ 正しい、間違い
⑥ 自分で読めるようになったら、読み聞かせやペア読者は必要ない ~ 正しい、間違い
⑦ 学校図書館が充実していたら、教室の中の図書コーナーは必要ない ~ 正しい、間違い
⑧ いい本と悪い本は分けられる ~ 正しい、間違い
⑨ 読み方は、何を読んでいる時でも同じ ~ 正しい、間違い
⑩ 作品は分解して教えることはできる ~ 正しい、間違い
⑪ 学年ごとに読ませる本がある ~ 正しい、間違い
⑫ 良書は誰にとっても良書 ~ 正しい、間違い
⑬ リーディング・ワークショップで一番大事なのは、ミニレッスン ~ 正しい、間違い
⑭ リーディング・ワークショップで一番大事なのは、カンファランス ~ 正しい、間違い
⑮ 読む力を身につけさせるのに最も効果的なのは、教師が「考え聞かせ」をすること ~ 正しい、間違い

     参考: Reading Naked, by Teri Lesesne, p.3

  <以下は、メルマガの続き>


 以上は、主に教師対象のクイズでしたが、子どもたち対象には、

・ 読むことが可能にしてくれることは?
・ 「読む」ってどういうこと?
・ 「自立した読み手」はどんなことができる?

などのテーマでブレーンストーミングをし、年度の終わりに同じテーマでやってみると、2つを比較するだけで子どもたちの成長が一目瞭然にわかるはずですから、ぜひ試してみてください。

2012年4月6日金曜日

新年度の用意はできていますか?

WWとRWのいいところの一つは、振り返りと目標設定が常にあることです。
 年間を通して、作家のサイクルと読書のサイクルをグルグル回し続けますから。
 さらに学期や学年の最後には、それまでの期間を振り返り、新たな目標設定を子どもも教師も行います。

 常に、目標設定、様々な主体的な学び、自己評価、自己修正・自己改善のサイクルが回り続けているのが、WWとRWなわけです。従って、よく学べ、身につくようになるのも当然です。

 前回の年度最後の振り返りを受けて、今回のテーマは年度始めにぜひやっておきたいこと、です。
 昨年度の今頃にも書いたことですが、年度の当初にしなければならないこととして、①年間計画づくり、②「安心して書ける(読める)・たくさん書きたくなる(読みたくなる)雰囲気づくり」、③子どもたちのことを知ることがあります。

 ①については、まだ作っていない方は、http://wwletter.blogspot.jp/2010/08/blog-post.htmlを参考にして、ぜひ今週末に作成してください。30分以上はかけないことを目標にして。
 指導要領の国語の部分で抑えないといけないことをリストアップすると、その少なさに唖然とするはずです。それらが、教科書通りにやると身につくかというと、カバーすることに忙しくなって、身につく形で教えることは極めて困難になる可能性が高いです。教師に求められているのは、指導要領を押さえることであって、教科書をカバーすることではありませんから、勇気を持って、指導要領の押さえるべき点をリストアップし、他に教師自身が子どもたちに身につけてほしいものを付け足して、WWとRWの年間計画を作ってください。その方が、はるかに子どもたちにとってはいいです。教師や文科省や教育委員会や教科書会社の自己満足につき合わされなくて済むのですから。そして、書くことでも読むことでもたくさんの選択肢を提供された中で学べるのですから、意欲がわくのは当然です。
 たとえいいものでも、強制された段階で、その価値はほとんどゼロか、それに近づいてしまいます。(教育界の多くの人が、この事実に気づけていないことが悲劇を生み続けています。そのことに気づき、それを排除するところから始まったのがWWとRWです。)

 ②については、『ライティング・ワークショップ』の第3章で強調されているのですが、具体的な方法を知りたい方は、コメント欄かpro.workshop@gmail.comへ情報請求してください。

 今日の主なテーマは、③です。
 いろいろな方法がありますが、手っ取り早いのはアンケートとインタビューです。
 ぜひ、以下の2つの表を参考にして、実際にアンケートをとったり、インタビューをしてみてください。WWやRWを展開する際の取っ掛かりになるだけでなく、生徒理解にもなります。
 子どもたちがペアでインタビューし合って、それを紹介してもらうようにすると、聞く力や書く力を磨く練習にもなります。


<以下は、メルマガの続き>

 紹介するのは、「読むこと」(表1)と「読み手」(表2)についてですが、WW用には「書くこと」と「書き手」に置き換えてください。(表をクリックすると、拡大します。)
 なお、表2は教師自身についてもできますので、まずはそこから始めてみることをおすすめします。